第一章【始まりと旅立ちの島】第95話 49階層討伐記録更新
リオは、以前作った光の短剣をじっと見つめていた。ラエル団長から光属性の攻撃魔法などを色々教えてもらってはいたが、実際の戦闘では水属性を使用する事が圧倒的に多く、高速で移動する為の「電足」や、魔獣の足を止める為の「雷電」くらいしか使用していない。リサの様に双剣として戦うには、水の剣が少し重い。もう少し体格があれば、片手で振り回す事も出来るだろうが、今はまだ無理があった。
リオは裏山で一人、光の剣を用いて魔力を高め、光魔法の練り出しの特訓を行っていた。
リオ:
「魔力は十分にある。ある程度時間は掛かるが、それなりの攻撃も可能だ。しかし、使い慣れていない光魔法は、魔力操作がうまくいかない。水魔法の時もこんなだったかな?」
そんな事をぶつぶつとつぶやきながら、魔力操作を続けていた。
リオ:
「水魔法と根本的に魔力の移動量が少ない。蛇口が小さいと言うか、そんな感じだ。使い込めば水魔法と同じ様になるのかもしれない・・・。」
「水魔法も・・・もう少し魔力の蛇口が広がれば、リサの様に瞬間的にプラズマを発生させる事ができるはずなんだけど・・・。」
その頃、ラオルは再生魔法をほぼ完成の域に引き上げる事が出来るようになっていた。
本来、再生魔法は、再生させる体に触れる状態でしか再生させる事はできない。しかしラオルは、遠隔再生を行う事が可能になったのだ。総魔力量がそれを可能にしたことは言うまでもないが、攻撃魔法は斬撃で飛ばせるのだから、再生魔法も飛ばせるのではないか?と言う単純な試みからそれを可能なレベルにまで成長させたのだった。
ラオル:
「これで、リオやリサのダメージを素早く改善できる。」
リサは?と言うと・・・・。リオと同じく水魔法で苦労していた。魔法攻撃の精度、威力が火魔法と釣り合わない為、同時に発動すると、水が負けてしまう。それに、水魔法ではプラズマまで高める事ができず、魔力の移動に時間がかかっていたのだった。
リサ:
「なんでなのかしら・・・。火魔法は瞬間で魔力を発動できるのに、水魔法だとタイミングが遅れるわ。発動してしまえば、普通に戦えそうだけど、瞬間的な使用は難しいわね。私が火の属性だからある程度は仕方ないにしても、ここまで差があると・・・。」
1831年3月某日 リオ、リサ、ラオルの3人は、ダンジョン49階層でいつものケンタウロスアックスと戦っていた。リサは双剣となり、これまでの攻撃力を超え、ケンタウロスアックスの防御魔法を突き破る攻撃が可能になった。その為リサは1体を伐する時間を大幅に短縮し、30分を切った。しかし魔力消費は大幅に上昇し、連続で戦うのは3体が限界であった。
リオ:
「リサ、3体連覇達成だね。」
リサ:
「3体が限界だわ。枯渇状態だから、後は頼んだわよ。」
リオもそれなりには強くなってはいたが、リサほどではない。それにリオは出来るだけ光魔法を用いて戦う様にしていたため、残り2体をラオルとリオで相手していた。ラオルは風魔法、風のプラズマ、リオは水魔法、水のプラズマ。これらを同じポイントに同時に叩き込む事で、ケンタウロスアックスの防御魔法を突破し、2体を討伐。時間は約2時間。
討伐開始から5体の討伐完了まで、約2時間と言う驚異的な速さである。
リオ:
「リサはさすがだよね。3体を一人で1時間ちょっとで倒すんだから。」
リサ:
「ケンタウロスアックスの5体単独討伐はちょっと難しいわね。魔力が持たないわ。」
ラオル:
「僕なんか、1体だって難しいよ。リオと2人だから2体倒せたけど、2時間もかかったし。」
リオ:
「武器も新調し、新しい攻撃方法も試したけど、単独制覇には程遠いね。50階層のエリアボス、どうする?」
リサ:
「3人じゃ危険よね。せめて5人。それも私たちと同じくらいの強さじゃないと危険だわ。」
ラオル:
「ラエル団長とボルク副団長?」
リサ:
「だったら可能かもしれないけど、ボルク兄さまと一緒はなんか嫌よ。」
リオ:
「とは言え、その5人だと50階層の討伐は可能かもしれないけど、今ラエル団長とボルク副団長はアルフ国に出張しているみたいだから。」
リサ:
「そうね、珍しい事もあるものよね。団長と副団長2人が国を離れるなんて。」
リオ:
「そろそろ帰ってくるのじゃないかな?船旅が往復8日間として1か月くらいでしょ、出張っていっても。」




