第一章【始まりと旅立ちの島】第86話 その域に到達できるのか
アグエスの3人は、午前中に騎士団との戦闘訓練に参加し、騎士団の魔力増強に一役買っていた。魔力増強の真意については公表せず、騎士団の最大火力を放出させる事に専念していた。午後に入ると、ラエル団長から直々の指導を受け、リオ、リサ、ラオルの3人も戦闘力を増加させている。ダンジョンに入るスケジュールは、30人の騎士団を6部隊に分け、5人パーティーずつで攻略を進め、攻略階層を競わせていた。アグエスの3人は、週に1回ダンジョンに入り、30階層をクリアした。
ラエル団長:
「1週間に1回しかダンジョンに入れないから、個々の進捗が遅いのは仕方ないが、アグエスの3人はそれでも30階層を突破したのだな。」
ボルク:
「はい。騎士団員でもあと少しで30階層に到達するメンバーも2組ほど確認できます。」
ラエル団長:
「団員の総魔力の数値化はどうなった?」
ボルク:
「ランバルトギルド本部長に既にリスト化させていただきました。数値の基準は以下の通りです。」
15歳の一般的な数値を100として基準に致しました。
騎士団予備員15歳16歳は、概ね300程度です。冒険者ランクで言うとB級もしくはB級+です。属性攻撃魔法の中級を単体、もしくは他の属性との複合が可能です。それぞれに個性があるようで、魔力量の大小にかかわらず、複合を使う者もおります。
ラエル団長:
「その辺りが複雑だな。使えても小さく、使えなくても大きい。属性に特化する事で、より強い発動を促すこともある。」
ボルク:
「そうですね。しかし、アグエスの面々を見ていると、やはり最大魔力量は重要です。魔法操作の経験を積めば、上級やS級を使う際に、必要な魔力量が増大します。そもそも魔力量が不足すれば、発動もままなりません。」
ラエル:
「で、リオ、リサ、ラオルの数値はどうなんだ?」
ボルク:
「リオが1800、リサが1500、ラオルが1200です。」
ラエル:
「なるほど、王級が使える2名が1500以上、使えなかったラオルは1200か。」
ボルク:
「いえ、そうではありません。ラオルは既に王級を使えるレベルに達しています。数値を精査したところ、S級で600 S級+で700です。800を超えると王級が使用できるはずです。」
ラエル:
「では、ラオルは使えるのに使わなかった、って事なのか?」
ボルク:
「たぶんそうだと思います。基本思想として支援魔術師は枯渇を恐れます。その為セーブしていたと考えられます。」
ラエル:
「で、私はどの位置になる?」
ボルク:
「私が1000、ラエル団長が1600です。」
ラエル:
「そうか、総魔力量の頭打ちは、1500前後と言う事かもしれないな。後は個人差もあるだろう。」
「ボルク、いま我々が抱えている問題はなんだ?」
ボルク:
「現状に立ちふさがる見えない壁です。」
ラエル:
「その壁を、この訓練で突破できると思うか?」
ボルク:
「アグエスの3名は13歳です。その年齢であの数値をたたき出している。枯渇と回復で、現在抱える壁はクリアできるかと思います。」
ラエル:
「古代の人族は、龍族と対等に戦ったそうだ。その域に到達できるのかな。」




