第一章【始まりと旅立ちの島】第81話 僕だけボコボコに?
皇歴1830年2月17日
王宮による晩餐会の翌日、アグエスの3名はリンデの街の不動産を扱う店に来店。拠点となる施設を購入する為である。紹介された物件の中で、広さや場所、予算など考慮し、3っの物件を案内してもらい、いつもの店で少し早めの昼食をとっていた。
ラオル:
「この物件なら、近くにテイクアウトできる店もあるし、良いんじゃないかな。」
リサ:
「個室がある方が良いわ。お風呂もキッチンも必要よね。」
リオ:
「ここに住むわけじゃないよ。打ち合わせをしたり休憩したり、備品の保管場所として使用するのがメインなのだから。」
リサ:
「でもこれから色々あるかもしれないでしょ。来客とか、不在の時の対応として、受付を雇う事も、今後考えないといけないわよ。」
リオ:
「リサ、2年間の期限付きだよ、2年後には3人で旅に出るって事を忘れていない?」
リサ:
「そ・・そうだったわね。2年間、騎士団の指南役だったわね。指南役って何すればいいの?」
ラオル:
「単純に言えば、若手の騎士団を強くするために、訓練を指南する って事だよね。」
リオ:
「若手って言っても、15歳以上だよ。僕たちより2歳以上年上だけどね。」
ラオル:
「でもそれじゃ、僕たちの2年間、新しい何かを見出すチャンスが減るんじゃないかな。」
リオ:
「そうでもないよ。ラエル団長が言っていたけど、団長に訓練を付けてもらえるから、めったと無いいい機会かもしれない。それに、古代都市の探索と地下迷宮の調査、これに参加できるのは大きい。迷宮攻略を行う上で、魔法放出力の何かを掴めるかもしれないし。」
リサ:
「魔法放出力?」
リオ:
「あぁ、いくら総魔力量が大きくても、それを放出できる量が少なければ、何の意味も無いんだ。魔力放出の最大量と瞬発力、慣れも必要だけど、何かあると思うんだ。」
ラオル:
「何か・・・古代遺跡に?」
リオ:
「うん。古代人は龍族と対等に戦っていた。単純に今現在では考えられないけど、古代の人族と今の人族で失った物がなければ、僕たちにもそれが出来るはず。永い永い平和な時間の中で、人族は本来ある力の引き出し方を忘れてしまったのかもしれない。」
佐々木は前世を思い出していた。
(江戸時代、農民の女性であってもおおよそ60㎏の米俵を3~5俵、一人で担ぎ上げていた事、飛脚が江戸大阪間約600㎞を約3日で走っていた事、他にも陰陽師など、人ならざる力を引き出す事が可能だった時代の事などである。)
リオ:
「来週からだよね、皇帝魔法騎士団へ行くのは。 それまでの間、僕は王宮の図書館に行こうと思う。古文書や、他国の古代遺跡の事について少し調べたい。」
リサ:
「いいわよ。私はラオルと森で訓練するわ。ラエル団長との戦いで、何か掴みかけている気がするのよ。忘れないうちに物にしたいのよ。」
ラオル:
「え・・・え~~。リオ無しで僕だけ・・・ボコボコに?」




