第一章【始まりと旅立ちの島】第77話 課程と確信
帝国歴1830年2月16日 感謝祭最終日 王宮晩餐会
秘書官ミリル:(ミリル・ルシアン)
「リンデ王が間もなくお越しになります。全員着座にてお待ちください。」
リンデ王 カシュキ:
「皆、集まっておるか?そうか。」
ラエル:
「今日はお招き頂き、誠にありがとうございます。」
リンデ王 カシュキ:
「よいよい、今日は感謝祭なのじゃから、気楽でよい。そろそろ時間じゃな。」
王室の窓からリンデの街を見下ろし、感謝祭の最後の花火が打ちあがった。
リサ:
「すごいわ・・・。街の灯りと、花火をこんな特等席から見られるなんて・・。」
リンデ王 カシュキ:
「リサ君、喜んでもらえて私も嬉しいよ。さ、席に戻って食事にしようかね。」
席に運ばれる食事は、これまで見たことも無い様な、豪華なものだった。ドラニス帝国領で手に入る、最高級の食材を使用し、王宮専属のシェフにより丁寧に盛り付けられていた。
リンデ王 カシュキ:
「ドラニス帝国が発足して1830年、大きな戦争も、災害も無くここまで来た。帝国発足前の時代では、各大陸に多くの国が存在し、争いが絶えなかったと聞いている。それを初代ドラニス王 ベルネ・ドラニスがそれを平定し、今に至るのじゃ。」
秘書官ミリル:
「カシュキ様、お飲み物の準備が整いました。」
リンデ王 カシュキ:
「おう、そうか、ではラエル」
ラエル:
「民の平和と、五穀豊穣を祝って、乾杯!」
秘書官ミリル:
「アグエスの皆様は、13歳の未成年ですので、オリリオ大陸から取り寄せた果実を絞った飲み物をご堪能ください。」
リンデ王 カシュキ:
「各大陸、島々からの豊富な食料、1830年に及ぶ平和な時代をこれからも守っていかなければならないじゃ。」
リサ:
「なにこのお肉!柔らかくて口の中で溶けるようだわ。」
ラオル:
「このスープも、口の中をスッキリさせてくれるだけでなく、食欲が更に増すと言うか・・。」
リオ:
「カシュキ様、本日はこの様な場にお呼び頂きありがとうございます。また、貴重な食材をふんだんに使った料理もどれもおいしく感謝に耐えません。」
リンデ王 カシュキ:
「リオ君、きみは年齢に似合わず、しっかりしておるな。もっと子供らしくしても構わんのだよ。なぁ、ラエル。そうは思わんかね。」
ラエル:
「そうですね。とは言え、我々と戦い、互角の力を見せたこの3名は、やはり特別かと存じます。」
リンデ王 カシュキ:
「そうだ、ラエルよ、お前さんがこの場を希望したのじゃな。何か聞きたい事でもあるのじゃろ?」
ラエル:
「はい、おっしゃる通りでございます。この場も、そして感謝祭での大会も、私が希望した事になります。」
リンデ王 カシュキ:
「ではその意図はなんじゃ?」
ラエル:
「ご説明します。」
ラエルは現在のリンデ島における冒険者の力量と、ドラニス帝国領内の冒険者との力量の差について説明し、リオ、リサ、ラオルがなぜ13歳と言う若さで騎士団と対等に渡り合えるほどの実力を付けたのかを聞いた。
リオ:
「これは、私の・・私の考えた仮説である事を先に申しておきます。順を追ってお話しします。」
リオは幼少期の頃からの出来事を話し出した。
4歳の時、雷に打たれ意識を失った事、魔術書や古文書を読み漁った事、5歳の時、属性判別で、弱い水系であった事などである。
ラエル:
「弱い水系だと、魔法戦士にはなれないはずでは?」
リオ:
「そうなのです。だから私は、訓練しました。5歳の時から毎日欠かさず。魔力を限界まで放出し、回復するのを繰り返し、山へ入り、体力を強化したのです。総魔力量は、体力、精神力、魔力操作技術によって増加する、と魔導書にも記載がありました。7歳からは初等魔法学校に入学し、リサ、ラオルと出会い、私と同じように毎日枯渇と回復を繰り返したのです。」
ラエル:
「なぜ10歳の時に高等魔法騎士学校へ進学しなかった?」
リオ:
「リサとラオルと相談し、冒険者の道を進むことにしたからです。それに、12歳で冒険者登録を済ませ、魔獣との戦闘を出来るだけ多く経験したかったからです。」
ランバルト:
「覚えているよ、あの時の認定試験。」
ゴラリア:
「ですね。認定試験の時からすでにこの3名は成人をはるかに上回る総魔力量を有していましたね。」
ラエル:
「12歳からちょうど1年ですね。いまの魔力量は当時からどのくらい大きく成長していますか?ランバトル本部長。」
ランバトルは席を立ち、リオ、リサ、ラオルの背中に手を当て、総魔力量の測定を開始した。
ランバトル:
「・・・・・。騎士団員の成人の平均を1とした場合、リオは4倍です。リサ、ラオルは3倍強、ものすごい魔力量です。」
ラエル:
「我々魔法騎士団は、高等魔法騎士団学校を卒業した中で、優秀と思われる人材を予備隊として2年訓練し、正規配属される。その年齢は16歳だ。その後も鍛錬を繰り返す事で、ようやく3倍程度だ。それを13歳で超えているのか?」
リオ:
「私からの仮説はこうです。生まれつきの個体差はあると思います。しかしながら幼少期からの魔力訓練は、その増加度合いが大きく異なります。子供のころから魔力操作に打ち込んだ者は、そのレベルが格段に上がる。剣技も同じような物だと思います。それに、枯渇からの回復は、もしかすれば、ですが、魔力総量のゲージを押し上げる効果が高いかもしれません。私たち3人はそれを毎日繰り返してきました。そして今日、しれは確信へと変わりました。」




