第一章【始まりと旅立ちの島】第75話 勝敗
ゴラリア:
「試合開始から何分経ったのでしょうか!リサ選手とラエル選手、一進一退を繰り返し、激しい戦闘が続いています!」
マリア:
「ラエル選手の光魔法、特に中距離からの雷撃!それに中堅での戦いでつかっていたリオ選手の技を使用した、全方位攻撃を巧みに使い、リサ選手を追い詰める!リサ選手はラエル選手の魔力を感じ取りながら、巧みにラエル選手の攻撃を剣で切り裂き、回避し、猛烈な一撃を打ち込む!互角の戦いを続けております!」
ゴラリア:
「あの帝国魔法騎士団リンデ島No1の団長とここまで渡り合えるとは、誰も予想していません!リサ選手の潜在能力は、どこまで奥深いのか!」
リサ:
「楽しんだ者勝ちよね。リオ、ラオル。フルパワーで行くわ!」
マリア:
「リサ選手の動きが変わった!宙を舞うその速度が更にUP!空を蹴り、移動方向が全く読めません!一撃一撃を確実にラエル選手に打ち込み、ラエル選手はそれを皮一枚でかわしています!」
ゴラリア:
「あの速度とあの連撃にラエル選手は着いていっていますね。しかしながら、防御に徹しているせいか、反撃するスキが無いようです。」
ラエル:
「猛烈だな・・何分経ったかな・・すこし頭がぼーっとしてきた。だめだ、集中力が・・。」
マリア:
「リサ選手!左右に舞いながら間合いを詰め、ラエル選手に切りかかります!」
ズバッ!
「ラエル選手の左腕が!宙に舞います!リサ選手!そのまま反転し、右側面へ!」
ラエル:
「・・ック!油断した・・。間合いは見切っていたはずだ。なぜ腕を取られた!見切った瞬間、剣を伸ばした攻撃か!利き腕でなくて良かったが、これはやられたな。」
リサ:
「次は右腕!」
ラエル:
「させるか!」
ラエルは体をよじり、リサの攻撃を避け、目に見えない速さの一撃をリサへ!
リサは右腕を狙い、剣を振り下ろす、その腕に、ラエルの素早い剣が!
リサ:
「がっ!」
ラエルの左腕、リサの右腕と剣が、宙に舞います!
リサは左腕で切り落とされた腕と剣をつかみ、尚も攻撃に転じます!
ラエル:
「勝負ありだ。」
ラエルは剣をリサの喉笛に寸止めし、コロシアムの空気が凍り付いたように静まり返った。
リサ:
「私の・・負けね。まいったわ。」
マリア:
「試合終了! 勝者 光の騎士団 ラエル・ジャプス選手!」
リサ:
「ラーオールー!腕を治して!」
ラオル:
「すぐ行く、まって!」
ラオル:
「すぐ治すから、動かないで。はじめは骨の再生・・・。次に血管。次は神経、少し痛みが走るから、覚悟して!」
リサ:
「・・・・・っ!」
ラオル:
「大丈夫、これ、凄いよ。この切り口」
リサ:
「なにも凄くないわ!悔しいだけよ。」
ラオル:
「普通、切断された細胞には、焼け跡とか、凍傷とか、細胞が壊されるんだ。だから再生魔法に少し時間がかかるのだけど、この切り口にはその傷が全く無いんだ。」
リサ:
「それがどうしたのよ。そんな事より、腕を反対に着けないでね。」
ラオル:
「あと少しで再生が完了するよ。大丈夫、ちゃんと接合するから。ラエルの剣、凄かったね。」
リサ:
「最後のあれね、まったく見えなかったわ。8倍なのに・・・。」
ラオル:
「リサ、もう大丈夫、再生完了だよ。」
ラエル:
「君は再生魔法が使えるのか、俺のも頼めるか?」
ラオル:
「大丈夫です、すぐに治しますね。」
ラエル:
「あぁ、頼む」
マリア:
「疾風のアグエスVS光の騎士団、勝数は1勝1敗1引き分け、勝ちポイント、先鋒ラオル1ポイント、中堅ドロー0ポイント、大将ラエル、3ポイントとなり、その差2ポイント!優勝は、光の騎士団!」
ゴラリア:
「光の騎士団は、リンデ国を守る魔法騎士団のなかで、最も戦闘力が高いチーム構成です。そのチームに、1勝1敗1引き分けまで持ち込んだ、若干13歳の冒険者、疾風のアグエスは、優勝は逃したものの、その剣技、魔法技術、支援魔法において、引けを取りませんでした。素晴らしい戦いをありがとうございました。」
コロシアム内が大きな歓声に包まれました。
マリア:
「ここで、リンデ王、カシュキ・ドラニス様より、閉会のあいさつです。」
カシュキ:
「すばらしい戦いを見せて戴いた。我が国を守る騎士団の強さと、これからまだまだ強くなる可能性の高い冒険者を目の当たりにし、安心と、未来の期待に心熱くなった。」
リンデ王カシュキは深く頭を下げ、閉会となった。
☆疾風のアグエス控室
リオ:
「リサ、腕、大丈夫?」
リサ:
「もう大丈夫、ラオルが完璧に治してくれたから」
リオ:
「ラエル団長、強かったね。」
リサ:
「あの人にはまだ勝てないわ。たぶんだけど、本気をまだ出していない感じだったわ。それより、リオ、あなたも凄いじゃない。お兄様と引き分けよ!ありえないくらい凄いわ。」
コン!コンコン! (控室のドアをノックする音)
ラオル:
「はい、どちら様ですか?」




