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第一章【始まりと旅立ちの島】第19話 判定試験最終日 ワイドベア

冒険者ランク判定試験 2日目 南の森上級 湖の周辺

朝10時過ぎに活動を開始した。魔力量はMAXまで回復し、体力、気力とも万全だ。

遅めの朝食をとり、ワイドベアの探索に入った。

ワイドベアは縄張りを持っている。その縄張りに入れば必ず襲ってくる。一度ターゲットされると逃げてもしつこく追いかけてくるのが厄介だ。途中で戦闘を辞めて逃げる事が出来ない相手だ。やるかやられるか、それがワイドベアとの闘いだ。

ワイドベアはファイヤーベアより一回り大きく、炎攻撃はしてこないが打撃がすごい。僕たちの体はまだ子供だから、防御魔法を使っていてもまともに当たれば腕や肋骨など、粉砕する。なので、打撃もらわない様に攻撃し、急所を一発で決める必要がある。急所は2か所、心臓と頭だ。

頭は頭蓋骨が驚くほど固く、貫くのは相当難しい。心臓はあばら骨に守られているので、魔法攻撃ではどうにもならない。物理的な攻撃で打ち破るしかない。リオのアイスピックをあばらから差し込めば何とかなりそうだが、ワイドベアのあばらは鉄よりも固い。


 リオ:「作戦を練ろう」

    「複数のワイドベアなら戦闘は行わない。

     これは約束だ。いいね。

     単体で見つけたら、索敵を行って近くに他のベアが

     居ないか確認する。問題なければ戦闘に入る。

     ターゲットは僕がとる。

     絶対に打撃をもらわない様に、気を付けて。

     強化魔法があっても、打撃が当たれば骨が粉砕する。

     ヒールをかけても回復する前に次の打撃が来るんだ。

     だからターゲットは僕が担当する。

     もし打撃が入ったら、チェンジし回復

     それを繰り返すのが基本。

     攻撃は魔法があまり効かない。剣でやるしかない

     ベアの上体をそらせ、急所の心臓を

     リサの剣で腹部から狙うんだ。」

 リサ:「無理だわそれ、私の剣では届かないと思う。

     ワイルドベアの腹部から心臓までの距離は、おおよそ1m

     私の剣は刀身80cmよ。届かないわ」

ラオル:「リオがやったみたいに、

     剣を突き刺して内部で斬撃を飛ばせば?」

 リサ:「その方法も有りだけど、剣先が見えない状態での斬撃は、

     正確に心臓を捉えれるか微妙だわ。それに発動までの時間で

     打撃をもらう可能性がある」

 リオ:「いい方法がある。見てみる?」


リオは自分の剣を構えた 「ファイヤーソード、ウインドブロー」


リオの剣は炎をまとい、赤い炎から黄色、から青白く輝いた。


 リオ:「ここからだよ」


   剣先に集中し、魔力を込めた。


 リサ:「え?なにそれ」

ラオル:「そんな事・・・。」

 リオ:「出来るんだよ。リサにも出来る。

     イメージ力なんだ。この世界は。」

 リサ:「どういう事?」

 リオ:「この世界の魔法はイメージした事を具現化する能力なんだ。

     だからイメージできない事は具現化できない。

    イメージできれば具現化できる。」


リオはこの事を数年前に気が付いていた。この世界の法則は、魔法にある。

衣食住で必要な事は、魔法で解決する。

家庭で料理をする。火の魔法 水を使う 水の魔法、風を起こす 風の魔法 土を使う 土の魔法、光のを使うのは魔石で代用している。

だからインフラが必要ない。電気も必要ない。すなわち科学や物理法則を突き詰める必要が無い世界である。物理法則が魔法で賄える為、魔法によって、化学技術が進化せず、物理法則も魔法が主体になる。

この魔法は、思念を具現化する。それは、イメージ力が必要だ。水、風、炎など身近に経験できる事は、具現化しやすい。しかしながら、イメージできない事は具現化できないのだ。すなわち、経験した事のない化学反応は、具現化するのが非常に難しい。それに、魔法を重ねる事で起こる事象をイメージできなければそれを具現化する事も難しいんだ。


 リオ:「多重魔法は魔力を大きく使用する為、

     総魔力量の多いA級やS級でないとうまく使えない。

     B級でも使えるが、1回が限度、

     枯渇して意識を失えばそれで終わりだ。

     リサも炎と風と多重演唱が出来るが、

     複数回連続はまだ厳しいだろ。」

 リサ:「うん、何とか3回までなら使えるけど、

     回復を待たないと枯渇するわ」

ラオル:「僕は支援系だから、多重魔法はまだ使えない。

     支援には大きく3種あるがそれらは多重になるのかな。」

 リオ:「支援系の魔法はすべて単体魔法なんだ。

     重ねて詠唱しても、支援同士が影響して

     変化する事はないだろ。」

ラオル:「うん、そういう事か」

 リオ:「僕の水魔法、水を具現化し、温度を下げる事で氷になる。

     これは解るね。

     その氷を極限まで圧縮すると氷が液体に戻るんだ。

     それをさらに冷やし、氷の状態を維持する事で、

     金属よりも固い氷が生成されるんだ。

     それに風魔法で回転を加え、破壊力を増加させる。

     そして風魔法で発射速度を上げ、敵を貫く。

     ここには数種の水魔法、風魔法を多重演唱する事になる。

     威力は凄いが、魔力消費も凄いんだ。」

 リサ:「なるほどね、なんとなくわかったわ。」

 リオ:「わかったなら出来るかも、やって見る?さっきのやつ」

 リサ:「良いわよ、やって見る」

 リオ:「はじめは剣に炎をまとわせて剣を伸ばすイメージで。」


リサは魔力を剣に集中させ、炎をまとわせる。


 リサ:「剣が長くなるイメージ・・・・。

     さっきリオがやったあの感じをイメージして・・・。

     ダメだわ、伸びない 相当魔力を使うのね」

 リオ:「慣れるまではそうかもね、

     出来るようになって慣れてくると

     無駄な魔力を放出しないから、大丈夫だよ。」

 リサ:「そうなの、わかったわ。」


アグエスの3人は湖の近くで魔力操作の練習を行っていた。

いつもの日課になっている魔職枯渇からの回復による総魔力量の増加訓練は、この試験機関では行っていない。枯渇状態で魔物に出くわすと厄介だからだ。それでもリサは、鍛錬し、2日目の夕刻までに3回の魔力完全枯渇で意識を失ったりしていた。

その間、リオとラウルが周囲を警戒を行い、魔物を退治していた。


 リサ:「リオ、何となくわかってきたわ。

     斬撃を飛ばす時って、ある種無理やりなのよね、

     風魔法に任せて飛ばす感じだから出来たんだけど、

     剣を伸ばすのは留める感じに近いのかな?ま、

     今日中にはなんとかなりそうよ。みて、

     5cm程度だけど、留める事が来るようになったわ。


刀身の不足を魔力で伸ばしカバーする。精神力と魔法操作が必要な訓練で、刀身を20㎝以上伸ばすのは、それなりに難易度が高い。

リサ・グルジオ リサはグルジオ家の長女で、兄、弟がいる。グルジオ一家は剣の使い手で有名で、その血を濃く受け継いでいる。父ダグラス・グルジオはS級魔法剣士で、現在他国の依頼でこの島には居ない。兄は皇帝直属魔法騎士団の団員である。 その血族なら、コツをつかめば習得は速い。


 リサ:「やったわ、20cm これで刀身1mの戦いができるわ。」

 リオ:「さすがだね、リサ。決戦は明日、ワイルドベアを倒そう!」


皇歴1827年1月13日 朝5時

リオが気配に気が付いた。


 リオ:「みんな起きて、ワイルドベアが近くにいる」


少し寝ぼけ気味だが、全員戦闘態勢に入った。


 リサ:「距離は?」

 リオ:「200m 0時の方向 」

 リサ:「何体?」

 リオ:「1体。」

 ラオル:「範囲索敵するね。近くにはほかの魔物はいないよ」

 リオ:「攻撃しなければ襲っては来ない。

     やるかやらないかは相手を見てからにしよう。」

     一度攻撃するともう逃げられないからね。

     じゃあ、昨日の作戦で行くよ。」


リサとラウルは無言でうなずいた。

ワイルドベアは、湖の開けた砂浜を歩いている。


 リサ:「でかい・・・。3m・・」


朝日に照らされ、ワイルドベアの毛並みが、銀色に輝いている。


 リオ:「リサ、腹部からあばらの内側を添うように

     心臓まで届きそう?」 

 リサ:「状態をそらせて懐に潜り込めばなんとかなる・・・。かも」

 リオ:「リサは一撃で仕留める事だけを考えて、

     そのチャンスが来るまでは後方待機」

     ラオル、俺の援護頼む。

     ターゲットを取るよ。」

ラオル:「状態強化、反応速度上昇、ウインドステップ、持続回復」

 リオ:「よし」


戦闘が始まった。リオがターゲットを取り、アイスピックを連打、剣に炎をまとわせ、ワイドベアに連撃。圧倒している様にも見えるが、ワイドベアへのダメージが通らない。

防御力が半端ない。それに左右から来る腕の振り下ろし攻撃は相当な威力がある。

「チッ!」爪が右肩をかすった。持続回復が傷口をふさぐ。

ラオルがすかさずウインドカッターを顔面目掛けて5連。

ワイドベアは両手で顔をふさぎ、状態が上がる。そのすきにリオは距離を取り、アイスピックを腹部へめがけて打ち込む。ワイドベアの腹部から血が出始めた。


 リオ:「よし、このまま攻撃続行だ。

     リサ、よく見てて、さっきの攻撃がタイミングだ。

     あと数回同じ攻撃をするから」

 リサ:「わかったは」


リオは距離を詰め、攻撃し、距離を取り、攻撃するを繰り返し、ラオルが顔面攻撃した瞬間、状態をそらせたワイドベアの腹部を攻撃する。ワイドベアは右腕を振り下ろす。リオはこの攻撃の危険性に気が付いた。リサが懐に入り、心臓を貫いたとしよう。その場合でも、ワイドベアは右腕を振り下ろすはずだ。瞬時に後退しないと打撃がリサに直撃する。


 リオ:「攻撃はもうちょっと待って」


ワイドベアの上体そらし、その後の腹部攻撃、右腕の振り下ろし、あの右腕、切り落とす必要がある。俺の剣で・・・。やるしかないか、魔力量もそろそろ心配だ。


 リオ:「リサ、ラオル、次の攻撃で仕留めるよ。

     リサが心臓を捉えた瞬間に、

     僕の剣でワイドベアの右腕を切り落とす

     良いね、ラオル、補助頼む」

ラオル:「了解」


リオがアイスピック攻撃を行い、距離を取り、剣に魔力を流し込んだ。

青白く輝く剣、「もっとだ、もっと強く」

剣は輝きを強め、あたりが白く照らされた。ラオルがウインドカッターを顔面に連打し、それをかばう様に状態をそらせたワイドベア、ウインドステップで懐に入ったリサは、刀身を110cmまで伸ばし、剣を水平に持ち替え、腹部から心臓に向けて一気に差し込んだ。

ワイドベアの右腕が振り下ろされようとした瞬間、リオは青白く大きく輝く剣で、ワイドベアの右腕を切り落とした。リサは後退し、状況を確認。


ワイドベアの体は、ゆっくりと前向きに倒れ、討伐は成功した。かかった時間は8分


試験監察官:「・・・・・。」


 リオ:「まだやれる?」

 リサ:「もう一発くらいなら」

ラオル:「そろそろ限界」

 リオ:「僕もだ」


解体回収を済ませ、ギルドに報告すれば、試験終了となる。

時間は朝の5時すぎだ。

範囲探索し、安全を確認し、朝食を取る事にした。


 リオ:「やったね」

 リサ:「うん」

ラオル:「クリアだね。これでB級試験合格だね」

 リオ:「まだ5時過ぎだ、ギルドに戻るのは夕方5時で十分だろ。」

    「時間いっぱいまで、やる?」

 リサ:「え~早く帰ってお風呂入りたい~」

ラオル:「僕も早くベットで横になりたいかな」

 リオ:「わかった、撤収しよう、昼過ぎにはギルドへ報告だ」




ギルド本部

 試験監察官:「本部長、報告します。」

       「パーティーアグエス3名は無事試験をクリアしました。」

ギルド本部長:「そっか、個々にはどうだった」

 試験監察官:「12歳とは思えません。リオは多重魔法、

        S級を放てます。 リサは同じく多重魔法A級 

        それに刀身延長を行えるようになってます。」

   本部長:「刀身延長?さすがグルジオの血筋だな」


 試験監察官:「いえ、リオもそれを習得しています」

   本部長:「・・・・。」

 試験監察官:「ラウルは支援魔法士として、制度はA級です。」

   本部長:「そこまでやるのか、あいつらは。」

 試験監察官:「はい、ワイドベアの討伐に8分 

        ファイアーベアは3体との交戦で勝利しています。」

       「それも、ポーション使用無しでです。」


皇歴1827年1月14日

パーティーアグエスは、昼食を済ませ、リサはシャワーを浴びてからギルド本部に到着した。


 受付:「お疲れさまでした。判定試験終了ですね。

     収穫物をここへお願いします。

     ワイドベア1体 ファイヤーベア3体?

     え?3体・・。

     ビックスネイクロック、レッドスネイクを

     各々3体を確認しました。

     2階の応接までお越しください。」


居合わせた冒険者がざわついている


   「12歳のパーティーでワイドベア?倒せるわけないだろ。」

   「ファイアーベアも3体倒したらしいぞ」

   「そんな事、できるわけがねー。

    ぜったい何かずるしてるんだよ。」

   「おれらB級だぜ?1体だったら何とかなるけど

    3体やれるか?逃げるしかないぜ」

   「12歳だぜ?まだガキなんだよ。倒せるわけねーよ」

   「ぜったいズルだ、なんか裏がある、おれが暴いてやるよ」


応接室


 試験監察官:「判定試験 お疲れさまでした。

        皆様のこの3日間の戦いと、

        取得物の鑑定は終了しております。

        ギルド本部長、お願いいたします。」

ギルド本部長:「おつかれさん、よく頑張ったね。

        君たちに依頼した判定試験、

        Bランク合格、そしてAランクも合格です。」

    リオ:「・・・・。」

ギルド本部長:「リオ、君は個人としてもAランク

        リサ、君もAランク冒険者だ。

        ラオル、君は支援魔法士としてAランク

        素晴らしい成績だ。これからも頑張ってくれ」


   受付嬢:「ギルドからのクエスト、冒険者判定試験で

        得たれた物品は、すべてギルドが買い取る

        ルールになっています。

        入金口座はアグエスでよろしいですね。

        分配はアグエスで行ってください。

        それと明日以降、個人の冒険者ランクカードと

        パーティーのカードをお渡しします。

        個人の冒険者カードは身分証明書として

        使用できます、パーティーのカードは、

        口座の管理に必要ですので、無くさない様に

        お願いします。」


リオ・リサ・ラオルは明日お昼の待ち合わせを約束し、帰宅した。口座にいくら入金されるか気になりますが、それを確認できるのも明日以降となります。

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