神に情状酌量の余地あり(仮)
「さぁ、入れ。ここが冒険者ギルドだ。」
「雰囲気のある場所だな。冬華、走るなよ?」
「子供扱いはやめてよー。」
「現在進行形で俺が止めてるんだが?」
さっさと登録済ませないと絶対面倒な事になる…。早く案内してくれ女の人。
「あ、クレアちゃん。おひさー。」
「うむ、息災そうで何よりだ。ミーラ。」
「今日はギルドで依頼受けるの?」
「違う。今日は彼らのギルド登録を頼みたくてな。」
「ギルド登録ね。ほいほーい。お2人さん、この書類に必要事項の記入をお願ーい。」
「記入だけで冒険者になれるのか?」
「そんな訳ないない。ちゃんと実力は見せてもらうよー?」
実力…試験でもするのか?もしそうなら対人戦がいいな。魔物より戦い応えがあった。
「今日は誰が居るかな…?あ、どうせならクレアちゃんが試験官する?」
「お、女騎士さんが…?」
「クレアでいい。そうだな…帰っても訓練くらいしかすることが無いから丁度いい。一応私は高ランク冒険者でもあるからな。」
「冒険者と騎士団って兼業できるのか。」
「そうだな。冒険者を生業とする者も多いが、どちらかといえば副業程度の者が大体だ。なんせ、依頼をいつ受けるかは自由だからな。」
「あの…ランクって?」
「ランクはS〜EがあってSに近づくほど強くなるよ。」
そうなのか…。
「ちょいちょい。」
「どうしたんだ?そんな小声で」
「アニメと一緒だ!」
「…よかったな。」
オタクはこんなもんなのか…こいつが子供なのか…真相は闇の中だ。
「じゃあ、闘技場にいらっしゃーい。」
「広いな。」
「コロッセオ…!本物が見られるなんて…!」
地球にも一応あるだろ。まぁ日本に住んでたら見ることは少ないか…?
「じゃあルール説明!クレアちゃんと戦って5分間無傷なら合格でEランク。一撃入れたらDランク。降参させたらCランクの冒険者としてギルドカードが発行されるよ!もし君達が降参すれば失格でギルドカードは無し!OK?」
「ああ。」
「まずはどちらから来る?」
「私からでお願いします。」
…意外だな。いや、意外も何も知り合って一日経っていないが。
「うむ。魔法使いか。そちらの好きな様に始まればいい。私にはミーラが結界を張っているから安心しろ。」
「では…【火球】!」
「ふっ!」
魔法を切った!スキルか?それとも剣に何か…?分からんが見ていよう。
「はぁっ!」
「【閃光】!」
「ぐっ!光属性…!」
「目潰しか。確かに有効だろうが…差があり過ぎる。」
「よく分かるね。」
「…え、えーっと…?」
「クレアだよ。君、強いでしょ?」
口に出てたのか…。
「あんたに言われたく無い。この中で1番だろう?」
「あっはぁ…!よく分かるね。でも、それは魔力量と防御だけ。ミーラが本気で来たら防ぎ切れるかどうか…よくて引き分けかな。そういう君こそ魔力量はそこそこだけど…なにか違うね。」
「…さぁな。」
異世界に来なかったら俺はそこまで強くなかっただろう。だって筋力が足りなかったから。でも今は違う。この知識を活かせる力を手に入れたんだ。それをこの人は察している。魔力以外で強さ測れるとか…バケモンかよ。
「【水切】!」
地面に撃って煙幕にしたのか。
「絡め手ばかりでは勝てんぞ!」
「分かってます…【水切】!」
さっきから地面にばかり攻撃を撃ってる…?何をする気なんだ?
「【凍結】!」
「地面が…!踏ん張りが効かない!」
新しい魔法か!いつの間に取得したんだよ…。
「【石礫】鋭!」
「くっ!」
「はい終わり。5分経ったよ。」
「最後のは凄かったな…。一撃入れられてしまった。」
「あはは…運ですよ。」
「それにしても地面を凍らせる為か…面白い発想だ。次は…君か。」
「休憩するか?」
「いや、いい。少し治癒魔法を掛ければ体力を回復出来る。」
「…そうか。」
「さぁ、始めるぞ。」
「分かった。」
「なんだ?指に挟んだその球体は…。」
「どうぞかかって来てくれ。」
「…舐められたものだな。では行くぞ!」
舐められた…ね。俺は別に舐めプしたい訳じゃ無い。そんな事しないでも負けるだろうし。
「俺のアドバンテージは…手数とカウンターだ。」
「…もう一撃入れられてしまったな。」
【衝撃堕転】を発動した蹴りを防いだ…。衝撃とスタンは残っているだろうがすぐ回復されるだろう。距離は…届く。
「【大地ノ大斧】!」
「っ!…何処から出した?」
「何処からも出してない。【黒紫双剣】、【付与 火】。」
「なっ…!」
魔法付与は魔力がごっそり持ってかれるな…。変形球、武器の特性までコピるのか。人権超えてるだろ…。
「付与…いや、それはいい。今、斧が双剣に…?」
流石にデカすぎて剣士相手は不利だからな。黒紫双剣は俺がやってたゲームでメインウェポンだったし使い方は分かる。右の蒼鬼が青い炎、左の赫鬼は赤黒い炎を内側に溜める。太刀筋に沿ってその炎が発生する。だから傷を作って焼くことで再生系のモンスによく使っていた。それで無くとも元が有能だからな…。
「まだスピードバフ特化持ってないんだよな…。ま、防戦でいいなら全然大丈夫か。」
「確かに一撃入れられたしな。その奇怪な武器を抜きにしても君は強い。武器破壊が狙いか?」
「どーも。」
バレてるし。
「私もスキルを…」
「はいストップ。」
「…ミーラ。」
「流石にダメ。じゃあ2人とも合格。Dランクおめでとー。」
「うむ、文句は無いな。魔法使いは初めの頃、近接職に勝てないものだが…魔法の組み合わせで乗り切れるだろう。魔力量も膨大だしな。君に関しては技術が高いな。魔力もバフだけをするなら多いくらいだ。」
フルダイブゲーム様様だ。あのゲームがスキルエフェクトしっかり作り込んでくれたのが本当に良かった。それも実用的だし。まぁツムグに感謝するのも良いかもな。許すのは別として。
「んじゃー。お2人とも戻ろっか。」
これで正式に冒険者か…。あ、まず金欲しいから売れるなら魔物売らないと。
「ミーラ。ここって魔物売れるか?」
「勿論。買取してるよ。今あるなら出してー。」
「あいよ。」
ゴブリン、オーク、オオカミ、鳥、粘液…粘液?!あ、スライム…。
「すんごい量だね…。全部買取?」
「頼む。」
「うん…って、ロックウルフ?!B級なんだけど?!」
「街の近くで他のと一緒に狩ったぞ。そんな強いのか?」
「1匹なら硬いだけだけどそれが統制されて襲ってくるからね…。こっちはもしかしてソニックバード?まる焦げなんだけど…。」
あー…そういえば冬華、飛んでるのがうざいとか言って途中から火魔法でなんちゃってマシンガンしてたな。
「君達、やっぱり今日からC級ね。初心者がこれは流石におかしい…。」
「知識が…な?」
「知識が…ね?」
「もういいよ…精算に時間かかるだろうし、今日はロックウルフ分の報酬出すね。合計12匹で金貨6枚。これだけあれば1ヶ月は裕福出来るよ…羨ましい。」
そりゃどーも。早く宿見つけて飯食いたい…。
「あ、近くに泊まれる場所ってありますか?」
ナイス冬華!
「泊まれる場所…あ、ギルドを出て5右軒先にあるよ。ご飯も食べれるみたいだし早く予約しないと埋まっちゃうよ。」
「ありがとうございます!」
「感謝する。右5軒だよな…ここ?」
「ここだね。ザ、異世界宿って感じだぁ…。」
取り敢えず入るか…
「らっしゃい!お客様2人入りまぁーす!」
「「「らっしゃいませ!」」」
「ノリが居酒屋!」
「部屋の予約頼む。」
「なんで動じないの?!」
「今更過ぎてな…。」
だって俺達、神に殺されて神に転生させられて魔物倒して襲われて冒険者になったんだぞ?今更でしか無い。
「お部屋は1つでいいですか?」
「いや、ふた…」
「お願いします。」
「!?」
「…まいどありぃ。」
ニヤニヤするんじゃねぇよ!?これはあれだ…そう、親睦を深めるためのお泊まり会的な…そうだ!決してR-18な関係になるためじゃない!だってお酒飲んだらダメって言う奴がR-18破る訳ないだろ!
「209号室の角部屋をお使いください。…出来るだけお静かにお願いします。」
「はい。」
ねぇなんでニコニコして店の人と会話してるんだ?
ねぇなんで俺は悪寒を感じているんだ?!
「ご飯くださーい!」
「メニューお持ちしました!」
そうだ、飯食べたらこんな感覚消えるだろ。これは飯を食べていなかったから体調が優れていない証拠だ。そうだとも。どれどれ、メニューは…
メニュー
衣服
服セットA……… 銀貨3枚
服セットB……… 銀貨3枚
服セットC……… 銀貨3枚
道具
マッサージ機…… 銀貨2枚
小型マッサージ機…… 銀貨1枚
縄 ……銅貨50枚
その他、何かあればお申し付けください。
「誰がラブなホテルのを持って来いと言った!」
「取り敢えず…Bセットください。これって部屋でも頼めますか?」
「はい、部屋についている魔法回線を使用してご注文ください。」
「何普通に注文してんだよ?!」
「こちら普通のメニューです。」
「普通じゃない自覚あったんだな?!」
え、なにこれ…俺にツッコミさせるためか?そうだろ?そうだと言ってくれ…。
「お待たせしましたー。こちら、Bセットと串焼きになります。」
まじで勘違いであってくれ…串焼きうまっ。
次回、どうなってしまうのか!