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悪い大人と良い大人

にしてもデカい壁だな…さっき戦ったやつらに侵入されない為か?


「人並んでるし後ろからついて行くぞ。」


「うん。」


「…。」


「…。」


いや会話!俺の会話デッキから天気を抜けばゲームアグロデッキになってしまう…。今、天気のカードを使ってしまえばそこで終わり…!冬華、あまりゲームしてなさそうだからな。でも背に腹は替えられない、か…。


「本当にすごいいい天気だな…。」


「そうだね…この世界の夜は星が綺麗だろうなぁ。」


「確かに。…あ、もうそろそろ順番だな。」


「そうだね。」


意外とすんなり列が進むんだな。カードを見せて少し会話を…ん?会話?


「な、なぁ冬華。」


「どうかした?」


「これって…言語通じると思うか?」


「通じないとまずいよね…。」


「もし通じなかったら外来人的な感じに振舞うしか無いよな。」


「次。」


順番が回って来た。一応向こうの言葉は理解出来そうだ。でも、話せるかどうか…。


「ギルドカードの提示を。」


「俺達は持っていない。」


「紛失したのか?だったら銅貨一枚だ。」


「すまないが金も持っていない。でも換金ができれば払える。」


多分な。


「…なら換金だ。ついて来い。」


会話もできる…ひとまず安心だな。


「魁星…ナイス。」


「どーも。…ここが換金所か?換金所にしては随分と薄暗くてボロボロだな。」


奥から男が…。これは確定だな。冬華は顔が良いからなぁ。


「冬華逃げろ。騙された。」


「えっ、でも魁星は…」


「俺はいい。標的は多分お前だ。」


「ダメだよ、危ない!」


こいつは本当…どこまでも優しいな。


「大丈夫だ。俺はある程度フィジカルあるし足も速い。最悪正当防衛で殺す。」


「…え?」


「ま、最終手段だ。早く行け。」


「嫌だ!」


「っ!!」


こんな話をしてる間にも相手は襲って来てる。さっきまでの冬華はどこに行った…。早くこいつを逃がさないと。相手は多分格上だから俺は運良く生き残れても重症は避けられない。そして俺がこいつらを殺せると思っていない。…いや、俺にはスキルと変形球がある。重症になる前に逃げればどうにか…。


「後ろ!」


「チッ、無言で襲うんじゃねぇよ!」


いってぇ…この大斧鉄より硬いってなんだよ!オープンワールド格ゲーで積み重ねた対背後奇襲足蹴りカウンター出来なかったら死んでたぞ…こいつら普通に武装してくるしマジできついな。こいつをどうにか外に…いや考えろ。サバゲーで逃げた先に敵がいるのはよくある展開だろ。そう考えたら俺の背後に隠しておくのが正解なのか?でもそれだと俺が死んだ時に…。でも、それが一番だな。


「きゃっ!」


乱雑になってすまんが許してくれよ。背水の陣は最強の守りだ。あとは俺の想像力!


荊棘ノ盾(けいきょくのたて)!」


「武器が…っ?!」


確かに俺はこいつらより低レベルの雑魚だ。でも俺にはゲーム知識と発想がある。レベル差でぶちのめす様なこいつらに呆気なくキルされるほどヤワじゃねぇよ。



スキル 衝撃堕転(インパクトドライブ) を習得しました!



衝撃堕転?性能は…え?これ近接職の人権レベルで強いんだが…?まぁいい。使い方が分かればこっちのもんだ。いや、やっぱりダメだわ。これ盾にもスキル判定あるの強すぎんだろ。


「荊棘ノ盾と相性良すぎ…。」


『感謝してよね?少年。』


んー。今ツムグの声が聞こえた様な…気のせいか。


「おいクソ野郎。俺達の勝ちだな。」


「魁星…なにかあるの?」


「面白い。その挑発受けよう。」


挑発じゃねーよ。全員まとめて終わりだ。


「【衝撃堕転】!」


「かッ…!」


能力は内部への衝撃と確定スタン。そして…


「使用者と対象者の能力差分、衝撃の増加。縛ってやるから精々苦しめ。ま、お前以外声も出ないみたいだが。」


「くっ…そぉ…!」


冬華に手を出そうとしたのが運の尽きだ。


「アイテムボックスに縄入ってるかな?」


「探してみるか。」


あったわ。


「騎士団呼んでくるよ。」


「おー。」



スパァン!


「騎士団だ!全員動く…な…?」


大体10分くらいか?速いのか遅いのか分からないな。


「魁星…なんでその人…そんな格好なの?」


「なんで甲骨結びで吊るされて火炙りにされてるかって事か?」


「一語一句詳しい説明を求めたいのだが…?」


「暇だったからな。こうやってクルクル回して遊んでた。先に攻撃したのはこいつらだし正当防衛。口の中にゴブリンの耳でも突っ込んでやろうかと思ったが汚いからやめた。」


「同情すらできないね…。」


「…ひとまず騎士団でその男達の身柄を拘束させて欲しいのだが、いいか?」


「全然良いぞ。あ、その前に。」


「ぐがっ?!」


「一発入れたかったから。冬華もするか?」


「う、うん。【火球】!」


「ちょっ、それはダメだ!そっちの君の様に物理にしてくれ…流石に顎を蹴るのはやり過ぎだが…。」


何処がだ。本当は滅多刺しにしたいんだぞ?


「君達にも同行を願いたい。ギルドカードはあるか?」


「持ってない。」


「持ってないです。」


「そうか。なら再発行するからまずはギルドに行こう。」


「元々持ってないから再発行無理だと思うぞ。」


「ギルド登録をしていないのか?今時珍しいな。後で登録すると良い。それではまず、事情聴取をさせてもらおうか。」


別にいいが…一応冬華と一緒に居たいな。さっきの事があるし。


「…安心しろ。2人まとめて事情を聞かせてもらう。」


「!」


この人…めっちゃ良い人だな。それともマニュアルでもあるのか?んー。分からんが良いならそうする。


「ついて来い。駐屯所へ行くぞ。」


どんな場所か気になるな。


「冬華。大丈夫か?」


「う、うん…。」


震えてる。多分、怖かったんだな。そりゃ大人数人に襲われたら怖いわ。


「あいつらは騎士団がどうにかするらしいから任せよう。…ごめんな。」


「そうだよっ!なんで自分を犠牲にしようとするの!」


「えっ、そっち?」


「それ以外に何があるの!」


「俺はてっきり乱雑に扱われたからだと思ったんだが?」


「そんな事気にしてない!なんでそんなにすぐ死のうとするの…?またなの…?やめてよ…怖いよぉ…。…。」


また…ね。日本にいた頃、何かあったんだろうな。何があったのか気になるが…今じゃなくても良いか。


「どうしたら許してくれるんだ?」


「もう死のうとしないで!」


「それ絶対許してないやつでは?」


「ふざけないで!」


本気で怒ってるのか。俺はどうすれば良いんだろう…。


「…ん!」


「ん?」


手を見せてどうしたんだ…?怪我も無い綺麗な肌だが…。あ、そういう事か。


「これで良いか?」


「指。」


「へいへい。これで許してくれるのか?」


「…知らない。」


…なんだよこのバカップル感!恋人繋ぎしながら腕にもたれかかるのはダメだろ、何がどうとは言わないがダメだろ!騎士団の人達からの生ぬるい目線が凄く恥ずかしいっ…!


「わっ?!…魁星?」


「外では恥ずかしいんだよ。抱っこで我慢してくれ。」


「っ…!理由は分かったけどなんで抱っこ?」


「さっきの体勢が抱っこしやすそうだったから。なんだ、背負って欲しいのか?」


「うん。」


即答かよ。…ま、今はご機嫌取りに徹しますかね…。


「…もう、やめてね。」


「なにを?」


「分かって聞いてるでしょ。…本当に、お願い。」


「はいよ。これからは気を付ける。」


「…バカ。」


指を絡ませながらとは随分と可愛らしいバカだな。全く迫力がない。…まだ、元気が無いな。仕方がない。()()をしよう。


「チンダル現象。」


「…んふふ」


服で口押さえるんじゃねぇよ。こしょばいだろ。


「沈降運動、チンアナゴ、チンゲンサイ。」


足をバタバタさせるな手を強く握るな爪が刺さって痛い!冬華と仲良くなるために色々ツムグに聞いてて正解だったな。冬華がムッツリとかアニメ好きとか。


「…ムッツリ。」


「お前がな?」


「それは独身の多い騎士団に対する当て付けか…?これ以上イチャつかないでくれ。羨ましい。」


「俺たち付き合って無いぞ。」


「…付き合ってないのにその距離感なのか?」


「喋ったのも今日が初めてだよね。」


「そうだな。」


「…2人共、遊び人なのか?」


「違う。話が合う…」


話…合ってたか?


「…趣味が同…」


趣味違うくないか?


「…冬華のコミュちから(笑)のお陰だ。」


「誰が(笑)?」


「イチャつくな。話を聞かせてもらう。」


そういえばそうだった。冬華のご機嫌取りに徹しすぎたな。


「まずは何故あの様な状況に?…あ、私がくる前の状況だ。」


「街に入ろうと思って…ギルドカードもお金も持ってなかったけど、お金になるものは持ってたから換金してもらうために。」


「そういう事か。あいつらは元から問題が多くてな…丁度良かったと言うべきか。その前に、2人共すまなかった。これは我々、騎士団の監督不行届きだ。」


「い、いえっ!これはあの人達が悪いんですよ!」


「そうだ。あんたらがいくら鍛えて警戒をしたところで犯罪全てが消えるわけじゃ無い。もっと責任転嫁していけよ。」


「…そう言ってもらえると嬉しいな。これで事情聴取は終わりだ。ギルドまで案内しよう。お前達は訓練だ。彼らはこう言ってくれたが騎士団の信頼に賭けてこの街の安全を守るのだ!」


「「「「はっ!」」」」


「あ、そういえば金払って無い…。」


「そんなものは要らん。贖罪…というわけではないが、それくらいはさせて欲しい。」


「ならお言葉に甘えます。」



「向かうついでだ、まずギルドについて少し説明しよう。ギルドとは国ではなく個人が運営する組織で、国と結びついている部分もあるが大体は違う。そしてギルドには冒険者、商業、農業の3種類があり、それぞれの得意分野がある。ここまでで質問はあるか?」


「それって全部一気にギルド登録とか出来るのか?」


「出来るがオススメはしないな。冒険者ギルドと商業ギルド、商業ギルドと農業ギルドを登録する者は多いが…商業ギルドと農業ギルドは月会費がかかるからな。冒険者ギルドは会費を払わなくて良いがあまり働かないとギルドから登録を削除される。2人は何処のギルドに入るんだ?」


「俺は冒険者だな。冬華は?」


「私も冒険者ギルドかな。」


冬華も冒険者ギルドに入るのか。少し意外だな。


「まださっきの震えが止まっていない様な怖がりが大丈夫なのか?」


「!」


本当はこんな事言いたくないが…冒険者は怖がってちゃすぐ死ぬ様な仕事であり、自信過剰でも死ぬ仕事だ。騎士団の女の人も止めないしもう少し圧を強めて…


「…私、怖がりなんだ。昔に大切な何かを失って、何も分からなくなって。今、冒険者になりたいって言ったのも魁星がいるなら安心だと思ったから。でも、やるからには…がんばる。」


…やれやれ。虚勢丸見えの宣言だな。


「そうか。なら、なるだけ一緒に仕事を受ける。信頼されてるなら応えないとな。」


「…ありがとう。」


本当…何があったんだか。いつか教えて欲しいもんだな。

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