転校した校舎はヤバい場所。
ー5月後半ー
梅雨。
雨の降る道路
雨の降る学校
親の事情で転校することになった高校1年生の女子高生・小雪。
彼女の前の学校は中高一貫だったためみんな揃って高校生になるはずだった。
だからなのか少しだけ悲しさがある。
だけど、今は新しい学校と新しいクラスに期待で胸が弾んでいた。
「んっと…ここでいいのかな?」
校門の前に立って高くそびえる校舎を眺める小雪。外観はきれいで新しいのか、最近リフォームされたのかわからないけど白くてきれいだった。その外観を見て前の学校よりもきれいで設備がしっかりしている場所なのかなと妄想を膨らませる小雪。設備はいいかもしれないが…多分そんなに期待しているとあとで後悔するぞと言いたくなってしまう語り手なのだった。
「ちょっと広すぎてよくわかんないし…私のクラスってどこ?!お父さんとお母さん教えてくれてない!」
場所がよく話かからない。そんなときには~~~職員室にインターホン!
ポチッ
『ピーンポーン』
このピンポーンというありきたりな音は、なんとだれも予想することのないであろう人工音声だった。
多分このインターホンに出てくれる人がやってくれていると思う。
『はーい。私はこの自由主義中等高等学園の事務担当をしております。ご用件は何ですか。』
この学校の名前は言うのを忘れかけてスルーしていたが、自由主義中等高等学校という。
この学校も小雪が前通っていた学校と同じく中高一貫だ。
自由主義と書いてあるが、どこまでが自由主義なのかがわからないのもまた怖い。
「あっあの、私は今日から転校してここの生徒になる小雪です。私の通うクラスを親に伺い忘れたので教えていただきたいです。」
『了解しました。えっと小雪さんのクラスは…1年……B組ですね。』
「1年B組ですか!?教えていただきありがとうございました。」
小雪はインターホンのある場所から駆け出して昇降口らしき場所に行く。
その昇降口らしき場所の1年B組の下駄箱を探してみる。下駄箱で靴を入れて中に上がらなきゃいけない。だが、この学校の下駄箱はすごかった。
なんというか…各クラスの個性が光っているといいますか、デコられていた。
そしてB組はすごかった。BANとか超新星爆発ならぬ超新星大爆発!とか黒板消し落石注意報発令中とか…そういう文字がシール風にされて下駄箱に貼られていた。
落石注意報とかしか出没注意報とかのやつだな。
「こっこんな学校で本当に大丈夫なの?まぁ下駄箱のデコは前の先輩方のかもしれないし…。」
小雪はクラス、そして学校を心配しつつ、この落書きやデコをやったのは先輩方だと信じて靴を脱ぎ、上履きに履き替えた。
階段を上る上る。大体の校舎は一年生が一番下の階。
だけどこの校舎は設計者は何をしたかったのかわからないが…二階!1年A組2年A組3年A組の三クラス。3階!1年B組2年B組3年B組の三クラス。二棟は1年C組2年B組3年C組、とあべこべなクラスは一だったのだ。
「まって…私たちのクラス一番哀れかもしれない…。下級生なのに3階でしかも…!」
小雪はだんだん恐ろしく見えてくる階段とにらめっこしながら上の階へと昇っていく。
普段はあまり動いていないのだろうか。3階についたころにはもうへとへとになっていた。
「…はぁ~はぁ~……階段上って右手側…ゼーハァー…」
小雪の目には光り輝くほど清楚で整った児童と教室…ではなく黒板に落書き、壁に謎のたくさんのポスターと落書き。机の並び方は意味不明、騒ぎまくる高1が何人もいるという絶望的なクラスだった。
「ん?あ!みっみんな急げーー急ぐんだ!新しい人間が来た!清楚なクラスだって印象付けてからみんなでパリピしないとぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!」
そのあわただしいクラスの人たちは新しい人間こと転校生が来たことに気づき、急いで黒板の落書きを消したり雑巾で壁を吹いたりしていった。でももう手遅れなのだ。
「(そういえば下駄箱に黒板消し落石注意報って張られてたっけ…。落ちてきた黒板消しの粉とかついたらやだし、念のため教室はいるのはドアを開けてちょっと経ってからにしよう。)」
ガラガラッ
バフッ
案の定黒板消しが勢いよく落下してきた。1個じゃなくて…4個連続で落ちてくるなんて知らないぞ!
「何?え…4個とか不吉すぎるし…ちょっと怖い…。」
小雪が驚いている間にB組はみるみる清楚系クラスに変わっていく。
外見だけ。外見だけな。
「よよよよよよよよようこそ1ねんA組へぇぇぇぇ!!!」
このクラスの統率軍(統率されているようには見えない)らしき人物がぐるぐる目で迎えてくれた。
その声からは焦りが見える。
そして一番気になるのはジャージだろう。周りの生徒たちはみんな制服だ。
なのにコイツ一人だけジャージ姿で学校にいる。体育だからジャージ登校ということはよくある。
だけど今日は雨だ。多分外体育はない。あるとすれば体育館での体育だが…でもそしたらクラスの人たちはなぜめんどくさい制服なのか…。
「お!転校生がさっそく来たか。ここが1年B組だ。今日からよろしくな。」
なんだろう。ちょっとおじさんだけどイケてるおじさんみたいな感じな方が先生らしい。
といってもどうせ40代くらいの先生だな。
「…はっはい。」
「よーし皆今だけ席座ってもらっていいか?ほら、自己紹介を頼む。」
こんな不安しかないクラスでも一応先生の話は聞くんだなと思った小雪。そして今だけ席に座ってもらっていいかという言葉がすごい心に残ってしまった。
「私の名前は小雪です。名字は白鷺っていいます。好きなことはギターと読書です。よっよろしくお願いします!」
小雪の本名は白鷺小雪。そしてちょっと意外だったのはギターが好きなことだ。
でも意外とギャップがいいのかもしれない。
「クラスの学級委員長も自己紹介を頼むぞー。まずはクラス内で打ち解けあうのが大切だからな。」
おっいい先生っぽいじゃん。
「はいはーい!私の名前はりん!名字は覚えてない!から言わない!好きなことはちょうちょ観察と理科の実験!嫌いなことは勉強と正論と現実と巨…巨大な現実と理想の壁です!よろしくねー。」
コイツはぶっ飛んでるぞ。そしてこいつが…クラスの学級委員長だって?
名字が覚えてないのはよくわかんないし知らないが…嫌いなことは勉強。それはわかるぞ。何人かのB組の人たちが必死にうなずいてたからな。正論と現実はギャグ要素強すぎ。そして巨大な現実と理想の壁だってさ、こいつはどこで何を学んでその結末を得たんだろ。
小雪はその自己紹介を聞いてびっくりした。こっこれが学級委員長!?みたいな感じで。
「後々紹介していくと多分大変になるだろうからみんな今自己紹介しちゃうか?」
「さんせーです!」
「誰からやっていくか?そうだな…よし、最後に自己紹介したりんから相互指名で回していけ。」
「オーケーです先生ー。んじゃそこの窓に向かって何かを崇めてる人物~~。」
お前誰だ!そして指し方が適当すぎるな。
「な…。俺は今絶対指されたくないと思って祈ってたんだぞ!?まぁいいや。俺の名前ははお。認めるつもりはもっとう無いがりんの相棒か相方らしいぞ。好きなことは剣道と焚火だ。嫌いなものは騒音と轟音。そして自称天才!そんな感じだ。よろしく。あっあと音楽は大の苦手だ。」
総自己紹介したのは茶髪で平凡な男子高校生。はおと言う名前で、りんの相棒か相方というのは認めたくはないが、周りの人たちのりんとの相性だ。
好きなことが焚火…キャンプが好きなのかな。きらいなものは騒音と轟音。音系だ。
これは人のラインなのか音楽のラインなのかわからんな。
最後が自称天才。自称天才は言って愛されるキャラと嫌われるキャラがいるんだよな。
音楽が苦手か…。小学生だったころの音楽会は全部休んだらしい。
「次、スマホ持ってうつ伏せで死にかけてる人物。」
「わっ私!?えっと私の名前はゆいです。好きなことは推し活と勉強と…絵を描くことと家庭科です。嫌いなものは…推しのアンチと推しのアンチと推しのアンチです。よろしくね。あと同担拒否じゃないから、推しが一緒だったらぜひ話してほしいわ。」
コイツは勉強面でも優れていて、特に家庭科。中学生からずっと5で、成績も43以上と好成を残している。だが、推し活真っ最中の現代少女だ。
推し活と両立しながらここまで成績がいいのはすごいことだな。
好きなことは今までで誰よりもほっこりするような平和なものだが、嫌いなもの。
推しのアンチが嫌いな気持ちはわかる。だが同じことを三回も言っているのだ。
それほど推しが好きなんだろう。
また、同担拒否じゃないというところがなんかほっこりする。
「次は、花で占いやってるパリピギャル。」
「私はパリピでもギャルでもないってば。私の名前はなつだよ~。推し様はゆいちゃんと同じ!ちなみに私も同担拒否ではありません!好きなことは推し活と食べ歩きとネットゲーム。嫌いなものは推しのアンチ推しのアンチ推しのアンチ。とずっきーにです!よろしくねー。」
ゆいからのパリピギャルよばりは速攻否定。ゆいと同じ方を推しているらしい。
好きなことは推し活と食べ歩きとネットゲーム。だと!?現代社会をバリバリ楽しんでるじゃんか。
これはパリピギャルと呼ばれるのも分かるかも???嫌いなものは推しのアンチ×3
ずっきーに…たまにチーズバーガーとかきっづバーガーに入っていて嫌なキュウリみたいなやつだ。
その気持ちはわからなくもないぞ。
次回に続く