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好奇心のまま行動したら最強になってしまった…(1)

「うおぉぉぉぉ!つまらないーーー!!」

「もう、魔法も剣術も全部覚えきってしまった… やることがないっ!」


 俺は前世、自分で言うのもなんだが、天才な高校生だった。飛び級で外国の有名大学に進学し、日本で言う高校生を終える年齢までに卒業してしまった。

 俺が飛び級で大学を卒業できた理由は、ただ頭が良かったというよりも、誰よりも好奇心が旺盛だったという点が大きかった。気になったものはすぐ調べ、やってみたいものはすぐやってみる。そうしないといつも暴れていたそうだ。そのため、両親は俺がやりたいように色々やらせてくれた。そのおかげで色々なことをできたのだが、ある時気づいてしまった。

 この、100年程しか生きられない身体では世界中の全てのことを知ることはできないのではないかと。それはよく考えたら普通のことだが、俺にとっては死活問題だった。あぁ、気が済むまでずっと生きていたい。そう思いながらどうにかならないものかと考えていた矢先、俺はトラックに轢かれたのだ。


 そして俺はなぜか異世界に転生していた。トラックに轢かれて異世界転生なんてベタすぎて夢なんじゃないかとも思ったが、痛覚はあるし、そもそも自分の見た目が全然違う。景色も世界中どこを探してもないような広大な平原と森。やはり異世界。

 正直異世界転生なんて信じられなかったが、信じるしかないようだ。

 元の世界のことを全然知り尽くせていないことに未練があるものの、新しいことを学べるのではないかという期待も大きかった。どうやらこの運命を受け入れるしかないようだ。

 このままでは何もできない。早くこの世界の知識を身に着けなければ。とりあえず町っぽい場所まで歩こう。


 「ふーー」

 体感1時間位歩いて小さめの町にたどり着いた。とりあえず、ここがどこか聞いてみて本当に異世界かどうか確かめよう。その後は本屋か図書館にでも行ってみて色々調べてみるか。でも、言語ってどうなっているんだ?このまま通じて分かればいいが。


「すみません、少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 丁度入り口付近にいた30代くらいの男性に声を掛ける。

「ん?なんだ?この村の人じゃないな。冒険者か?」

 おっ!言葉は問題なく通じるみたいだ。良かった。しかも冒険者か。この世界には魔物のようなものがいるのだろうか。少しワクワク感が込み上げる。

「はい、そのようなものです。ここがどこか分からなくなってしまって教えてもらいたいと思いまして。大丈夫でしょうか?」

「なるほどな。そういうことなら家に上がって行きな。ここがどこか分からないなら泊まる場所とかもないだろ。持ち物も持ってないようだしな」

 凄く魅力的な話だな。確かに今の俺は服以外何もないようだし、何も分からない。怪しさもあるがここはお言葉に甘えよう。

「本当ですか?こんな見ず知らずの者にありがとうございます。よろしくお願い致します」

「まぁ、家は別に綺麗なわけじゃねえが村の皆の溜まり場みたいな場所なんだ。だから一人増えたって大して大変じゃない。でもあんまり期待はするなよ?おまえさん、言葉が丁寧だからきっと都市生まれだろ。そんな大層な場所じゃあないからな」



「ここが、オレらの家だ。入りな」

 そこには木造の西部劇に出てくるような二階建ての家が建っていた。思っていたよりも頑丈そうだ。

「お邪魔します」

 中にはが人が1人おり、自分が想像していた大衆酒場的な場所ではなく、机と椅子が数セットある落ち着いた雰囲気の談話室的な感じであった。

「おー!おかえり。ん?その隣の人はどうしたんだ?」

「あぁ、今そこで会ったんだ。場所が分からなくなったみたいでな、今晩泊めてあげようかと」

「ハハッ!またか。お前もお人好しだな」

 また、ということは俺のような人を案内するのは初めてじゃないということだろうか。だったらこのスムーズさに納得がいく。

「うっせ。あっごめんな、オレの友人が」

「何いってんだ親友だろ?オレはザシャ。お前の名前は?」

 そういえば名前、この世界ではどうなんだろうな。前世では陽希だったけれど流石に日本っぽいよな?目の前の人の名前もザシャだし、一文字消して少しでも名前をぽくするか。

「申し遅れました。ハルと申します。よろしくお願い致します」

「ハルか!いい名前だな!そう。もっと軽くて大丈夫だぞ?そんなお辞儀まで。オレはラルス。気ぃ使うな自分の家だと思ってゆっくりしてけ。ここらのことも教えてやるから、まず座れ」

 案内してくれた人はラルスと言うのだな。本当に親切にしてくれる人だな。

「じゃあお言葉に甘えて…ありがとうございます。じゃあ早速教えてもらってもいいですか?」

 ザシャさんと同じ椅子に腰掛けながら聞く。

「おっ若干砕けた。よしよし、何から知りたいんだ?」

 ラルスさんも席に着く。

「ええっと、そうですね。まずここの場所の名前は何ていうんですか?」

「おぅ!この町はトータス村っていうんだ。町って程の広さじゃねぇが都市に近いし、ある程度のライフラインが揃ってる。だからわりかし暮らしやすい村だぜ」

「そうなんですね!ではその都市という場所についても教えてもらっても?」

 さっきラルスさんに言われて気になったワードだ。

「あれ?おまえさん都市出身じゃなかったん?」

「いや、少し訳ありでして…」

「まぁいいや、んー…オレも大きな買い物の時にしか行かないからあんまし分からんが、物は何から何まで揃ってて色んなとこから商人が集まるっていうことと、その中心にはでっかい魔法学校があって教育水準?が高くて金持ちが多いってことくらいしか知らんな?それで大丈夫か?」

 マジか、魔法学校なんてものがあるのか!これは期待大だぞ。そもそも誰が入学できて誰が魔法を使えるのかも分からないが、行ってみる価値はありそうだ。

「はい!とても有益な情報です。後で都市に行ってみたいです」

「そうだな、おまえさんがなんでここにいるかは分からんが、行ってみたいところに行ってみるといい。馬車なら出してやるよ。馬車というより荷台だが」

「本当ですか?でも、そこまでしてもらうと申し訳ないです」

「いや、オレがしたいことだからいいんだよ。あっそれだったらオレの仕事を少し手伝ってもらおうか。少し駄賃もやるからさ」

「ありがとうございます!ぜひ、お手伝いさせてください!」


 そこから俺は、ある程度生活に必要な知識を教えてもらい、ラルスさんの手伝いをすることになった。手伝いと言ってもこの場所に来る人たちに飲み物や、お菓子を出したり、話したりする程度で全く大変なものではなかった。

 その休憩時間にはザシャさんが営んでるという古本屋に行き、本を特別に読ませてもらい色々な知識を得た。例えば魔法学校への入学の手引きや都市での暮らし方なんてものもあった。どうやら魔法学校に入るには魔力検査と身分証が必要だそうだ。身分証は村のギルドっぽい場所で簡単に作れ、名前と顔写真などを言って登録するだけだったためすぐに作ることができた。

 その後はザシャさんの店でも手伝いをさせてもらいながら生活していた。最初は一晩などと言っていたが、いつの間にか1カ月ほど居てしまった。その間、ずっとラルスさんの店で寝泊まりしていたため、とても申し訳なかったが、ちゃんと生計を立てられるようになったら恩返ししたいと思う。




「1カ月間ありがとうございました!」

 ついに都市でも数日暮らせるくらいの路銀を稼ぎ、出発の準備が整った。おまけにこの世界の知識も大分手に入れた。本当にお手伝い程度でこれだけ弾んでくれたのはありがたい。

「よし、じゃあ出発するぞ!」

「また来いよ!都市でも頑張ってこい」

 ラルスさんが馬車(荷台)を出してくれ、ザシャさんが見送りに来てくれた。きっとまた帰ってくるだろうがしばらくのお別れだ。

「はい!行ってきます!よろしくお願いします」


 馬車で都市までは1時間くらいだった。道中は草原で、都市は広大な草原に囲まれているような形になっていた。もちろんその間には高い城壁がある。都市の周りを一周するのに一体何時間かかるか分からないくらい大きい。 


「本当に何から何までありがとうございました。この恩は必ず返します!」

「いや、いいんだよ。まっそれはどうでもいいさ!頑張んな。辛くなったらまた帰ってこい!いや、元気でも帰ってこい!寂しいからな」

「はい!ありがとうございます」

「じゃあな!」

「お元気で!」



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