パパラッチ
「止まれ!」
後ろから声がした。
僕は都内で現役アイドルの高校生だ。
現役アイドルというのは本当で、
実際に事務所に所属して、
テレビにもたまに出演している。
ただし秘密があった。
僕が現役アイドルなのを知っているのは、
飼っているグッピーと、
いつも語りかけるつぼだけだ。
「おい!止まれと言っているだろ!」
またパパラッチかと思い振り向くと、
そこには警官が立っていた。
「君、そんな服装と髪型でどこにいくんだ。こんな夜遅くに!」
警官は迫力のある剣幕で僕に捲し立てた。
そんな服装と髪型って、
いつもグッピーに見られている、
セーラー服とポニーテールじゃないか。
現役アイドルを前にして、
警官が、、、しまった。
ここは路上。
僕はついついコンビニエンスストアに、
夜に甘いものを食べるのっていいよねって思って、
アイドル風を吹かして現れてしまったんだ!
警官はまだ目の前にいた。
僕はこう言った。
「すみません、友達の家で仮装パーティーをしようって言われて、ついこんな格好で出て来てしまって、、!
すぐに帰ります!」
友達、、、あぁ、なんてこった。
あのいつも教室の隅で絵を描いているオタクに言われたってことにしよう。
そして直ぐに帰ろうとしたところ、
警官は言った。
「そうかそうか、ならいい!早いとこそこに行きなさい!」
僕はありがたいと思い、
「ありがとうございます!」
と言って、ふと歩き出した時に、
涙が溢れた。