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ウィークエンド・ワールドエンド

 その日は突然だった、ということもなかったらしい。


 世界情勢が徐々に危うくなって、バランスを保てなくなり、そうしてそのしわ寄せが一気に押し寄せ、周りより科学技術の発展した我が国は、『利益独占』の罪によって妬み嫉みの的となり、集中砲火にあった。

 しかし、不幸なことに。我が国には先ほど述べた通り発展した技術があった。


 窮地に立たされた我々は今まで手を出してこなかった、禁忌の領域に手を出した。

『葬式』――皮肉なことに、世界を葬ることとなった世界最高峰の兵器の名だ。


『葬式』の禁忌性は一般的(・・・)には絶大な力を持った、人間と同じ姿をした兵器であること。

 軍隊内部に伝わる噂では、『葬式』は機械の身体に人間の人格――魂をコピーして仕上げにいれているらしい、ということだ。


 そうでもないと話がつかないくらい『葬式』は神様(クソッタレ)からの贈り物こと人間の姿形と、良く似た兵器だったのだ。

 我が国の人々は自分と似たその兵器を戦争中は神様だと崇め、敵国は戦争を長引かせる悪魔と呼んだ。



 ……正直、俺は『葬式』のことは悪魔だと思っている。あいつらに関わって碌なことはなかった。ヒトガタをした悪魔、そう認めてしまえばすんなりと腑に落ちる。


 俺は『葬式』の使役者、マスターと呼ばれる秘密裏に集められた人員のうちの一人だった。


 マスターは各地の軍学校のエリートたちを集めていた。そうして稼働されたその組織は、はっきり言って地獄のようなありさまだった。

 自分は選ばれたエリートであるという自負からくるプライドの高さ、さぞ扱いにくい若造たちだっただろう。それでも軍の上司には絶対服従、逆らったりする者もいない訳ではなかったがそいつらは揃って前線で戦って処理された。まったくもって、戦争は人間を醜悪で残酷にさせる。


 若造たちのプライドの高さがどこにしわ寄せされるかといったら、自分より劣ったマスターか、戦争しか能のないマスターである自分に絶対服従である『葬式』だ。


 まだ自分の『葬式』を持たないマスター候補に酷い仕打ちをしたうえ、『葬式』に絶対命令権を持つマスターたちは、その兵器の人間のような姿に目をつけた。


 それによって引き起こされる事態はとてつもなく醜悪で、歪んだものだった。

 少年や青年の見た目をしたものの被害はまだ少なかったらしいが、少女や女性の姿をした『葬式』の被害はすさまじかった。

 逆らえないとわかっていながら、抵抗しようとして、無理だとわかって、日々意志薄弱になっていく女の形をした『葬式』や、挙句の果てには狂ってしまった『葬式』などもいた。



 まったくもって、哀れだと思った。

 弱者の形をしているだけで、その実、兵器である『葬式』を人間に見立てるなんて。

 きっと度重なる戦争で頭がイカれてしまったのだと思う。


 そうして、その『葬式』に同情を抱いてしまう俺も大変にどうかしている。




 これは俺、エヴァン・ロイスランドの回想であり、苦々しい黒歴史の話だ。

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