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ヴァンパイアハンター  作者: えむ@
3/4

3,出会い

走って、走って、走って。

月の光に反射して赤く輝く水菜の瞳は、不安そうに俺を見つめている。

夜が明ける頃には、もう既に別の町についていた。

隣町…流石にの女も追いかけては来ないだろう。今日は一日ここで過ごそう。

そう思って宿泊場所を探す。…その時、近くの店から悲鳴が聞こえてきた。

「きゃあああああああ!!!」

水菜が不安そうに俺の袖を掴む。

「お兄ちゃん…。」

「水菜…大丈夫。お兄ちゃん、ちょっと見てくるからここで待ってられるか?」

俺がそう言うと、水菜はこくりと頷いた。

いい子だな、と言いながら頭を撫でると、水菜は幸せそうにはにかんだ。か、かわいい…。

俺は悲鳴が聞こえた方に行く。そこはもすでに人だかりができていて、よくみえない。

どうしようかと悩んでいると、突然辺りが歓声に包まれた。

「あの、なにがあったんですか?」

とりあえず、近くの人に聞いてみる。するとその人は笑顔で答えてくれた。

「あぁ、ヴァンパイアが出たんだが、ヴァンパイアハンターが倒してくれたんだよ!しかも、彗銀様だ!!」

ヴァンパイア、ハンター…?

昨日女との会話がフラッシュバックする。

俺は、冷や汗を流しながら水菜の所へと走って向かう。

ヴァンパイアハンターがいるなら、早く逃げなければ。

にげなければ。……ニゲル?

「…どこに…?」

そう、呟くと同時に水菜の姿が目に入った。よかった、無事だ。傷一つない。

安心して、水菜の名前を呼びかける。…そうしようとした。

「!?水菜、逃げろ!!!」

背後から感じたとてつもない殺気。でも、これは俺には向いていない。これは…。

次の瞬間、銃の音が町中に響いた。そして、目の前で真っ赤な血が舞った。

「ゔぁっ…!?」

「水菜!!!」

目の前で舞った血は水菜のもので、水菜は悲痛な声をあげて倒れ込んだ。

「あーあ。外してしまったか。」

後ろから声がしてバッと振り返る。するとそこには白銀の長い髪をひとつに束ねてそれを靡かせて歩いてくる男がいた。

黒いシャツに白い拳銃。…ヴァンパイアハンターだ。

「ねぇ、君。どうしてヴァンパイアを庇うのかな?…いや、その前に。よく私に気がついたね。」

俺の目の前に来て、男はそう言う。俺はハッとして水菜を抱きしめた。

「水菜は俺の妹だ。それと、お前にくらい誰でも気がつく。殺気がだだ漏れなんだよ。」

「ふーん、そうか。」

男はそう言うと一瞬にして消えた。…水菜と共に。

そして、声は後ろから聞こえてきた。

ハッとして後ろを向くと、そこには水菜を片手で抑える男が立っていた。

「まぁ、正直どっちでもいいのだけれど。」

「お、兄ちゃ……」

うっすらと目を見開いた水菜が俺の名前を呼ぶ。

その瞬間、俺の中でナニカが切れた。

「水菜に傷一つつけてみろ。…殺す。」

「…やってみろ。」

男がそう言うと同時に、俺は男の元へと走り男の足を引っ掛ける。が、飛んでかわされてしまった。

だが俺はその体勢のまま足を振り上げる。が、またもギリギリで避けられてしまった。

水菜。水菜。ごめんな、守ってやれなくて。

どうして、こんなに優しい子がこんな目に合わないといけないんだろうな。

神様。本当に、神様がいるのなら、お願いです。

水菜は、本当に優しくて、かわいくて、俺の宝物なんです。

命に変えても、守りたい存在なんです。

…だから、そんな水菜を傷つけるやつは許さない。


「絶対に殺してやる。」



「お兄ちゃん…」

苦しんでいる。優しいお兄ちゃんが私のことを想って苦しんでいる。

止めないと。お兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなっちゃう。

暗い夜空がいつのまにか広がっている。さっきまで日が昇っていたのに、今は月の光が私を照らしている。

体が熱い。なのに何故か、体が軽い。

私は男の人の体を肘で殴る。

「おっと、危ない。」

そう言って私の腕を掴む男の人。私は跳んで男の人の体に巻き付く。

「おお、これはまずいな。」

巻き付けた体をそのまま思いっきり後ろに倒す。男の人が下になるように男の人の手をすり抜けて男の人の上に乗る。

今、私の背には月があるのだろう。

「…月は綺麗?」

「…あぁ、とっても綺麗だ。」

そんなことを言いながら、私は男の人の首を掴み、見つめ合う。

月明かりに照らされて、男の人がとても美しく私の目に映る。

「殺さないのか?」

男の人はそう言うと、美しく笑った。私は息を吸って言う。

「…殺さない。人は、殺しちゃダメだから。…だから、お兄ちゃん。私なら大丈夫だから、人は殺しちゃダメだよ。」

私は立ち上がってお兄ちゃんに笑いかける。するとお兄ちゃんは困ったように笑った。

「本当に。敵わないな、水菜には。」

私たちは笑い合う。…と、後ろから笑い声がした。

「ヴァンパイアと人が関わって生きていけるなんて。君たちは、周りとは少し違うのかもね。普通じゃない。」

そう言って、男の人は期待に満ちた目で私たちを見つめた。

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