本当に見知らぬ天井
■本当に見知らぬ天井
目が覚めたら、病院のベッドだった。
ワールドポーターズの警備員が、全裸で倒れている俺を見つけてくれて、
急遽救急車に載せてくれたようだった。
驚くべき事は、あの大火災が全くニュースになっておらず、まるで無かった事になっている事。
更に言えば嫁や子供の前で、
不動明王に化身したにも関わらず、
子供達も嫁すらも不動明王に変わった姿を覚えていないのだった。
だが、あの小瓶はしっかり手に握られており、意識を失った後でさえ吸い付くように離れなかったとの事。
「パパ〜。この小瓶何なの?」
「あなた。どうしたの?何故ワールドポーターズの屋上にいたの?」
「おー。気付いた。びっくりした。
死んだかと思った〜」
各々嫁も、長男も長女も好き勝手にベッドの周りで、ぺちゃくちゃ喋ってる。
あの小瓶が、ほのかに光る。
俺は又意識を失った。
◆◆◆
どのくらい時間が経過したのだろう。
白い天井。病室の天井だ。
大分寝入ったらしい。
目が覚めると、矢張り手には小瓶が握りしめられていた。
あのトレンチコートの男は?
謎の声の正体は?
そして敵の正体は?
『雄一聞こえるか?敵は横浜を攻撃したのでは無い。お前を狙っていたのだ。』
だ、誰だ!!
『私の名はハサン。かつて聖騎士と呼ばれ異界で邪神を倒した者だ。』
ハサン?
「何故俺が、この闘いに巻き込まれるんだ?!俺は静かに生活したいだけなんだ」
俺はハサンに訴える。
ハサンは問いには答えなかった。
『お前は選ばれたのだ。因果律に。
邪神を倒せ。邪神を倒せ……』
ハサンの声はゆっくりと次第に消えていった。
ハサン?
邪神・・。
何なんだよ、ファンタジー?
ゲーム?!
何が選ばれただ。
どうして俺なのだ?
普通こういう主人公はもっと若い奴なんじゃないのか?
コツコツ……。
ガチャ……。
真夜中の病室に入ってくる人影あり。
キラッ。
ん?何か光った。
暗闇。消灯している病室・・・
誰だ。俺は警戒し、身構える。
入って来た影はうっすら姿を見せる。
あ、白衣を着ている。
な、なんだ。看護士さんか。
その瞬間。
「雄一!危ない!」
青色の生き物が、電撃を放つ!
「ギャー!!」
看護士だと、思いきや白衣の中は黒い渦の人型がナイフを持っていたのだった。
黒い渦は泡のように消えていく……。
青色の生き物は、ウサギのような長い耳で魔法使いが持つような杖を手にしていた。
「アタイの名前はピーニ!危なかったなー!あのアヤカシはバンドイーター。
アタイにかかりゃ雑魚だよ、雑魚!
ハサン様から雄一の護衛とサポートを仰せ遣ったんだ!ヨロシクね!」
ピーニ?!
変なウサギだな。
「おいおい!アタイはウサギじゃない!妖精なんだ!」
え?意思が読めるのか?
口にして無いのに!
「兎に角アイツらは必死だよ。
常に身を護らないとね!」
ピーニ。変な奴だが頼りになりそうだ。
「は!雄一の家族が危ない!」
え?!
今、何て言った?
家族?ま、まさか。
俺は包帯を剥ぎ取り、真夜中の病院を出ようとした。
「雄一!瞬間移動だ!アタイに触れて!」
えい!!
アパートの前に瞬時に着く俺。
「ピーニ。どうしたらいいんだ?」
「このドアの前に結界を張るよ!」
ピーニは杖を振るうと、ドアに星印の結界を張った。
「雄一。明日までは大丈夫。
取り敢えず今日は寝よう。疲れた〜。」
ピーニの転移で病室に戻る。
また明日考えよう。
続く
まだ続くのかな