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新説!ハサンの実  作者: のんたろう
降魔天伏編
24/31

制多迦童子降臨

「的場屋にラーメン食べに行くか」

俺は妖魔アルケニーからの強襲から、回復した息子拓海を誘い、近所の中華屋『的場屋(まとばや)』へ出向くことにした。


的場屋は、味は普通だが、コスパが良い店として知られているチェーン店。


義父なんかは、「あんなの中華じゃない。不味くて食えない」なんて言うけど、俺は元自衛官だから、あの味が好きなのさ。


自衛官と的場屋が、なんの因果関係があるかって?


大有りのオオアリクイよ!

俺はあの地下鉄サリン事件の中心の部隊に在籍していた。


それは埼玉県の大宮にあったのだ。

大宮は青春。大宮には北銀座、南銀座ってのがあって、我々の銀座って言えばいつも大方「南銀(なんぎん)」の方だった。


ナンパして、打って飲んで騒いで時には買って。


大人の遊びを一通り教えてくれたのが南銀だった。


いつも財布の持ち合わせが少ない俺達の胃袋を助けてくれたのが町中華『来々軒』だった。


その来々軒から発祥したのが『的場屋』であるのだ。

懐かしい味に決まっている。


あの体に悪そうな味が好きなんだ。


店に着くと、奥のカウンター席を隣り通しで座る。


拓海も、もう中学2年。早いよな。

こないだまで赤ん坊だったのに。


ラーメンとチャーハンを勢い良く啜っている。


俺はレモンサワーをグイっとやる。


ゴクッゴクッゴクッ!


うめぇ〜!

そして、餃子をあっという間に平らげる。


モグッモグ!

これこれ!


親子同士の、いや男同士の休日の過ごし方。


「旨いか?」

「旨い!」


穏やかな時間が過ぎていく。


その時!

「ヘックション!!!」

後ろの中年男性がクシャミをしてる。


冷房が強いのか?


「ヘックション!!!」

又だ。うるさいな。


新型感染症は5類に下がってるので、

マスクは装着義務は無い。


しかも食事してる最中だから飛沫も飛ぶ飛ぶ。


ん?!

マスタードの臭い。

ま、まさか。


その時、居るはずの無い隣の無人の壁から声が聞こえた。


「アヤカシよ!」

霊体のピーニがこちらに声をかけてくる。


ピキーーーン!!!!!


色味が失われ、時間が止まる。


来る!


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


飛沫の欠片から、妖魔アルケニーが具現化してくる。


みるみる巨大化して、ついに原寸大の大きさになると、クシャミをした白髪混じりの角刈りのオッサンを奥側で座っていたインド人家族に向けて乱暴に放り投げる!


ガチャーーーン!!



くしゃみのオジサンは、餃子とレバニラ、豚骨ラーメン、チャーハン、ビールやコーラ等が並べられてるテーブルにダイブする。


時が止まっている為、インド人の家族達は美味しそうに食べている場面で止まったまま。


皿は割れてテーブルは割れて、オジサンがテーブルに叩きつけられてるコントラストはちょっと異様だが少し面白かった。


束の間!

「聖騎士!!!」

と叫ぶアルケニーは俺を頭から掴んでオジサンより遥かに強い力で俺を入り口に向かって無造作に投げる!


ガシャーーン!

窓ガラスは粉々に割れて、

俺は店の外の道路まで吹き飛ばされた。


「ぐわっ!」


瞬間にヤバい!っと思った。

拓海が!


店にいる時間が止まっている拓海が危ない!


アルケニーの爪が無防備の拓海に襲いかかる。


「させないわ!アンチシールド!!」

「グワッ!!」

ピーニは人間体に姿を変えて魔法で奴の攻撃を防いだ。


その魔法障壁の反動でアルケニーは吹っ飛ぶ。 


俺は咄嗟に黄金の実と青い実を食べる

今にして思えば、どうして金の実と青い実を食べたのだろう。


俺の身体は不動明王となったが、

それで終わらなかった。


なんと、拓海が動かない時間で動いたのだ。


「パパ。僕は目覚めたよ。僕もハサンの系譜。そして内在神は制多迦童子。パパをサポートするよ。」

みるみる内に体躯は盛り上がり、青年のように神化する。


まじか!子供達は巻き込みたくなかった。

しかし、アルケニーを先ずは倒そう。


「やるぞ!拓海!」

「はい!パパ!」


次回へ続く

なんと、息子は制多迦童子として

化身した。


どうなる?!今後。

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