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反則級の「天才になれるおふだ」に頼った少女の末路

作者: 坂乃奏音
掲載日:2022/12/31

 茶髪の少女は沈黙した。


上手(かみて)詩歌(しか)、テストどうだった?」

「1点」


 少女――詩歌(しか)は、淡々と答えた。テストの点を聞いた男子は、詩歌をバカにするように笑っている。詩歌だって毎日、問題集に向き合っているのに……とイライラしたけれど、無視した。


 ――男子の机から消しゴムが落ちる。

 瞬間、詩歌は素早く動いて消しゴムを掴む。それを男子に渡すと、男子はバツが悪そうに頭をかいた。


 ……詩歌は頭が良くなかったけれど、とてつもなく優しかったのだ。


 ☆


 その日、詩歌は「近くの神社に売っているおふだを8時17分に買い、それを部屋にまつって天才になる」という夢を見た。


 ――テストで、当たり前に満点が取れるようになりたい。

 その強い願いが、詩歌を突き動かした。


 詩歌は夢の通り、買ったおふだを部屋にまつった。


 ☆


 その日から、詩歌は授業の内容も完璧に理解できるようになったし、テストもスラスラ解けるようになった。


 持ち前の優しさで、詩歌は先生からの信頼も勝ち得ていく。そんなある日、詩歌をバカにしていた男子の会話を詩歌は耳にした。


「ウマシカ、急に頭良くなったよな」

「な。前は名前通りバカだったのに」


 ……天才になった詩歌は気がつく。気がついてしまう。

 ウマシカが、上手(ウマ)詩歌(シカ)――上手(かみて)詩歌(しか)の、あだ名であることに。


 男子たちが詩歌を会話のネタにしていたと悟った詩歌は、怒り……やり返すことを決意した。


 ――やり返しは何も生まない、とは天才になった詩歌は理解していた。だけど、止められなかった。


 ☆


 テストが返された。詩歌は、満点のテストを男子に見せつける。


「テストどうだった? 私は100点だったけど」


 男子の息を呑む音が聞こえた。詩歌は目で男子を睨みつつ微笑む。


「88点です……」

「12点も下なんだ。――なら、これから金輪際(こんりんざい)、私をウマシカとは呼ばないでね?」


 男子は目を見開く。その姿を眺めて、詩歌は少しスカッとした。


 ☆


 その日家に帰ると、おふだが割れていた。


「なんで⁉︎」


 混乱しながら問題集を開いてみるけど、解けない。そこでようやく、自分が天才ではなくなっていることに詩歌は気がついた。


 詩歌は数日考え「おふだが無いと自分は天才になれない。だから努力しても意味はない」と結論づけた。


 詩歌は昔以上に何もしなくなり……何もできなくなって、そのまま人生を終えた。


 またバカにされるようになった時、先生に心配された時――もし再び努力を始めたなら、詩歌は違う結末を迎えていただろう。

 実は天才を経験したことで、昔と比べれば頭が良くなっていたんですよね。だから再び努力をすれば、学校のテストぐらいなら満点だって狙えたでしょうに……。


 読了ありがとうございます。少しでも面白いと思ってくださった方は、感想・いいね・ブクマ・☆評価などで教えてくださると作者が喜びます。


 ちなみにですが、短いほのぼの物語も投稿しているので、良ければそちらもどうぞ。広告下のリンクから読めるようにしておきますね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい長さの文章で、さくさく読める。 それなのに、主人公詩歌 激動の物語です。 結末は悲しいけれど、読後は満足感たっぷり……! [一言] 何事も知りすぎるというのは良くないということで…
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