反則級の「天才になれるおふだ」に頼った少女の末路
茶髪の少女は沈黙した。
「上手詩歌、テストどうだった?」
「1点」
少女――詩歌は、淡々と答えた。テストの点を聞いた男子は、詩歌をバカにするように笑っている。詩歌だって毎日、問題集に向き合っているのに……とイライラしたけれど、無視した。
――男子の机から消しゴムが落ちる。
瞬間、詩歌は素早く動いて消しゴムを掴む。それを男子に渡すと、男子はバツが悪そうに頭をかいた。
……詩歌は頭が良くなかったけれど、とてつもなく優しかったのだ。
☆
その日、詩歌は「近くの神社に売っているおふだを8時17分に買い、それを部屋にまつって天才になる」という夢を見た。
――テストで、当たり前に満点が取れるようになりたい。
その強い願いが、詩歌を突き動かした。
詩歌は夢の通り、買ったおふだを部屋にまつった。
☆
その日から、詩歌は授業の内容も完璧に理解できるようになったし、テストもスラスラ解けるようになった。
持ち前の優しさで、詩歌は先生からの信頼も勝ち得ていく。そんなある日、詩歌をバカにしていた男子の会話を詩歌は耳にした。
「ウマシカ、急に頭良くなったよな」
「な。前は名前通りバカだったのに」
……天才になった詩歌は気がつく。気がついてしまう。
ウマシカが、上手い詩歌――上手詩歌の、あだ名であることに。
男子たちが詩歌を会話のネタにしていたと悟った詩歌は、怒り……やり返すことを決意した。
――やり返しは何も生まない、とは天才になった詩歌は理解していた。だけど、止められなかった。
☆
テストが返された。詩歌は、満点のテストを男子に見せつける。
「テストどうだった? 私は100点だったけど」
男子の息を呑む音が聞こえた。詩歌は目で男子を睨みつつ微笑む。
「88点です……」
「12点も下なんだ。――なら、これから金輪際、私をウマシカとは呼ばないでね?」
男子は目を見開く。その姿を眺めて、詩歌は少しスカッとした。
☆
その日家に帰ると、おふだが割れていた。
「なんで⁉︎」
混乱しながら問題集を開いてみるけど、解けない。そこでようやく、自分が天才ではなくなっていることに詩歌は気がついた。
詩歌は数日考え「おふだが無いと自分は天才になれない。だから努力しても意味はない」と結論づけた。
詩歌は昔以上に何もしなくなり……何もできなくなって、そのまま人生を終えた。
またバカにされるようになった時、先生に心配された時――もし再び努力を始めたなら、詩歌は違う結末を迎えていただろう。
実は天才を経験したことで、昔と比べれば頭が良くなっていたんですよね。だから再び努力をすれば、学校のテストぐらいなら満点だって狙えたでしょうに……。
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