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異世界出身の魔導士は、夢がない  作者: 皐月 遊
一章 魔導士認定試験編
7/18

7話 「魔獣の森、大移動!」

魔獣の森でサバイバル生活2日目の昼。


虎太郎達は周りを警戒しながら中心に向かって進んでいた。


隊列は、前がゴルド、真ん中がシエル、最後尾が虎太郎だ。


「もう昼だ。 休憩ついでに昼食にするぞ」


ゴルドの提案に、虎太郎とシエルは目を輝かせた。


近くの水場に移動し、休憩する準備をする。


「昼にあまり体力を使いたくない。 だから狩りはせず、山菜を採るぞ」


「了解だ」


「シエルは昨日と同様、火起こしを頼む。 …問題はてめぇだ虎太郎」


「え、俺?」


「火起こし経験もない、サバイバル経験もない、戦闘技術もない。 唯一誇れるのは体力馬鹿な事くらいだ」


「なっ…! なんも言い返せないのが悔しい…」


「だから、てめぇはその体力を使って俺と一緒に山菜採りだ。 やり方はシエルに聞け、俺は先に行く」


そう言って、ゴルドは茂みの中に入っていった。


「良い? あんたはこの世界の山菜の知識が無いんだから、絶対に素手で触らない事!

毒があるかもしれないからね。 山菜を採る時は絶対に近くにある葉っぱで包んで採るのよ?

そして、こっちの大きな葉っぱの上に乗せて運ぶ。 分かった?」


「了解だ!任せろ大量に採ってきてやる」


「んー心配だわ…」


そう言って、虎太郎は山菜を乗せる用の大きな葉っぱを持ち、茂みの中に入っていった。


「山菜山菜…おっ、きのこあるじゃん。 しかも美味そうな奴だ。 収穫収穫。 お!こっちはなんか美味そうな木の実! 収穫収穫! 」


そんな調子で、虎太郎は目につく山菜を採りまくった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「全部毒だ馬鹿」


「えっ」


ウキウキ満面の笑顔で大量の山菜を持ってきた虎太郎に向けられたのは、ゴルドによる冷たい視線だった。


「少量の毒や猛毒、更には即死の毒まで大量に採ってきやがって。

お前は何人毒殺するつもりなんだ」


「マジ…? これとか超美味そうなのに…」


虎太郎は、採ってきた物の中で1番色鮮やかなキノコを指差す。


形も綺麗で、虫食いの跡がない。


「美味そうなのに形が綺麗に残ってるのがその証拠だ。

こんな危険物、どんな動物でも近づかねぇよ」


「それはベノ茸。 一口齧るだけで即死の毒キノコよ…

素手で触ると熱が出たりもするわ。 虎太郎…素手で触れてないよね…?」


シエルも若干引き気味に言う。

虎太郎は激しく頷く。


「まぁ、そんな気はしてたから俺の方は大量に採ってきた」


ゴルドは、全部食べれる山菜を採ってきていた。

キノコに木の実、種類は様々だ。


キノコや木の実を木の枝に刺し、そのまま火で焼いてから食べる。


「美味いなぁ」


虎太郎にとっては初めて食べる食材だらけなのだが、この世界に来てから食べたもの全てが向こうの世界のものよりも美味しいのだ。


だから密かに虎太郎にとって食事は一つの楽しみとなっている。


「食べ終えて少し休憩したら、すぐに出発だ。

あと、もうこの辺りからは昨日よりも危険な地帯だと思え」


ゴルドの言葉に、虎太郎とシエルは頷く。


昨日のクマよりも強い動物が沢山いると言うのだ。

常に警戒しなければいけない。


現在の隊列は、前がゴルド、真ん中が虎太郎、最後尾がシエルだ。


「あーお風呂入りたいー…」


周りを警戒しながら歩いていると、シエルが声を上げた。


「髪のお手入れも出来ないし…こんなのがまだ続くなんて最悪よ…」


「昨日川で水浴びしとけば良かったのに」


虎太郎が言うと、シエルがムッとした顔をした。


「男が2人いる状況で近くで水浴びなんかする訳ないでしょ! 絶対に覗かれるわ!」


「いや覗かねぇよ。 なぁゴルド」


「興味ねぇ」


「興味ないですって!? この超絶美少女スタイル抜群のシエル様の身体に興味がない!?

失礼ね! 少しは興味持ちなさいよ2人とも! 鼻の下伸ばしなさいよ!」


「どっちなんだよ…」


「めんどくせぇ」


そんな会話をしていると、右側からガサゴソ…という音が聞こえた。


その音が聞こえた瞬間、皆姿勢を低くし、臨戦態勢を取る。


「警戒しろよお前ら」


「「分かってる」」


ゴルドの言葉に、2人が反応する。


そして、音の正体は姿を現した。


「っ!」


「うおっ…!?」


「きゃっ…!」


一瞬だった。

姿が見えたと思った瞬間、その動物は凄まじいスピードでゴルドとシエルの間を通過した。


そして、真ん中にいた虎太郎は…


「おい…!」


「虎太郎!! 大丈夫…!?」


動物の突進を受け、木に激突していた。


「痛ってえええっ!!!!」


虎太郎達を襲ったのは、イノシシ型の魔獣だ。

鋭い牙が2本生えており、そのうちの1本が虎太郎の脇腹に刺さってしまっていた。


腹からは血が垂れ、激しい痛みが虎太郎を襲う。


「くそがっ…!」


「いやっ…そんなっ…!」


ゴルドは悔しそうに顔を歪めた後に走り出し、シエルは口を押さえ涙目になる。


「放しやがれ!!」


ゴルドはイノシシの脇腹に回し蹴りを食らわせるが、猪は数センチその場から動いただけで、状況は変わらなかった。


「ぐっ…!あああっ…!!」


その間も、牙は虎太郎の腹に刺さり続け、痛みが続く。


「シエル! オルの実はないか!?」


「き…昨日全部使い切っちゃって…!」


「くそっ…! 」


ゴルドとシエルが慌てる。


そんな2人に、虎太郎はなんとか笑顔を作る。


「俺は…大丈夫だ…! 後から追いつくから…先に行…」


「カッコつけてんじゃねぇ! 」


言い終わる前にゴルドが割り込み、言葉を発しながらイノシシに蹴りを入れる。

シエルも石を投げつけてはいるが、やはりびくともしない。


そして、イノシシはその場で姿勢を低くした。


まるで今にも走り出しそうな雰囲気に、ゴルドとシエルは目を見開いた。


「くっ…そが…!!」


「いや…!だめ…!」


2人の静止を無視して、イノシシは走り出した。

虎太郎がぶつかっていた木を薙ぎ倒し、凄まじいスピードで走り出す。


そしてイノシシは止まり、虎太郎は腹から血を出したまま地面に倒れる。


イノシシは、ゴルド達の方に体の向きを変える。

どうやら先程の蹴りや石ころ攻撃に怒っているらしい。


「ねぇ虎太郎…! 生きてるわよね…!?」


地面に倒れている虎太郎に向かって、シエルが涙目で声をかける。

そんなシエル達に、虎太郎は倒れたまま手を挙げる。


どうやらまだ息はあるらしい。


「くそイノシシが…! 来い! シエルは解体用の尖った石を持ってろ! 隙が出来たら突き刺せ!」


「分かったわ!」


ゴルドはイノシシを挑発する。


イノシシはゴルドに突進する為に、その場で姿勢を低くする。


(くそ…! 腹が痛ぇ…! また俺は何も出来ないのか…!

何か…何かないか…!)


虎太郎は、倒れたまま考える。

イノシシは、明らかに昨日のクマより強い。

更に、虎太郎達は昨日のように勝つ為の準備をしていない。


(あ…あれは…!!)


そんな中、虎太郎はある物を見つけた。


(あれを使えば…1発逆転できる…!)


虎太郎は、痛む腹に我慢し、這いつくばりながら前へ進んだ。

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