第2話 誰か来ましたっ!
翌日、私は新たな作戦に出た。
身体を大きく広げてうつ伏せになり、石のように眠る。
まぁ、実際に石なんだけど……。
もうこうなったらワンちゃんたちの方から寄って来るのを待つしかない。
こうやって寝そべっていればもしかしたら身体を休めに私の上にでも乗ってくれるかもしれない。
ワンチャンあるでしょ! ワンちゃんだけに!
ワンちゃんじゃなくて猫ちゃんでもいいよ! なんかこの辺りでは立派なたてがみがある猫ちゃんしか見たことないけど!
どんな動物も私が動いている姿を見ると逃げ出してしまう。
私、悪いゴーレムじゃないよ、ぷるぷる。
こんなゴツゴツの石の身体になるくらいなら私もスライムとかに生まれたかったなぁ、今から転生とか出来ないかしら?
そんなことを考えていたら石のフリ作戦(迫真の演技)一日目の夜を迎えてしまった。
一日目の収穫は無し……まぁそんなにすぐに上手くいくはずがないよね。
私はなおも根気強く迫真の演技を続ける。
(私は石……いし……ストーン……意思の無い石ですよ~。あれ、いしなのにいしが無いとはこれいかに)
私がゲシュタルトを崩壊させていると、思いもよらずとんでもない大物が釣れてしまった。
春風が草原の草を撫でる音とは違う、足音のような音が聞こえてきた。
私の身体に近づいてくるその足音に私はゆっくりと視線だけを向ける。
すると、驚くべきことに満月の月明かりに照らされた『人間の影』が私の視界に入った。
(ぼ、冒険者だ……! やった、私の身体の近くで休んでくれるかも……!)
思いがけない『人間』の接近に私の心は高鳴る。
だって冒険者たちも私を見るやいなや「バケモンだ~!」なんて叫びながらみな逃げていってしまうから。
お願いします! 私の身体に腰かけてなんて贅沢なことは言いませんから、私の近くで休息を取ってくれますように!
私の祈りが通じたのか、その人はゆっくりと私に近づいてきた。
ようやくハッキリと見えたその姿は――とても美しい大人の女性だった。