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第1話 ダメでしたっ!

再投稿です。

 

(ゆっくり……ゆっくりと……)


 私はそろりそろりと忍び足で草原で気持ちよさそうに眠っている狼に近づく。


(あともう少し……あともう少しであのモフモフに触れる……!)


 あのワンちゃん(狼)が私の姿を見て逃げ出してしまわないように、できるだけ音を出さないように近づいていく。

 足元にも細心の注意を払いながら、小枝などを踏んで音を出してしまわないように――ってギャー!!


 心の中で叫び声を上げながら私は足元のやけにグロテスクな見た目の昆虫に驚いて尻餅をついてしまった。

 ゴーレムである私の巨体が大きな音を立てて地面に落下し、地面を揺らした。


「――!? キャイン! キャイン!」


 どうしても犬としか思えないような声を発しながら目的の狼は逃げて行く。


 あぁ、お願い行かないでっ!

 私がゆっくり、ゆ~っくりとここまで近づくのに一体何時間かかったと思ってるの!?

 お願い、そのモフモフに触らせて! さきっぽ、さきっぽだけでいいから!


「ウ、グガガー!!」


 私の必至の呼びかけも言葉にならずに醜い無機質な音を発するだけだった。


 石で出来た私の恐ろしい身体――ゴーレムの身体では声を出す事ができない。

 悲しくて泣きだしたい気持ちだけど、私の気持ちとは裏腹に涙なんて物も流れない。

 そもそも触覚もないので、例え今のワンちゃんに触れる事が出来ていたとしてもモフモフした感触なんてものも感じる事が出来ないだろう。


 じゃあなんであんなにワンちゃんに触りたがっていたかって?

 それはもうこのかた何年も私は独りで孤独に生きているからよ!

 人肌なんてもう私には無理だけど、せめて犬肌、というか、何か生き物に触りたかった。

 だが、昆虫テメーはダメだ。私の頑張りを無駄にしてくれやがって……うぅ……。


 はぁ~、というため息を心の中で吐きつつ私はゴーレムの巨体で体育座りをして、石を口元へと運ぶ。

 うん、味がない。当たり前だ、舌が無ければ味覚もない。


 石をゴリゴリと咀嚼しながら憎たらしいほどに青く透き通った空を見上げる。




 私、何で生きてるんだろう……



「続きが気になるっ!」と思っていただけましたら。

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