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【4】めーちゃん、期末テストを終えて

『「レディ・レミリア、どうか私の隣で、このフォルトハート王国を護っていただけいただけないでしょうか?そして貴女自身を護る栄誉を、この私に与えていいただけますか?」▶』


やっと、やっとここまで進めることができた。


『▶「喜んで」

  「申し訳ございません」』


 ここは当然「喜んで」を選ぶべきだろう。そのためにここまでストーリーを進めてきたのだから。

「うっひょっひょっひょ」

 先の展開を読み進めながら、喜びとちょっとした照れも相まって、ベッドの上でゴロゴロと転がる。

 いや、のたうち回る。

 その後に続く、アンドリュー王子の甘い甘い口説き文句が、まるで自分へ語りかけているようで、何やらこっ恥ずかしい。

 そうは言っても、これを聞くために頑張ってルートを探したのだ、当然聞かない選択肢などありえない。

 キスシーンに至っては、足をジタバタと動かして身悶(みもだ)える。


ドン!

(うるさ)い、気持ち悪い!」


 せっかく盛り上がっているこの気持ちを(さえぎ)るように、隣の部屋越しから、壁を蹴る音とクレームが飛んできた。

 姉のことを気持ち悪いと言うなんて、なんて弟だ、可愛くない。

 そりゃぁちょっとは煩かったかもしれないけど、一学期の期末試験も終わってやっとのんびりできるんだ。止められていたゲームを堪能して何が悪い。

(あーあ、レミリアは良いよねぇ、こんなカッコいい彼氏、私もほしーい!)

そうは言っても、現実世界でこんな人がいるはずもなく。

 同世代の男子は、下手をすればまだ自分よりも背が低くく、性格にしたって子どもっぽいのだ。

 ゲーム内のアンドリュー王子は十八歳。

 あと四年もしたら、クラスの男子が果たしてこんなふうになるのだろうか。

(いやー、ないだろうなぁ)

 レミリアの歳なら十六歳。自分が二年後にこんなふうになれるだろうか。 

(いやー、それも無理だなぁ)

 白金の髪、新緑を映したような瞳、抜けるような白い肌――。

 そもそも典型的日本人である自分には、どれもこれも持ち合わせていない。

 ヘアウイッグとカラコンとメイクでなんとか……と、想像してみたものの、どうにも自分に当てはめられない。

 そもそも、あの正直でみんなに愛される優しい性格も、自分には無いものだ。

(いっそ、レミリアが妹だったら良いのに。あの弟と交換して、そしたらめっちゃくちゃ可愛がるのに!)

 初めてアンドリュー王子ルートを攻略し、エンディングを一通り見終えた私は、机の上に置いてあったゲームの説明書を引き寄せて手に取ると、パラパラとめくる。

 『護りの聖女と悠久の恋』と名付けられたゲーム――ジャンルは『乙女ゲーム』。

 私にとっては初ジャンルであり、只今ドハマリしているゲームだ。

 序盤に表示されるアンドリューとレミリアの出会いシーンは、説明書の冒頭にも掲載されている。雑誌の広告にも使われていて、親友でクラスメイトのみーちゃんと「これは買いだ!」なんて騒いだものだ。

 その他数枚のイメージイラストと登場人物の立ち絵紹介。

 ヒロインを一番手に、その後アンドリュー王子以下、攻略対象の男子四人が続く。

 聖女でありヒロインの『レミリア』、攻略対象の第一王子『アンドリュー』、第二王子『ベイジル』、王弟殿下嫡男『オーガスト』、王宮図書館司書『ロイ』、聖女付き執事『キース』。

 と、その後に続くページに、黒に近い焦げ茶の髪色をした少女の立ち絵で、ピタリと手が止まった。

『ミリィディアナ・バーバナ・パーロウ侯爵令嬢。ヒロインと同じ十四歳(ゲーム開始時)。王族との繋がりも深く、フォルトハート国でも有力な貴族の娘。アンドリュー王子の花嫁候補として幼少より育てられる。ブルネットの髪、アイスブルーの瞳が特徴。』

 説明書では、この程度の紹介しか掲載されていないが、攻略雑誌の方では、

『高慢な態度でヒロインをいじめる、典型的な悪役令嬢。アンドリュールートとベイジルルートに妨害役として出現。』

と書かれていた。

 ベイジルとはアンドリューの弟。つまり、第二王子の立ち位置だ。

 アンドリュールートだけではなく他の王子様ルートにまで参加するとは、さすが権力を笠に着る、性格の悪さがウリの侯爵令嬢なだけはある。

(スチルに出てきた顔はめちゃくちゃ見下したような顔しか無かったし、よくもまああれだけ権力振りかざした意地悪ができるもんだよ)

 そのかわり、ラストに出てきた断罪シーンは、誰からも見下され床に這いつくばるその姿に、大変スッキリ爽快、愉快な気持ちになったし、ザマーミロ!と叫びたかった。

 その時は、一応叫びを抑えてベッドをバンバンと叩きながら喜びの舞を踊った。

 結局、隣の部屋からは、

「静かにしろよ!」

と、クレームが来てさ。

 やっぱり、ウチの弟は可愛くない。

 あんな可愛げのない弟よりも、天使のような愛らしい妹。

 もしも彼女が妹だったなら、恋愛だってなんだっていくらでも応援してあげるのに。

「そうよ!こんな悪役令嬢、私がバッタバッタとなぎ倒してやるんだから!」

ベッドの上で起き上がり、右手を握り込み、天へと突き上げ叫ぶ。


 ドンドン!

「煩いって言ってるだろ!」


 弟は本当に可愛くない。


お待ちいただいていた方がいらっしゃいましたら、大変お待たせ致しました。

ありがとうございます。

なんとか、『来週』の範囲内でUPすることができました。

更新が止まっていた間にも、ブックマーク数がちょっとずつ増えていて、励みになりました。

お盆休みに突入しましたので、明日から一週間は、毎日とはいかずとも続けてUP出来るようにしたいと思っています。

お付き合いしていただければ幸いです。

皆様、暑さに気をつけてお過ごしくださいね。

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