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最強チート持ちの最弱英雄と異世界叙事詩  作者: 憂人
チュートリアル
1/2

#1 異世界へようこそ

拙い文章ですが、よろしくお願いします。


 「陽翔、起きろよ。いつまで寝てんだ」


 その声でオレ、〈鈴木(すずき) 陽翔(はると)〉は目を覚ました。どうやら寝てしまっていたらしい。机に突っ伏した身体を起こして伸びをすると、呼び掛けてくれた友人に状況を質問する。


 「なぁ裕貴、今何時間目?」

 「馬鹿野郎。もうとっくに7時間目もホームルームも終わってる。寝ぼけてないでさっさと帰るぞ」


 そうだ、思い出した。昼飯で腹は適度に満たされ、午後の授業を2つこなした後の疲れきった7時間目にぽかぽかした日差しに晒されていたものだからついついウトウトしてしまって、うっかり眠りこけてしまったのだ。

 オレはいつも思う。こんなぽかぽか陽気が悪いのだ。奴の魔力にかなう者はいない。これでまたやる事が増えてしまった。寝ていた授業の分のノートを後で写しておかなければ...

 そんな事をボーッと考えていると周りにいつものメンバーが集まってきた。


 「あっ、陽翔君やっと起きたの?」

 「すっごくぐっすり寝てたよね」

 「お前らうるせーな。眠かったんだから仕方ないだろ」


 女子2人のからかいに対応しながら鞄に教科書を詰め込んでいく。1人は小さい頃からの仲だし、もう1人はオレに好意を寄せてくれているみたいだから苛立ちは感じない。

 しかし今日ばかりは少しイタズラをしてやりたくなった。オレは鞄の奥底に眠る防犯ブザーをバッと取り出し、ピンを抜いてやった。

 教室中に耳をつんざく警告音が激しく鳴り響く。3人が耳を塞いで歯を食いしばっている顔を見るとオレはもう一度ピンをブザーに差し込んだ。


 「何だよ、急に!」

 「そうだよ!あ〜、びっくりした」

 「て言うか、まだそれ持ってたの?」

 「出すの忘れててさ、ずっと入れっぱなしだったんだよ。それにしてもいい気味だぜ。楽しんでくれたみたいで何よりだ」

 「「「楽しんでない!!」」」


 3つの拳を食らう頃には机の中の荷物を全て詰め終わっていた。この後はいつも通り。両親は共働きで遅いので家に帰ってもいない。だから適当に夕飯を作り、あとはゲームをするだけ。そして深夜2時になると流石に眠くなるので寝る。

 こんなグダグダな生活だが、これでも高校2年生だ。この生活習慣の事を思うと自分の将来が心配になるが、周りはそうは思っていないらしい。

 周囲の人間から言わせればオレはイケメンだそうだ。しかし、自分でそう思った事は1度もない。だが、運動神経には自信がある。新体力テストはいつもA判定だ。学業にも少しだけ誇れる部分はある。顔がいい、運動神経がいい、頭が賢い。そんな小学生のモテる要因の三拍子が揃っていることもあって将来が周りには心配されないのだろうか。全く嬉しくもない。むしろ迷惑だ。

 日々クラスメイトや教師から浴びされる賞賛の声にはもううんざりしている。もう、オレの事なんて放っておいてくれ。

 そんな中、この裕貴と夏奈、芽衣はオレを特別扱いしない。3人は気が許せる仲間だ。


 「おい、何ニヤニヤしてんだ?気持ち悪いぞ」

 「別にニヤニヤなんてしてねーし。ほら、とっとと帰ろーぜ」


 あぁ、イリスさん。オレはこの時、ずっとこの生活が続くと思ってました。でも、貴方のお陰で全ては変わった。激変したんです。折角です、最後まで聞いて行ってくださいよ。


 オレと夏奈は学校から電車で通っているんだが、裕貴と芽衣は自転車で通っている。だから駅に着くと別れる事になる。だが、オレ達の話題が尽きる事は無い。普段は大体1時間くらい駅前で喋ってから帰るんだが、何故か今日ばかりは駅に着くと同時に話に一区切りがつき、そのまま解散の流れになった。


 「じゃ裕貴、芽衣、またな」

 「あぁ、また明日」

 「まったねー!」


 そこで2人と別れたオレ達は駅の改札をくぐり、帰りの電車に乗るために列に並んだ。その日はやけにホームに人が多かった。まぁ、バリバリの都会っ子だからそんなのには慣れているが、どうしても首都から少し離れた場所だったり、郊外だったらもっと楽なんだろうなと思わずにはいられない。都会の満員電車は本当にキツい。出来ればオレは乗りたくないね。

 次の電車を見送ってその次に乗ろうと夏奈に提案しようとした時、先に彼女に口を開かれオレは言い出す機会を失ってしまった。


 「ねぇ、私喉乾いちゃった。そこの自動販売機で飲み物買ってくるね。陽翔は何かいる?」

 「オレはいいかな。て言うか早く買ってこないと電車が来ちゃうぜ」


 その時、何故かオレは夏奈と一緒に自動販売機に行かなかった。どうしてか分からないが、ついて行く気が全く起きなかったのだ。急ぎ足で店に向かっていく彼女をオレは見届けることしかしなかった。満員電車に乗るのが嫌だったなら一緒に行き、列から抜けるべきだった。

 幼なじみから鞄の横ポケットから取り出したスマホの画面に目を移すと、1番にSNSのニュースを開く。ここには日常的に面白いネタが載っている。よくもまぁ、こんなに毎日毎日事件や事故、新発見や会議や発表があるね。ここより刺激に満ち溢れている世界があるなら見てみたいもんだ。

 駅のアナウンスがこちら側のホームに電車が来た事を伝える。遠くからやって来る音がだんだん大きくなる。

 おい、アイツ何やってんだ。もう電車、来ちまったぞ。そうやってしびれを切らしたオレはスマホの画面から視線を外し、後ろを向こうとした瞬間、事は起こった。

 背中に硬い何かが当たり、それは物凄い力でオレを押し飛ばした。不意の事だったから踏ん張ることも出来ず、そのまま勢いに流される。背中にほんのりと残る感覚から分かる。あれは手だ。押したのは手だった。てことは、突き飛ばされた?相手は殺す気だったのか...

 オレの身体は慣性に従って駅のホームを飛び出し、今や線路の上空にいる。全てがスローモーションになったようにゆっくりと動いている。


 (この場面ってホントにゆっくりになるのな)


 止まりかけとはいえ、時速80kmは出ているであろう鉄の塊がすぐ左に来ているというのにそんな呑気な事しか考えられなかった。

 その先は何だけっけな。あっ、そうそう、諦めたのかオレは目を瞑ったんだ。0.5秒後には死ぬんだからな。案外あっさりしたもんだったよ。

 あれ?突き飛ばされたのっていつだっけ?何でまだ、回想続けられてるんだ?

 おかしいな、身体もグルグル回り出した。

 もしかしてもう轢かれたのか?なら意外と電車に轢かれるのって痛くないんだな。痛みも感じないほどの即死って事か。

 何だか気分も悪くなってきた。

 明日のニュースにでもオレは載るんだろうか。先程、小馬鹿にしていた情報の一部になってしまうのか。アイツらは悲しむだろうな。

 何だか周りが静かになった気がする。

 ここが天国なら死後の世界は本当にあったんだな。大発見だ。でも、その発見の喜びを分かち合う人はいないんだよな...悲しいものだ。頬にチクチク当たるのは草だろうか。オレは原っぱに寝そべっているのか?鳥のさえずりが聴こえる。想像通りの楽園が広がっている気がするぜ。

 しかし、そんな平和な静寂も女性の叫び声で破られる。

 その声でオレ、〈スズキ ハルト〉は目を覚ました。


 「少年、起きろ。いつまで寝ているんだ」


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