狼人の少女2
ご閲覧ありがとうございます。
今回も、20分ほどお付き合いいただけると幸いです。
寒いと言いながら、また入れてしまう桜野のメタ系発言。
後のために狼人の少女には、一旦奴隷という身分になっておいてもらいます。
▽は時間が経過する時に使用します。会話を重視するので多用すると思います。
洗い終わって、後片付けが終了し、ベットに座る狼人の少女と向かい合っている。俺はあった椅子に腰かける。
「それでー、名前なんだけど」
「はい」
返事と共に尻尾がピンと張る。
なんか、礼儀の正しさも感じるな。本当に貧民だったのかな?
「何て、呼ばれてたとかない?」
「ありません」
今度は尻尾がしおしおとする。
そういう世界なんだろうなぁ。でも、元貴族とかなら、名前がないとかあるのかな?
「じゃぁ何て呼ばれたい?」
「特には・・・」
困ったなー。『作者がな』・・・桜野、何言ってるんだ?後で話があるからな!『ッフ』イラッ。
「あの・・・」
思考で葛藤していると、狼人の少女が話しかけてきた。
「ん、どうした?」
「よければ・・・好きなように・・・?お好きなように呼んでください」
言葉を詰まらせながら、狼人の少女が言った。
「・・・どうぞ」
そういって、甲を上に右手を差し出してきた。何の意味があるのか分からない。
『手を取ってやるのだ』さっきから茶々を入れるのはやめてほしいな桜野。というか頭の中でしゃべるって何んだ。『神だ。その世界のな』ドヤ顔が思い浮かぶ、腹立たしくて仕方ない。
さておき、差し出された右手を右手で下から持ち上げる。こんな感じかな?
「それで?」
「名前を・・・」
名前を決めろって言われてもね。すぐには思いつかないよ。
「・・・お母さんの名前は?」
「・・・ウェ・・・思い出せません」
目を背けながら言う。たぶん、言いたくないのか。思い出したくないのか。そんなところかな?
ウェなんとかさんか。狼人の少女・・・ウェ・・・。狼・・・ウルフ・・・ウル・・・安易か。ウフ・・・なんか卑猥な感じが・・・ルフ?んー・・・ウルフってローマ字にすると、全部Uが入るんだよなー・・・そのUをウェなんとかさんのEを持ってきて・・・ウレヘ・・・呼びにくい・・・。
ぶんぶんぶん。
思考の中、入ってきた音は尻尾のものすごい速度で左右に揺れる音。まっすぐ俺を見つめて、期待して待っているように見える。
いいや。
「ウル」
「はい!」
結局、安易なウルに決定して、口に出すとそれにウルと名付けられた狼人の少女が素早く返事を返す。
魔力が少し彼女に流れた気がする。
「わたしはウル、あなたの奴隷になりました」
目を瞑り両手を胸元に当てて、そう宣言した。―ん?
「ちょっとまって。なんで奴隷なんかに?」
「わたしを助けてくださいました。私にご飯を恵んでくださいました。わたしの恩人であるあなたに、わたしはわたしのすべてでお返しします。ご主人様」
俺は人として当然の事をしただけだと思う。でも、この世界だと特別なのかな?弱い者は死ぬみたいな。弱肉強食的な。
「さっきのが、奴隷の契約になるの?」
「はい」
この世界の仕様みたいなのかな。魔力使ったみたいだし。手を取って名前を付けることがか・・・。
「別に、奴隷なんかいらないよ」
「わたしは不要ですか・・・」
「不要っていうか・・・」
頭を掻きながらそういうと、ベットから立ち上がり数歩前に出る。ウルは手を広げて目を瞑る。
「では、処分を・・・あの時、死んでいてもおかしくなかった。わたしはご主人様に命を救われた上に、あんな態度を取ってしまいました。生きる価値はありません。さぁどうぞ」
無抵抗を示すボロワンピの銀髪の少女が、十字架のように立つ。終わりの時を覚悟したように、ただ、死を受け入れようとしている。生きる意味はないのだと示すように、ただただ、そこに立っている。
俺はその少女に近づく。
少女は微動だにしない。ただ、終わろうとしているように思える。
後ろに回り込み、完全に力の抜けている尻尾を見る。
そして俺は・・・。
「えい」
「ひゃい!?」
尻尾を掴み、頬ずる。
「お~なんてモフモフ。あーでも、匂いがちょっとなー。手入れもしてないからちょっとチクチクするし」
「な、なにを!?」
さらに尻尾を自由に弄ぶ。
「や、やめてー!」
▽
「そんなのでよく処分してくれ、なんて言えたもんだ」
「死の、覚悟はしていました・・・」
再びベットに座らせて、先ほどの様に向かい合う。狼人の少女は自分の尻尾を撫でている。
「奴隷じゃなくて、んー・・・ペットー・・・も同じような意味か・・・」
「ペット・・・それでもかまいません」
捨てられた子犬の様な、うるうるとした目で俺を見つめる。そんな目で見ないでほしい。
「しかし、態度が変わりすぎだね。寝首を「それはありません」」
被せるようにウルが言う。尻尾が感情に反応してるのが面白い。
「心配であれば、制約を加えましょう」
「どんな風に?」
ウルが先ほどと同じく、右手を前に出す。
「どうぞ」
また、手を取ってみる。
「何か制約があれば申し付けてください」
「と、言われても」
こっちはこの世界の常識に疎いんだ。さっきと同じ風にすればいいのかな?
「じゃー・・・俺に危害を加えない」
「はい」
また魔力が流れた気がする。なるほど、なんとなくわかった。
「以上」
「足りません」
ウルが真剣な眼差しを俺に向けて言う。
足りませんって言われてもね?
「では、私の方で制約を立てますので、『契約』と申し上げてください」
「わ、わかった」
嫌な予感がする。ウルは目を閉じて、口を開いた。
「ウルはご主人様の言いつけを守ります」
「契約」
魔力が流れていく。
「ウルはご主人様の性処理をします」
「契や・・・できないよ!?」
こんな子供に対してそんなことできるわけがない。言っておくけどロリコンじゃない。
「何故ですか」
「ウルが小さい子供だから」
目を開けて見つめられる。
「私のお母さまは、男性種に受けがよかったようです。なので、わたしもそうなれます」
「いや、そういわれてもね・・・」
思い出せないと言った、母の話を持ち出してまでアピールされる。
再び目を閉じて、制約を続ける。
「大きくなったら!ご主人様の性処理をします。その間に欲情した際も!お使いください」
「・・・」
半ば、ヤケクソ気味にウルは再び制約を立てる。
「「・・・」」
沈黙が場を支配する。
「返事を、いただきたく存じます」
沈黙を破ってウルが、契約を要求する。話を逸らしてみようか。
「あー、ウルの言葉使いは何処で覚えたの?」
話をそらすために、疑問を投げかけてみる。
「・・・お母・・・さま、から・・・です・・・」
「なるほど」
答えるときに、間が開くのは、言いたくないからかな?さっきも思ったけど、これも聞いてみるか。
「もしかして、お母さんのこと、嫌い?」
「・・・どちらとも・・・言い難いです」
ウルは言いたくないけど、言った感じに思える。
ウルは首を横に振って、再度制約を立てる。
「大きくなったら!ご主人様の性処理をします!その間に欲情した際も!お使いください!」
「・・・わかったよ」
この子も頑固だな。人のこと言えないけどさ。『ッフ』ほんと、後で話があるからな?桜野。
「契約と・・・」
「あ、ごめん。契約」
魔力が流れる。契約に契約って言ったけどいいのかな?
「以上です。他にあれば、追加してください」
「俺からは、寝首をかか「」それはありません!」」
目を開いてウルが言った。
▽
「あ、アルミナさんはどうなっただろう!?」
「アルミナ?」
地図でフォータウツイーツノを確認する。ポンコツさんのことが出てこないのが、さすがに少しかわいそうかな。
「特に、変化はないか」
アルミナさんの体力も満タンのままだ。
地図を眺めていると、近くにぬくもりを感じる。目を向けると、ウルがそばに立っていた。何かを待っているように感じる。
「どうしたの?」
「いえ、ご主人様を見ています」
ウルの頭に、なんとなく右手を置いてみる。ちょっと・・・いや正直油っぽい感じの手触りが、あまり触っていたくない。
「えへへ・・・」
ウルはうれしそうな様子だ。
地図で見る限り、今のところ問題はないみたいだ。出しっぱなしにしてあるし。何か動きがあったら急いで向かおう。
「んじゃ、話をしようか」
俺はウルに向かって微笑んだ。ウル自身の生い立ちなどを聞くことで、より親密な関係性を築く事にした。ウルは言いたくなさそうだったけど、それでも彼女を知りたいと思った。
▽
「なるほど、だから最初『男』って言って距離を取ったんだね」
「ううう・・・はい・・・冷たい」
初めて攻撃魔法を使ってみたわけだけど。攻撃用途としてではなく。ウルを洗うためだ。水魔法便利だ。
さすがに、初っ端からウルに向けて使う訳にもいかず。空中に向かって初動を試した。『水圧カッター!』が出て、ウル真っ二つ。みたいなのは勘弁願いたい。
使う時に掌を、出したい方に向けるとか聞いてない。発動しないから少し困った。使った時は、ステータスの所為もあっただろうけど、加減が分からずに大変だった。ここの一対だけ大雨になった。その所為で、俺までずぶ濡れになるし。
「ヘクチ・・・」
ウルのくしゃみだ。さすがに、水だと冷たすぎるか。あれ?これって虐待的な・・・?
「温かくならないかな」
言葉にすると、水から湯気が出るようになる。いやな予感がする。
「ウル、避けて!」
「え?はい!」
自分でも、ウルからズラすけど、一応注意喚起する。
地面に着弾した水?が湯気を上げている。水魔法を止めて、水溜まりに触れてみる。
「うわ、結構熱いぞ」
結構、というか火傷しそうなくらいに熱い。温かくって言ったけど熱くとは言ってないぞ?
「これまた、ステータスの所為かな?」
「ヘクチ・・・」
調整が大変なステータスだな。しかし、お湯が出せる。という事は?
それから、俺は土魔法を使ってみる。また、発動しない。手を翳してみる。・・・発動しない。
「あれ?」
「ヘクチ・・・」
「あ、ごめん」
ウルのくしゃみに、気が付き温度調節をした水魔法を当ててあげる。
「はぁ~あったかい」
再度思考してみよう。使おうとして発動しない。手を翳しても発動しない。・・・対象が必要とか?
あったまったウルに俺の予備の服を着せる。パンツは・・・とりあえず。乾かしておこう。
「スンスン・・・。ご主人様の匂いしない」
そりゃそうさ。買って一度も袖を通してない。
さて、対象か・・・では、手始めに小石に向かって発動させてみよう。その辺に落ちてる石を拾い上げて、念じてみる。発動しない。
「どうなってるんだ?」
「なにをして・・・なさっているので?」
「土魔法を発動させたいんだけど、わかる?」
ウルは首を横に振る。そういえば、ウルの魔力適性値0なんだ。
こういう時は、どうしたいかを想像してみる。とか?今度は、小石を砂状にしようと念じる。
サー
石が砂の様に分解された。
「おお、やってみるもんだな」
「おお!」
ウルも一緒に驚いてくれる。
となれば、あとは簡単だ。これを活用して、ちょっと広めの溝を作ればいい。さて、何ができるか分かるかな?シャワーは今まであったけど。なかったものと言えばー?
ご閲覧ありがとうございました。
次回、設定回もどきです。少々長ったらしいかもしれませんが、魔法があっても知識や経験がないと作るのは難しいのではないかと思い、そうなりました。
次回の投稿は1週間後に。