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狼人の少女

ご閲覧ありがとうございます。


今回も、20分ほどお付き合いいただけると幸いです。


魔車の積み荷を確認するシーンが抜けていました。文字制限をかけているから・・・とは、いいわけですね。精進します。

ポーションを探すシーンで樽の確認をしなかったのは、狼人の少女のために急いでたのでそんなことしてる場合じゃないと思ったので入れなかったのですが、そこそこのんびりしてるように見える主人公ですね・・・。


▽は時間が経過する時に使用します。会話を重視するので多用すると思います。



 俺は、荒れ果てた戦場の後を、狼人の少女を抱えながら慎重に歩いている。


 腰ほどまでの長さの綺麗な銀色の髪が、俺の目を時より奪う。初めて見た雪山の、あの感動を思い出すかのようだ。土埃や血の所為で痛んでいる箇所があるのがもったいない。

 服装は、本当に戦場に出てたのか疑いたくなるほどに貧相。ボロの薄茶色いワンピースが、所々破けたり、血が滲んだりしている。パンツは履いてるようで安心したけど。かなり痛んでるようだ。ちなみにブラは無い。

 尻尾も髪と同じく銀色で、先の方は完全に白くなっている。触りたい衝動に駆られるが、今はそれどころではない。


 「ハァ・・・ハァ・・・」

 「しっかりしろ」


 意識を保たせるように声をかけ、小屋へと気持ちを急がせる。



 ▽



 程なくして小屋にたどり着く。


 ベットに狼人の少女をゆっくりと寝かせ、魔車の荷台の(たる)に何かないか探しに行く。


 試験管のようなものが何本か入った魔法鞄(マジックバック)を見つけた。回復薬的なのでいいんだよね?見つけたのはいいけど、3種類あるぞ?


 「どれがどれだ」


 地図の詳細情報では・・・分からないか。


 毒とかではないだろう。ポンコツさんが用意した物らしいからね。


 「・・・若干心配だな」


 3種類の試験管を目の前で揺らしながら俺は呟いた。

 ポンコツさんが用意した・・・物・・・か。


 地図のステータス情報を見ても体力は回復している様子はないが、ベットの前まで来て、狼人を見ると安定した寝息を立てていた。


 「これを、飲ませるのかー・・・?」


 赤、青、緑の液体の入った試験管。


 「何本もあるし自分で飲んで試してみる、か・・・?」

 『赤だ』


 ん?何だ今の声?赤?


 「赤・・・か?」


 直感でも働いたのかよくわからないけど。赤がいいらしい。

 自分で飲んでみる。


 「・・・なんかドロッとしてるなぁ・・・ンゴクッ」


 味は・・・栄養ドリンクに鉄でも混ぜ込んだんじゃないかって味だけど、体力は回復した・・・気がする。体力ステータスが満タンだから確認できない。


 「害はないみたいだし、飲ませてみよう」


 狼人の少女の口に当てて、すこしずつ流し込む。口の端から少し零れているが、喉は動いているので飲めてはいるはず。


 「おーすごいな」


 再度、地図のステータス情報で見ると、狼人の体力がもう8割以上回復している。

 体の汚れが目立つが、さすがに汚れまでは治らないし服とかも戻るはずないか。薬だしね。


 しかし、さっきのはなんだろう・・・。


 (おう)・・・()・・・そうだ、桜野(おうの)だ。なんで忘れてたんだ?


 『ッフ』


 また聞こえた。相変わらず腹立たしく鼻で笑う。


 「どこにいるんだ!」 


 ・・・


 声を叫び上げるが返事がない。


 「やろー・・・」

 「ん、んん・・・」


 天上を睨み付けながら拳を握りしめていると、狼人の少女が唸るのが聞こえた。


 「あ、ごめん」

 「誰・・・」


 俺の大声で起こしてしまったようだ。目がぼやけているのか俺の顔をまっすぐ見れないようだ。


 「俺は、コウサカ・・・って、ことになってる」

 「・・・男!!」


 腰を落として目線を合わせながら自己紹介をすると、ベットの隅に飛び退き犬の様な威嚇のポーズを取る。


 「ぅううう・・・!」

 「ま、まってまって」


 両手を開いて敵意はないと示すように、軽く手を振る。


 「・・・きゅぅ・・・・・」


 倒れ込んだ。体力は回復してるはずなのにどうしたんだろう。


 ぐ~・・・。


 ああ、お腹減ったのね。


 ドアを開けて外に出る。魔車に何かないかと探しに行く。


 「んー」


 樽に食料があるという話だったはずだけど・・・。


 「食()というか、食()なんだけど」


 樽は7つある。普通は旅に出る前に中を確認するものだろうに、用心が足りないな。

 食材の敷き詰められた樽が5つ。さっきの魔法鞄の入った小道具系が1つ。もう一つは空だった。たぶん、入れる用だろう。


 「ご丁寧にフライパンもあるし、包丁とまな板も」


 小道具系の樽に、布に包まれたフライパンと包丁、まな板を取り出しながら呟く。

 料理しろと?俺に?いや、切ったり焼いたりする程度ならできると思うけど・・・。


 「まぁ適当に、この肉?を切り分けて、焼いて・・・油は?」


 油どれだ。


 樽の中を(まさぐ)ってみる。


 「これは何だ?」


 アルミホイルのようなものに包まれた長さ15cm程の小さい角材のような形のものがある。

 包みをすこし剥がすと、バターのような印象を受けた。


 「あーバター?なのかな・・・?油代わりにバターで肉を焼くってどうだろう?」


 料理音痴でもそんなことしないだろう。

 しかし、他の2本も同じようだ。


 「料理ド素人だし。要は、肉がフライパンにこびり付かなければいいんだろう?それに、腹が膨れれば文句は言わない・・・と思う。とりあえず味見はするけど・・・」



 ▽



 フライパンの上にバターの様な白黄色い何かを、小さく切り分けて入れる。

 同時に、肉を二人分と、試し用を小さく切り分けて置いておく。


 「コンロみたいなのがあるのは助かるけど、火はどうするのさ」


 火魔法を使う?火力を誤って小屋が全焼する未来が見える気がする。


 「お、手形パネル発見」


 ぺたりと、手を翳すと火が出てきた。


 「無駄に便利だな」


 ジュー


 バターもどきを溶け広げていく。匂いはバターじゃ、ないんじゃないかな・・・?


 「肉の上にバターが乗ってるのは見た事ある気がするけど、これはどうなんだろう。甘くなるんじゃないか?」


 いい感じに広がったので、切り分けて置いた肉を投入する。もちろん試し用だ。


 ジュジュ~パチ、パチパチジュ~


 ああ、割といい匂いだ。


 「この世界の食材っていろいろ違うし。うまく噛み合ったりして・・・いや、そんな都合よくはないか」


 しかし、本当にいい匂いだ。


 しばらく焼いてから、再びパネルに手を翳して止める。


 「では、試食をっと・・・フー、フー、あ~ん」


 フォークで刺して口元に運び。熱を冷ましてから、咀嚼(そしゃく)、咀嚼、咀嚼。


 「うん、まぁ案外うまい」


 思いのほか甘くない。しかし、豚とか牛とかそういう味じゃないな?嗚呼・・・アルミナさんの料理が恋しい。


 とりあえず、残りの肉を焼いてしまおう。1枚目の後に、一応バターもどきをまた少し足してから焼く。



 ▽



 「さ~できたぞ~」


 平皿に乗せて、申し訳程度の野菜を盛り合わせて完成だ。


 匂いに鼻と頭の耳を動かす狼人の少女。猫人の時もだったけど耳が4つあるんだね。


 「うう・・・」


 辛そうに首を起こして、こちらを見る。目が合って、またも威嚇を受ける。


 「ぅうう!」

 「大丈夫。悪い物じゃない。さ、食べないかい?」


 料理と呼べない料理をの皿を、少し押し出して食事を促す。


 「・・・うう・・・うううう!」

 「俺の言葉通じてるよね?」


 尚も、威嚇を崩さない狼人の少女。さっき「誰?」って言ってたし。翻訳魔法は働いてるはず。


 「分かった。じゃぁ俺は魔車で食べるよ」


 こういう、野性的な子は一緒には食べてくれないだろう。

 ガチャリとドアを開けて皿をもって魔車の荷台に移動する。


 「まぁ、こっそりと地図で動きを見るけど」


 ステーキもどきを咀嚼しながら、地図を眺める。

 

 この肉、元の世界でマグロの刺身を軽く焼いて食べた時の、あの味にそっくりだ。この肉はマグロステーキなのか・・・。


 「お?」


 狼人の少女に動きがあった。どうやらマグロステーキを食べ始めてくれたようだ。


 小屋の窓から少し覗く。食べてる食べてる。よかったよ。人に料理を食べてもらうのってこんな感じなのか。


 狼人の少女の耳が、こちらに向いたので急いで隠れる。


 「まぁ、食べてくれてるならいいや」


 自分も自分の肉を食べよう。しかし・・・ご飯が欲しいな。



 ▽



 食べ終わって、さてどうするかだ。


 まぁ、この皿洗いたいし。小屋に戻ろう。

 ガチャリとドアを開けると、狼人の少女が手を舐めている最中だった。

 

 「―――!」

 「あ、ごめん?」


 フォークとナイフあったのに、手で食べたのか。

 はしたないから、そういうことしない。っと、怒る処だけど。何となく動物的無邪気さに、愛らしさを感じた。


 「食べ終わったならお皿洗うから―」


 そういって皿を取ろうとしたら。


 ッサ。


 狼人の少女がその皿を引っ手繰る。


 「え・・・」


 するとなんと、皿を舐めている。


 「さすがに、はしたないぞ」


 手もだったけどさ。

 俺の言葉を無視して皿をひたすらに舐める。


 「・・・そんなに気に入ったなら、もう1個作ろうか?」

 「!!!」


 喜びの顔をこちらに向けてくれる。尻尾が左右にぶんぶん振れる。なんだこのかわいい生き物・・・。


 「わかった。でも、それ洗うから貸し―」


 皿を取ろうとしたら、避けられる。そしてまた舐める。


 「気に入ったのはいいけど、もう味残ってないでしょ・・・」


 舐めるのをやめないので、そのままにして自分の皿を洗いもう一つ作ることにした。



 ▽



 ガツガツガツガツ。


 狼人の少女はマグロステーキもどきに(かぶ)り付いている。


 「熱くないのか?」


 手でつかんで、食べるから聞いたのだが、俺の言葉を無視して食べるのをやめない。


 「俺の言葉通じてる~?」


 尚も俺は挫けずに言葉を重ねる。目は合わせてくれるんだよなー。


 「あ、じゃぁちゃんと返事したらもう1個つくって()ホント!?」」


 通じてるんじゃないか。


 「ああ、んで、君の名前は?」


 いつまでも狼人の少女だと困る。『作者がな』・・・桜野、おまえ・・・いるんじゃないか。


 「名前は無い・・・です」


 思考を遮って、狼人の少女が答える。猫かな~?


 「ナイって名前じゃないよね?」


 首を横に振られる。


 「それは困った」

 「食べていい・・・ですか」

 「ああ、うん」


 肉との奮闘(ふんとう)を再開する狼人の少女。ちなみに、今回ちょっと大きめに切ったので、食べごたえは抜群だろう。


 「じゃーとりあえず、もう1個作るか~」

 「ありがとう!・・・ございます」


 なんか、しゃべり方が気になるけど、まぁ気にしないでおこう。


 しかし、そんなに美味いかな?俺が食った時は良くもなく悪くもない。って程度だったと思ったけど。



 ▽



 3枚目の肉を平らげて、ご満悦の狼人の少女。ベットに座りながら、また皿を舐め続ける。


 「そろそろ、それ洗いたいんだけど」

 「今、洗ってる・・・です」


 舐めてるのって、洗ってるつもりだったのか?


 「それは~舐めてるのであって、洗ってるのとは違うよ」

 「え・・・」

 「え・・・?」


 こっちのセリフだよ。詳しく聞いてみようか。


 「靴を舐めて洗えって・・・言われ・・・ました」

 「誰に・・・」

 「男性種・・・です」


 何そのクソ野郎。


 「とりあえず、それは洗えてないから」

 「!!」

 「あと、靴も舐めちゃダメだから」

 「・・・!?しなくていいの・・・ですか?」


 なんだろうこの子。容姿からして、貧民暮らしでそんなことしてたとか?


 「感謝の気持ち・・・でした」

 「まぁ、そんなに気に入ってくれたならよかったよ」


 表現するより、言葉でほしかったな。まぁ今ので嬉しい気持ちになれたけど。


 「じゃぁ洗うからね」

 「ああ・・・」


 狼人の少女が取り上げられたさらに手を伸ばす。

 やっぱり、目的は残りの味だったんじゃないの?


 「ちなみにー・・・靴を舐めた事あるの・・・?」


 台所に向かう足を止めて問うと、首を横に振られる。


 「噛みつき、ました」


 そうなんだ・・・。俺のことは噛まないでね・・・?




ご閲覧ありがとうございました。


狼人の少女、ちょろすぎるかもしれませんね・・・。ひどい過去を用意したのに、もう少し素っ気ない感じでもよかったかもしれません。

桜野がちょっと寒い事を言いましたが、うーん・・・さすがにこういうのは面白くないですかね。


次回の投稿は1週間後に。

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