イルナの心情(2)
ご閲覧ありがとうございます。
いつもより短めです。本編とは関係・・・ない事もないですけど。興味のない人は飛ばしてください。
タイミング的に入れておくのがいいと思いました。
▽は時間が経過する時に使用します。会話を重視するので多用すると思います。
初めての男とのデート。
近くにいて、手を触れて、声を聴くだけで、胸がときめく。
もっと構ってほしい。もっと触れてほしい。もっと話してほしい。
その思いが募るばかり、だから、仕方ないじゃない。目的を忘れてしまうのは・・・。
「えっと、ステータ―」
「あ!忘れてないわよ」
忘れてたわよ!でも、元はと言えば、あなたがいけないのよ!
「忘れてないから」
私は精一杯の見栄を貼って言い放ってやった。
大丈夫。昔に行った事あるもの、体が覚えているわ。
たぶん。
▽
歩いても歩いても町並みは変わらない。
男は痺れを切らして口を開いた。
「あの―」
「ごめんなさい」
私は間髪入れず、遮りながら謝罪の言葉を口にする。
「えっと―」
「そうよ!判らないのよ!しょうがないじゃない!一度しか、行った事無いんだから!領主である限り都市核の恩恵で、自分のステータスは判るし、小さい頃に一度行ったきりなのよ!久々の街に、楽しくなっちゃって、完全に忘れてたのよ!」
男は尚も言葉で追撃をかけようとするので、私はそれをさらに遮り、精一杯の声量で言い訳を並べ立てる。
仕方ないじゃない。私の目的は、あなたとのデートで、ステータス鑑定場なんてついでに見つかるとしか考えてなかったんだもの。
「イルナ様、探しましたよ」
さすがに、声で姉さんにバレれてしまった。
あーあ、折角のデートなのに、こんな風に終わってしまうなんて、この男からの印象は最悪ね。近衛が何か言ってるようだけど、私は落ち込んでいてそれどころではない。
「さ、城に戻りましょう」
「・・・はい」
さすがに、姉さんの声には答え、城へと連行された。
▽
城に戻り、私はまた書類の山と対決する。
その前に、一時的な法を作っておかないと、節操のない連中があの男を奪い合うだろう。
「なんですか?これは」
姉さんが私の作った法を見て問いかける。
「必要でしょ?」
「イルナ様が言いますか」
あきれ顔の姉さんが私に対して言う。
「兵長だって言えないんじゃないかしら?」
私は書類の山と戦いながら、お返しした。
「私はどうしましょうかね」
「でも・・・姉さんは・・・ほら、あの男から泊めてほしいって言ってきたんじゃなかったかしら?」
男は姉さんに宿の代わりに秘密にするという約束をしてくれたのだ。
男からならば、いいだろう。
ん?男からならば・・・そうか・・・!
「なにやら、悪い顔をしていますね」
「べーつーに~ホホホ」
さすがは姉さんだ。お見通しだろう。
「そうだ。結局あの男に、ステータス鑑定場の場所を教えてないわ」
「あーそれなら、到着してたので、後ろだと教えておきましたよ」
ああ・・・発動してたのね。私のスキル・・・無駄運が・・・。
▽
「ああ!もー!」
現在、執務室で今日も今日とて書類の山と対決中だが、いつもより10倍以上量が多い。原因は、昨日作った一時的な法の所為。
対 象 :コウサカ(男性種)
一時的法:対象が、この都市に滞在中、都市の民は自らアプローチをかけてはいけない。
罰 :対象の滞在中、魔石使用を都市核により一切停止。
滞在後、その者の魔石をすべて押収。(※都市核により隠しても無駄)
これを発表したら、この書類の山だ。
「捌き切れないわよ。こんなの・・・」
不平不満はまぁ仕方ない。『昨日私といるのを見たので~』とかもある。
「えー・・・なになに?納税を上げる代わりに見学に来させろと・・・?掌返しかっ!昨日はあんたの工場。納税下げろとか言ってたじゃん!却下!」
こんなのも結構ある。そもそも、あの男は私がどうこう出来る権利を持ってない。
・・・ああ、でも、昨日のデート楽しかったなぁ。
あの男・・・コウサカって言ったっけ。
声・・・顔・・・フフ。
コウサカ。うん、なんか呼びやすい。
▽
さすがに一人で捌き切れないから、姉さんを呼びつけて一緒に書類の山と戦ってもらう。
「まったく困ったもんだね」
「そうなのよ!もー!なにこれ!却下!」
手慣れたように、姉さんがすらすらと片づけてくれる。これで作業量は2倍、何とか今日中に終わらせられるだろう。
ちなみに、この執務室は遮断魔法がかかっているので、姉さんの口調は領主用じゃない。
「ん?滞在後に旅をするなら・・・?誰これ、なんで知ってるのよ」
「どれどれ・・・確かに変だね。あたしは誰にも言ってない。というより、差出人が書いてないね」
コウサカが誰かに言ったのかもしれないけど、差出人がないのが謎すぎる。
「でも、条件が破格ね。男性種へ魔車と旅に必要な物を献上と、都市に100万魔石の献上だって」
「100万ってどこから湧いてくるのかね」
「代わりに・・・、男性種の拝見?」
たしかに、100万魔石なんて、この都市の10%以上になる。
「どうするんだい?」
姉さんが問いかけてくるのに、私は唸る。
「ん~、そもそも、何処に承認を伝えるのよ」
「差出人不明じゃーねぇ」
まぁでも100万魔石もくれるなら、貰おうじゃない。
「承認」
「いいのかい?」
「減るもんじゃないし。いいでしょ~」
サインを書いたら、紙が消えた。
「えっ」
「魔紙だったみたいだね」
もしかして、大変な物にサインしちゃったかしら。
▽
それから数刻後、姉さんは任せられる分の書類はすべて片つけ、サインの終わったものを整理してもらっている。
「まだまだあるね」
集中していて、姉さんの言葉に反応できずにいる。
そこに来訪者。
―コンコン
ノックの音がして、姉さんが誰かを確認しに行く。
「はいはーい」
ドアに手を当てながらなら、声が聞こえるようになっている。
「ああ、よかった。返事がないから誰もいないのかと」
この声、コウサカだわ。
ガチャー
ドアを開けて、コウサカが入ってくる。
「失礼します」
「来たね~」
コウサカが入室のあいさつをして、それに答える姉さん。なんか、来るのがわかってたみたいだ。
「大変そうですね」
そうなの、大変なのよ。あなたの所為でね。だから、手短にしてほしいわ。
「えっと、お忙しいところ申し訳ないのですが、図書館の閲覧許可が欲しくて参りました」
要件は図書館の閲覧許可のようだ。
「図書館の閲覧許可が欲しい?」
コウサカの言葉を復唱しながら、私は考える。これって、向こうからよね。そう、なら交換条件を提示してもいいわよね?
「・・・いいわよ!」
「ありがとうございます」
コウサカは、私の言葉に礼儀正しく頭を下げて礼を言ってきた。
「その代わりに、私も行くわ!今から!?」
「はー・・・「やっぱり」」
▽
その次の日、執務室の机の上に100万魔石の入った袋が置かれていた。私の専用魔鍵がないと開かないはずなんだけど・・・。
「何なのかしら?でも、うん、本物だ」
一応、身分証の角で測定するが100万魔石だと分かる。
ご閲覧ありがとうございました。
急ごしらえだと、いろいろおかしいところがありますね・・・。さらっと直しておきました。
本編は来週に