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第5章Prologue「入学式の前日」

(学校か...考えたこともなかったな)

 卓生は荷造りをしているサーニャ達の横で考え込んでいた。

「どうしたんだよタクオ? お前は荷造りしないのか?」

「するよ。するけど...異世界の学校ってどんな感じなんだろうなって」

「そういえば、タクオ君は13歳だよね? タクオ君の世界にも学校はあったの?」

 ラファは卓生に尋ねた。

「ああ...俺はちょっとイジメを受けてたから不登校になっちゃって」

「えっ...ごめん、嫌なこと聞いちゃって」

「いや、いいんだ。厳密に言うと、俺が不良共の行いにブチ切れで暴れて...その様子をクラスの女の子にトラウマ植え付けちゃってさ」

 卓生は少し憂いのある表情を含みつつ、学生時代の自分を話した。

「まるでイキリオタクの戯言だな。にわかには信じがたい」

 ルーフは卓生の話を聞いた後、ニヤついていた。

「ちょっとルーフ君!」

「すまんすまん...流石にお前の傷を笑ったのは行きすぎたな。申し訳ない」

「いや、いいんだルーフ。俺は実際イキリオタクだし、初めて聞くやつからはそう思われても仕方ないしな。ただ、俺が望むとしたらダイトウはイジメのないところだったらいいなって...」

「それは100%無理ですよ。どこの世界にもイジメは存在します。決して消えない存在です」

 キョウは濁った目をしながら、卓生が胸に抱えていた希望を打ち砕いた。

「いや、そんなことはないぞ。ダイトウは争うことはあるがイジメがない」

「...それって本当ですか?」

 キョウはサーニャの話に半信半疑だった。

「ああ、本当だ。ダイトウには死角も通さない監視カメラが仕掛けられていて、生徒が悪さをしないか見張っているんだ。そして万が一イジメがあった場合、退学どころか法律と校則に基づいて死刑されるんだ」

「し、死刑ですか...」

「しかも死刑のやり方はイジメをした人間がやられた側の気持ち以上に苦しみを味わうように首輪をつけて、ジワジワと締め付けた後に首が完全に取れるという死刑方法だ」

「恐ろしいですね...」

 キョウは罰則の重さに少し引いていた。

「イジメをしたんだ。こんくらいの報いを受けて当然だ。それに...」

「おっ...?」

「もし誰かが私のタクオをイジメたら死刑の前に私がぶち殺すからな」

 サーニャは突然タクオに抱きついた。

「サ、サーニャ...みんなが見てるよ。俺たち恋人同士だけど、こういうのは人前でやるもんじゃないよ」

 タクオはそう言っていたが、本人は満更でもなさそうだった。

「完全に僕たちに見せつけるようにイチャイチャしてますね...」

「リア充死すべし...」

「もうこいつらが死刑でよくね?」

 三人はタクオとサーニャのバカップルぶりに怒りと呆れが混ざった感情を抱いていた。

「あ、そうだタクオ。お前だけ明日の準備してないだろ? したらどうだ?」

「いや、明日の俺がなんとかしてくれるから...」

「ダメ! もし明日ギリギリに起きて準備が整ってなかったら遅刻確定になるだろ? だから、今すぐに準備して!」

「は、はい...」

 サーニャはだらしない卓生を咎めた。

「これ、まるで親子ですね...」

「サーニャちゃん、お母さんみたい...」

「もうこれは恋人を通り越して熟年夫婦だな...」

 三人はサーニャとタクオに対して一転して和んでいた。

お久しぶりです。

数日休載していましたが、またぼちぼち再開します。

そしてiosがアップデートされたため、スペースの間隔が統一化しました。

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