第4章ー30「女神ルシファー」
「...ん? ここはどこだ?」
卓生はある場所で目を覚ました。その場所は周りが真っ白で何もなかった。
「あれ? 俺は確か元の世界に戻ったはずなんだが...」
卓生は不思議に思いながらも辺りを見回していた。
「てか、出口はどこだ? どこにもなさそうだが...」
卓生は出口が見つからないことに少し不安そうな顔を浮かべていた。
「ここを出たいか? なら、私の話を聞くことだ」
「うわぁ!?」
卓生は突然後ろから聞こえてきた声にびっくりした。その声の主は長い銀色の髪と白いキトンを着ていた。そして、背中からは翼を生やしていた。
「...アンタは?」
「私の名前はルシファー。異世界と現実世界の仲介人を務める女神だ」
「め、女神様...初めて見た」
卓生はルシファーの神々しさに目を引かれていた。
「で、何故俺はここにいるんだ? 女神様」
「貴様はヴァルキュリアの血を引くものと融合を果たした」
「あー...ルーフか」
「それにより、貴様の身体にはヴァルキュリアの血が僅かではあるが流れるようになった。それにより、貴様は異世界に残れる権利が手に入った」
「異世界に残れる...?」
「そもそもヴァルキュリアの血を継ぐ者が全滅したからな。お前にあの世界の管理を任せようと思う」
「は...?」
卓生はルシファー衝撃的なことを聞き、動きが止まった。
「いや、でも...ルーフがいるじゃないか?」
「あいつは一家から勘当された身だからそれはできない。まぁ、城から一切出るなとは言わない。管理してる立場ではあるが基本的には自由に動ける」
「いや、待て。そもそも俺は異世界に戻ると決めた訳じゃ...」
「でも、異世界に戻りたいと思ってるんだろ?」
「...」
卓生は図星を突かれ、何も言えなかった。
「...確かに、現実は辛いことばかりだよ。なんならずっとあの世界に暮らしたい。でも、またあいつらと会えるかな? 記憶も無くさず姿も変わらずにまた会えるかな?」
「その心配はない。貴様が今まで異世界で過ごした記憶と時間はリセットされることはない」
「そ、そうか...」
卓生は安心していた。
「それと、貴様に聞きたいことがある?」
「な、何?」
「実は私が異世界への仲介をしている時、貴様と顔のそっくりな女を見たんだが、関係はあるのか? 確か名前は、桐井享子って言ってたな...」
「!?」
卓生はその名前を聞いた途端、ルシファーに詰め寄った。
「享子が生きているだと!?」
「ああ。それに、ヴァルキュリア家が崩壊し、元現実世界の人間が次々と送還される中、その女だけはいなかった」
「アンタ、女神様なんだろ? 場所はわかるよな?」
「残念ながら私は便利屋ではないからそこまでは知らん。ただ、確実に言えることはその女は何かしらの形でヴァルキュリア家の一員になったとだけは言える。何せ送還されて来なかったのだからな」
「そ、そうか...その情報を聞けただけでもありがたい!」
卓生はルシファーの手を握り、感謝した。
「あれ...? 身体が」
その直後、卓生は自分の身体が消えかかっていることに気づいた。
「そろそろ貴様が異世界に戻る時間だな。一先ずお別れだが、また何かしらの形で会えるだろう」
「ああ。また会おう」
卓生とルシファーがお互い別れの挨拶を済ませた後、彼は完全に身体が消えた。




