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第4章ー29「イキリオタクの消失」

「...オ」

「...クオ」

「タクオ!」

「は!?」

卓生は誰かに名前を呼ばれ、目が覚めた。

「サーニャ...みんな?」

卓生はいつのまにか控え室にいた。周りにはサーニャ、ラファ、キョウと彼の仲間たちのほか、いつのまにか分裂をしたルーフ、そしてレイもいた。

「タクオさん! 無事でよかったです!」

キョウは涙ぐんでいた。

「心配したよ。レイさんがフィールドで雪崩が起こってると察知したお陰で、タクオ君を無事連れ出せてよかったよ...レイさんお礼言いなよ!」

「いえいえ。私は大したことしていませんよ...」

レイは謙遜していた。



『タクオの奴...大丈夫かな』

『タクオさんが強いのは知ってます...ですが、相手はヴァルキュリア財閥のトップですよ』

『...タクオ君、生きて帰ってこれなかったら私も追いかけるからね』

『怖いこと言うなよ...』

サーニャはラファの発言に少し寒気を感じていた。その時、会場で揺れが起こった。

『な、何だ!? 地震か!?』

『いえ、これは雪崩です』

『レ、レイさん!?』

キョウはいつの間にか現れたレイに驚いた。

『あなた方はここでお待ちください。彼は私が連れて行きます!』

レイは颯爽と雪崩が起きたフィールドへ向かった。



「レイさんお前をここまで避難させることができたものを...まさかお前がぶっ倒れてたなんてな。無茶しやがって」

「ご、ごめん...レイさんもありがとう」

サーニャはタクオに呆れ、タクオはお礼と謝罪の言葉を投げた。

「で、奴らはどうなったんだ?」

「...奴ら?」

「はぁ...ヴァルキュリアの奴らだよ」

サーニャはまたタクオに呆れていた。

「それは、もう壊滅した。俺がこの手であのクソ野郎をぶっとばしたからな」

「何言ったんだお前? 俺たちがだろ?」

「まぁ、ヴァルキュリア財閥が消えたからこの国の管理組織は事実上いなくなったってことだな」

「おい! 話を聞けよ!」

「ぐおっ!?」

卓生はルーフの頭を叩いた。

「...で、お前らに重要なことを言いたい」

「俺たちの家がこの世界に人間を送る訳の分からん装置作ってたことは知ってるよな?」

「あ、ああ...」

「それなんだが...ヴァルキュリア財閥が壊滅したことでその装置のシステムが消滅するんだよ。操る奴がいないからな」

「それって、どういう...!?」

卓生はルーフの言ってる意味を聞き出そうとした途端、彼は自分の身体が消えかかっていることに気づいた。

「か、身体が...!?」

「そういうことだ。転送者や転生者は元の世界に強制送還されるんだ」

「な、なんだよそれ...!? いきなりすぎるだろ!」

卓生は消えながら困惑するしかなかった。

「タ、タクオ君!? 消えちゃうの!?」

「そんな...今まで一緒に旅をしてきたのに」

ラファとキョウもいきなりのことで困惑していた。

タクオは答えなかったが何かを決意し、口を開いた。

「ラファ...俺たちパーティに癒しをくれてありがとうな。最初、俺達がお前を助けてたけどいつの間にか俺の方が助けられることの方が多かったな。時々、俺に対して重い時もあったけど、そこも魅力だったぜ」

「...」

「キョウ...お前に名前をつけたのは俺だったな。お前は俺のつけた名前を受け入れてくれたよな。そして、お前が心配って思う時もあったけど、能力祭では勇気を振り絞って勝ったよな。それを知った時、まるで自分のことのように嬉しかったぜ」

「...」

「サーニャ...俺がお前と最初と会った時、色々あったよな。俺にこの世界のことを教えてくれたり、能力のことも教えたり、とにかく色々教えてくれたな。俺にとって、お前は最高のパートナーだったよ」

「...」

「っ...」

卓生は最後にサーニャに何か言いたそうな顔をした。彼は少し顔を赤くしながら戸惑っていた。

(いや、この際だから言おう)

卓生は覚悟を決めた。

「サーニャ、俺はお前のことずっとずっと...」





「好きだよ」

「...!?」

卓生はサーニャに告白をした。そして、その告白をして秒も経たずに卓生は完全に消えた。

「なんでだよタクオ...なんでもっと早く言わなかったんだよ。タクオォォォォォォォォォォ!」

サーニャは目に涙を浮かべ、想い人の名前を叫んでいた。

次の話で能力祭編は終了です。


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