表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/81

第4章ー18「能力祭SideS 2」

「次に挑む者はいないか!? いないのなら適当に指名するぞ!」

「えぇ…」

 選手たちはザオの横暴な態度に困惑していた。そして、ザオがサーニャに指を指した。

「じゃあ、そこの緑色の髪をしたお前! 競技に挑むんだ」

「わ、私かぁ…」

 サーニャは微妙な顔をしつつ、待機場所へ行った。

(あの的は一筋縄ではいかない…だが、もしもあの的の素材が鉄だったら…)

 サーニャは赤色の魔法指輪を取り出し、指につけた。

「一かバチかだ行くぞ! 炎魔法発動! バーニングフォース!」

 サーニャの手から放った炎が的全体を包み込んだ。

「そして…こいつだ!」

 更に彼女はもう一度炎魔法を放った。

「これでしまいだ」

 サーニャが指を鳴らすと的を包んでいた炎が消え去った。そして、的の形は歪み、倒れていた。

「おお…合格だ。的が倒れている…」

 ザオは驚いた表情を見せつつも、サーニャの合格を快く認めた。

「なんであいつは的を倒せたんだ…?」

「なにか凄い力を秘めているのか…?」

「分からないが、あの的を倒すほどの力を秘めていることは確かだな…」

 選手たちはサーニャの魔法スキルに関心を寄せていた。

「な、なぁあんた。どうやってあの的を倒したんだ? 教えてくれよ…」

 一人の選手が恐る恐るサーニャに聞いた。

(ライバルが増えることはできれば避けたかったが…あのおっさんの卑怯な戦法で不合格になるのは不憫だな)

 サーニャは悩んだ末に教えることにした。

「あの的はただの的じゃない」

「どういうことだ…?」

「あの的は鉄でできている。鉄は物凄く硬い。だから簡単に魔法を通さない」

 サーニャは更に続けた。

「だが、あの鉄の形を確実に変える方法がある。それは火だ。鉄は火を当てれば人の手で曲げたり折ったりすることも可能だ。私はそれを利用して炎魔法を出した」

「じゃあ…炎以外は使い物にならないってことか?」

「いや、そんなことはない。物理的にあの的を倒すことだって可能だ。ただ、的に当てることよりも、的全体を包み込むようにしてやらなければ倒すことは難しい。言えることはそれだけだ」

「あ、ああ…」

「じゃあ、私は待機室へ行っているぜ。このことは他のやつに言うか言わないかはお前次第だ。最も、私はあの男がお前ら選手を嘲笑しているのを見るとムカつくけどな」

 こうして、サーニャは待機室へ向かった。

「そうか。ザオさんのやつ、ハナから俺達を合格させる気はなかったんだな…許せねぇ」

「落ち着け。あいつに噛みつくよりも、あいつを驚かせることを優先しろ」

 選手が怒りに震えていると、仲間の一人が彼を抑えた。

「そ、そうだな…」

 そして選手も落ち着いた。


                     ※


(まさか…あそこまで環境が酷いとは)

 サーニャは嘆いていた。

(能力祭の悪い噂は何度も耳にしていた。でも、まさかそれが本当なんて。実際に案内人は選手のことなんか配慮していない。時には選手を殺しかねないこともしている…みんな、無事だったらいいんだけど)

 サーニャはパーティウォッチでパーティーメンバーの名前を見ていた。尚、会場内での通信環境は特殊な電波によって遮断されており、圏外になっていた。そのため、連絡をすることはできない。

(この能力祭もダイトウ学園もヴァルキュリア財閥と繋がりがある。そして、この街全てとも繋がっている…もしかして、私達は今とんでもないものを前にして挑もうとしているのではないか…?)

 サーニャは、今自分達の状況を整理し、改めて事の重大さに震えていた。

(そもそも今のパパの中にある人間は一体何者だ…? ヴァルキュリア財閥の人間であることは確かだが、そいつはどのような実力を兼ね備えている…? そいつはヴァルキュリア家の一員なのか、それとも幹部か…)

 サーニャがあれこれ考え事をしている内に、一人の男が入って来た。

「ふぅ…終わった」

 先ほどサーニャからアドバイスを受けた選手だ。

「おっ、あんたのお陰で合格できたぜ。ありがとうな」

「あ、ああ…」

「それと、あの的に仕掛けがあることは言うまでもなく、あんたのお陰でみんな気づいたようだぜ」

「え? それって…」

「つまりただ的を狙って倒すんじゃくて、直接的に攻撃を与えるって戦法だ。お陰であのおっさん、戸惑っていたぜ!」

 選手は笑っていた。そして、サーニャは待機室にどんどん選手たちが入って来ることに気づいた。

「ま、最も全員が全員倒せたわけじゃないんだけどな。能力が弱かったり、鉄との相性が悪い能力のやつはみんな不合格だ」

「…」

「で、合計の30名の合格者だ」

「で、お察しの通り不合格者の男は殺され、女は家畜になったよ」

「そうか…」

 サーニャは不合格者のことも聞かされ、暗い表情をした。

「だが、心配するな。俺達であのおっさんにひと泡吹かせてやろうぜ! ところで、あんたの名前はなんだ?」

「私は、サーニャ・スアだ。お前の名前はなんだ?」

「俺か? 俺の名前はダリュー・ダムスだ。俺自身はそんなに強くないが、強いリーダーと一時期だけパーティーを組んでいる」

「強い奴…?」

「ああ。その強い奴の名前はハヌマーンだ」

 ダリューはその強い奴の名前を言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ