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第4章ー17「能力祭SideS 1」

「はぁ…」

 サーニャは一人悩んでいた。

「私は本当にこっちでよかったのか…?」

 サーニャは先ほど「緑色の建物で待機」と言われたが、彼女の目の前には2つの建物があった。


                  ※


サーニャの目の前にある建物は黄緑色と濃い緑色だった。

「私はどっちに入ればいいんだ…? 多少の違いはあれど、どっちも緑色だよな…?v」

 サーニャは混乱していた。

「もうこうなったら今一発で決めるしかない…!」

 サーニャは意を決し、片方の建物に向かって走り出した。

「はあっ!」

 彼女が入ったのは、濃い緑色の建物であった。

(大丈夫だ…仮に違う部屋だとしても、その時になんとかすればいいさ…)

 サーニャは完全に運に任せていた。そして、一人の男性が入って来た。

「どうも。私の名前はザオ・シュイロンでございます。おめでとうございます。あなた達は合格者でございます」

 その男性は長身で爽やかな見た目をしていた。

(よ、よかった…)

 サーニャは結果を聞き、一先ず胸を撫で下ろした。

「だが、本当の戦いはこれからだ。まず君達には自分の魔法がどのようなものか見せる必要がある。だから、最初の競技でそれをしなくてはならん」

 ザオが指を鳴らし終わった途端、建物が倒れた。選手たちの周りには大量の的と燃えている建物があった。

「あれはもう一つの建物か。もし、私があっちに行ってたら、火だるまになっていたな」

 サーニャはあの燃えている建物が黄緑色の建物であることを察していた。

「さぁ、競技を始めようか。ルールは簡単だ。あの的に自分の魔法を当ててみろ。そして、あの的を倒せた奴が次の競技に出られる。どうだ? 凄くシンプルだろ?」

「なんだ。簡単なことじゃねぇか」

「的を倒せばいいんだろ? あっと言う間に行けるさ」

「よかった。私でも行けそう…」

 選手たちは競技のレベルを侮っていた。

(確かにあれは一見単純なものかも知れない…だが、勝ち残る確率が著しく低いこの能力祭の競技が楽勝なわけがない。とりあえず、他の選手の様子を見るとするか)

 一方、サーニャは油断することなく、身構えていた。

「それでは最初に受ける奴は誰かな?」

「はい! 俺が受けるぜ!」

 一人の選手が積極的に手を挙げた。

「では、どうぞ」

 そして、選手が的の当たる位置に立った。

「行くぜ! 俺の必殺技! はっ!」

 選手は手の平から火の球を飛ばした。

「これだけ強力な俺の技なら行けるぜ。ははは!」

 火の球は的に当たった。しかし、的はそれを弾き返した。

「なんだと…!?」

「残念ですね。あなたは的を倒せませんでした」

「くっ…」

「よってあなたは不合格です」

「がっ…」

 ザオは選手の腹に刃物を刺した。

「よし、片付いた…」

 ザオは手についた血を拭き取った。

「…」

 選手たちはそれを見て、血の気が引いていた。

「やっぱり何か仕掛けてあるな…」

 サーニャは競技の本質を理解し、よりいっそう険しい表情になった。

「では、次に挑む奴はいるか」

「…は、はい」

 次に弱気な女性選手が手を挙げた。そして、彼女は的のところまで来た。そして

「はあっ!」

 女性選手は指から光線を放った。この光線はかなり強力なもの且つ真っ直ぐに飛んでいった。そして、光線は当たりこそはしたが、的は倒れることなくピンピンしていた。

「嘘だよね…!?」

 よほど自分の能力に自信があったのか、選手は動揺していた。

「あなたも的を倒せませんでしたね…よって、あなたも不合格です」

「…」

「…!」

 選手たちはあの女性選手が殺されるかも知れないとと考え、息を呑んでいた。しかし

「さぁ、私と一緒にあの建物に行きましょう」

 ザオは殺すことなく、彼女をさっきの緑色の建物に案内し、二人は建物の中に入った。そして、数分後…

「はぁはぁ…ザオ様。私はあなたの所有物です。いっぱい虐げてくださいぃぃ…」

 女性選手は首輪をつけられ、そこから繋がっている鎖はザオが持っていた。

「な、なんだよあれ…」

「もしかして…私も不合格になったらあんな感じに…!?」

「どの道、俺達は人権をなくすってことかよ…」

 選手たちはその様子を見て、戦慄していた。そして、サーニャも

「なんだよあれ…女はあいつの家畜になるってのか…あのザオという男、ヤバい奴だ」

 サーニャはドン引きしていた。

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