第4章ー14「能力祭SideK 5」
「…っ」
キョウは鼻と耳を塞ぎ、なんとか耐えていた。そして
「はっ!」
キョウは毒の煙の中から、矢を放った。
「何!?」
選手はキョウの放った矢に当たりそうになったが、ギリギリのところで避けられた。
「な、なぜだ…一瞬でも吸えば死ぬと言われている毒の煙が…」
「僕は死なない…がっ…」
「俺の毒の煙で耐えられた奴は初めてだ…だが、それなりにダメージは受けているようだな」
「はぁ…はぁ…」
キョウは死こそは免れたが、煙によるダメージはあった。
「ならばこいつをくらえ! しびれ煙だ!」
選手は黄色の球を投げた。
「はあああああああああああああああああ!」
しかしキョウはその球に向かって矢を放ち、それは見事に命中した。
「な、なに!?」
しびれ煙はキョウと選手の間で爆発した。
「そうか。お前も遠距離系の武器か…だが、お前が矢を放ったところで俺の煙に翻弄されるだけだ」
選手は多数の球を構えていた。
「ま、勝敗なんてどうでもいいんだがな。俺はただ、この武器を使って連中が苦しむ様を見たいのさ」
選手はニヒルな笑みを浮かべた。
「実際、やつらは俺の武器で苦しんださ。あいつらは無様な悲鳴を上げたよ。はははははははははははははは…」
選手は思い出したかのように大笑いした。
「…」
「さぁ! お前もその無様な姿を見せやがれ!」
選手は紫色の球を投げた。
「…許せない」
キョウは矢を放つこともなく、避けることもなく、その場から動かなかった。そして
「な、なに!?」
なんと、キョウは紫色の球を掴んだ。
「僕は人の命を踏みにじるあなたを許さない…」
キョウの心は怒りに震えていた。
「はっ、この大会では人の命は動画に過ぎないんだよぉ!」
選手は黄色の球を投げた。
「さぁ、こいつで痺れるがいい!」
選手は今度こそ球がキョウに命中すると確信した。しかし
「…」
キョウは再び球を掴んだ。
「嘘だろ…」
選手は予想外のできごとに困惑するしかなかった。
「今度は僕の番です…」
キョウの目からは光が消えていた。そして彼の目の色は鮮やかなピンク色に輝いていた。
「アローレイン!」
キョウは矢を連続で矢を何本も何本も放った。放たれた沢山の矢は雨のように降り注いだ。そして、その矢達は一斉に選手に向かっていた。
「な、なんだこれは!? 避けようがない…く、くそおおおおおおおおおおおおおおおお!」
選手はヤケクソ気味に球を無造作に投げた。しかし、球は次々と矢に刺さり、全て選手のところで爆発した。
「ぐわああああああああああああああああああああ!」
「さっき僕の矢で球が爆発したのを見て、思いついたんですよ。普通に矢で翻弄することも考えていましたが、流石に迫って来る矢に全く対策をしない訳ではありませんからね」
キョウは選手が球を投げてくることも作戦の内だったのだ。
「はぁ…はぁ…」
選手は球の煙を何度もくらったことで、猛毒になり身体も痺れ動かなくなっていた。
「て、てめぇ…」
「これはあなたが今まで他の選手たちにしてきたことなんですよ。どうですかこの苦しみは?」
「俺は…お前を許さねぇ…絶対に…がああああああああああああああ!」
キョウは動けない選手にさっき手に取った球2つも投げつけた。
「許さないはこっちの台詞ですよ。…これが、人の命を弄んだ者の末路です」
キョウは最後の矢を放った。
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああ!」
そして、選手は力尽きて倒れた。
「お、終わった…」
キョウは一息ついた。彼の目にはいつの間にか光が戻っていた。
「おめでとうございます。あなたの勝利です」
レイはいつの間にかキョウの元へ来ていた。
「決勝戦に備えてこれをどうぞ」
レイはキョウに何かが入っている瓶を渡した。
「決勝戦でその体力は勝負にならないでしょう」
「あ、ありがとうございます…」
キョウは瓶の蓋を取り、口をつけた。
「一瞬で身体が軽くなった…」
「これはヴァルキュリア家に存在する特効薬です。これは一瞬で体力を回復する優れものです。本来は上からの指示で渡すのは禁止なので、内密にしてください」
レイはキョウの口に指をつけた。
「は、はい…ありがとうございます」
キョウは先ほど敵に翻弄したと思ったら、今度はレイに翻弄されていた。
「それではあなたは待機室に移動してください。私が案内します」
「は、はい」
(あの人…親切だな)
キョウはレイに流されるままについて行った。
今回でキョウ編は終わりです




