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第1章ー5「その名はラファ」

「…」

 水色のロングヘアの少女が虚ろな目で倒れていた。

(私…とうとうみんなに見捨てられちゃったなぁ…ははは…もう、私なんて誰も必要としてくれないよ…もう、生きていたってしょうがないな…)

 少女は意識を失ってはいたが、心の中で呟くことはできた。

「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

(モンスターの声だ…私、殺されちゃうのかな…)

 少女の近くに赤いモンスターが現れた。まだ少女には気が付いていないが、気がつくのも時間の問題である。

(でも、いいか…どうせ生きていたってなんの意味もない…し…)

「ぎゃ…? ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

(あっ、見つかっちゃった…)

 少女の存在に気づいたモンスターは少女の方を向き、彼女に牙を向いた。

(…怖いな。なんで怖いんだろう…死んでもいいのに…)

「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

(タス…ケ…テ…)

 少女は無意識に助けを求めていた。彼女は生きる必要はないと考えていたが、本当は死ぬのが怖い、生きたいと思っていたのだ。

「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「…」

 モンスターが少女に襲いかかろうとした、その時

「おんどりゃああああああああああああああああ!」

「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 駆けつけた卓生がモンスターにドロップキックを食らわせた。

(…え?)

「大丈夫か!?」

 卓生は今にもモンスターに襲われそうな少女を助けたのだ。

「駄目だ…意識を失っている…サーニャ、この子の体力回復を頼む」

「分かった!」

 サーニャは透明の魔法指輪をつけ

「回復魔法発動! 白のリングよ…我に力を…『ヒーリング』!」

 サーニャは少女の胸に手を当てた。これが回復魔法の発動方法なのである。

「この子、結構体力を消耗している…回復までには時間がかかりそうだな」

「サーニャ! モンスターは俺に任せておけ。お前はその子の回復に専念してくれ」

「ああ。言われるまでもねえ!」

 そして、卓生はモンスターに攻撃をしかけた。

「おらぁ! どりゃあ!」

 卓生はモンスターを拳で殴り、足で蹴るなどを3回ずつ合計6回行った。そして

「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお…」

 モンスターは力尽きた。

「よっしゃ! 倒したぜ!」

「早!」

「ところで、その子は大丈夫か?」

「ああ…意識は完全には戻っていないが、傷は回復させた」

「…そうか」

「とりあえず回復魔法はちゃんと使ったから、後は安静にさせれば意識は戻ると思う。だからまずはこの子を私らの部屋のベッドで休ませよう」

「そうだな」


▼タクオは100ポイント獲得した

▼サーニャは100ポイント獲得した

▼タクオは3000G獲得した

▼サーニャは3000G獲得した。

▼タクオは美少女を獲得した。


「…」

 少女は、卓生とサーニャが暮らしている寮の部屋のベッドで横になっていた。

「それにしても、あの子は一体何者なのだろうか…」

「さあな。ただ、少なくとも1人でいたということは、パーティーから追い出されたことは分かる。しかも瀕死の状態で放置されてな」

「なんだと…」

「ま、まああくまで推測だがな」

 サーニャは自分の推測によって怒りはじめた卓生を宥めた。

「…例えあの子が無能だとしても、瀕死の状態でモンスターの目の前で放置とか…人としてゴミクズ野郎だよ…許せねぇ…」

「お、おい…」

「もしあの子のいるパーティーの連中に会ったら…俺がぶっ殺してやるよぉ! ああああああああああ!」 

 卓生は怒りが頂点に達し、発狂した。

「うるせえ! いいかげんにしろ!」

「痛っ…なにするんだ!」

 サーニャは卓生を思い切り殴りつけた。

「少しは落ち着け。私の推測だって言っただろ。もしもそれが事実だったら、あの子のパーティーに喧嘩を売りに行くことは約束させてやる。だから今はそんなことより、あの子の心配をしろ」

 サーニャは厳しく卓生を戒めた。

「…悪かったよ…」

 卓生はサーニャに殴られた右頬をおさえながら、小声で謝罪した。

「とにかく、この子が目覚めたら色々聞こう。その方がいい」

「そうだな」

 2人がそう会話しているうちに…

「んっ…あれ? 私はなにを…?」

 少女が目を覚ました。

「あっ、気がついたみたいだ」

「大丈夫だったか?」

 2人は一斉に少女に話しかけたが

「えっと…あなた達…誰ですか? それと…私はなぜここに…?」

 少女は予想外過ぎる出来事におどおどしていた。

「あっそっかぁ…まずは自己紹介をしなきゃだな。俺は桐井卓生だ」

「私はサーニャ=スア。あんたは洞窟で倒れていて、モンスターに襲われそうだったところを助けたんだ」

 2人は自己紹介と事情の説明をした。

「そうだったんですか…ありがとうございますスアさん…イキリさん…」

「…」

「あっ、私の名前はラファ=クアーです」

 少女、ラファはお礼を言ったが、見事に卓生の名前を間違えたため、卓生は少し複雑な顔をした。

「いやいや、私達は当たり前のことをしただけだ。それにしても、どうしてラファは洞窟で倒れていたんだ? 話せる範囲でいいから、私達に話してくれ」

「…」

 ラファは黙っていた。

「大丈夫か?」

 サーニャはラファの心配をした。

「あっ、大丈夫です。では、わけを話します」

 ラファは沈黙を破り、話を始めた。

「私はあなた達と同じクエストをパーティーの仲間と共に受注し、行動をしていたのですが…」


       ※


『はぁ…はぁ…』

 ラファはモンスターに手も足も出ず、ボロボロの状態になっていた。

『おいてめぇ! なに手こずってんだよ!』

 黒髪の男はモンスターから離れ、遠くから野次を飛ばした。

『だって…私は防御しか使えない…』

『だからよぉ! こうしてお前を鍛えるためにこのダンジョンを選んだんじゃねぇかよ!』

 金髪の男はラファの反論を潰した。

『ほら! モンスターは後ろにいるよ。早く倒しちゃいなさい!』

 黒髪の女性はモンスターに囲まれたラファを煽った。

『びぎゃあああああああああああああああああ!』

『そぎゃあああああああああああああああああ!』

『ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

 モンスター3匹はラファを囲んだ。

『あ…や…いや…』

 ラファは恐怖でまともに喋れなくなり

『ああああああああああああああああああああああ!』

 ラファはモンスター3匹に襲われた。


       ※


「モンスターを1匹も倒せずにやられてしまい…それで役立たずと言われて置いていかれてしまって…」

「…」

 ラファの話を聞いた直後、卓生は震えていた。

「やっぱり許さねえ…ラファのパーティーのやつら…」

「おい、卓生…」

「あいつらの住所を特定して、街中のやつらに拡散して潰してやる! 大丈夫だ! 俺はキレると10人のヤンキーをぶっ飛ばすくらいの力はあるからな!ははははははははは!」

 卓生の怒りは頂点に達し、わけもわからずイキリ出した。

「だから落ち着けタクオ!」

 サーニャはまた卓生を戒めた。

「ていうか、ジュウショ…? ってなんだよ。わざわざそんな意味不明なことをしなくても、パーティーの名前さえ知れば決闘という形で戦うことはできる」

「何!? それは本当か?」

「ああ」

 卓生はサーニャの発言によって少し落ち着きを取り戻した。

「まずはラファのパーティーを教えてくれ」

 サーニャはラファに彼女の所属しているパーティーの名前を聞き出した。

「はい…名前はシャイセです…」

「なんだと…」

 サーニャはラファの所属パーティーの名前を聞いた直後、目の色が変わった。

「シャイセってのは悪名高い闇パーティーじゃねえか…なんでそんなところに…」

「私はそもそもシャイセと知らずに入ってしまったんです…なんかみんな仲よくとか言ったり、初心者歓迎とか言ったり…」

「そうか…」

 サーニャは少しの間に沈黙をし…

「シャイセって言うのは、詐欺をしたり、他のパーティーに無理矢理決闘を申し込んだり、戦いを初心者に任せてしかもその初心者の報酬を取りあげたり…まぁ色々ヤバいことをしている組織ってところだな」

「…」

 ラファはサーニャの話を聞いた後、暗い顔をした。

「なぁ、サーニャ! 早くそいつらに決闘を申し込みたい! できないか?」

「慌てるな。このパーティウォッチで決闘を申し込めばいい」

 サーニャは卓生の右腕につけられているパーティウォッチを指差した。

「決闘も申し込めるのか?」

「ああ。そして、決闘に勝った方のパーティは負けた方にできる範囲での言う事を聞かせることができる」

「おお…それはいいな」

「だろ?」

「じゃあ、俺はまずシャイセのやつらから金とポイントを貰い、1人ずつ殴ってもらい未来永劫俺の奴隷にして、ラファを傷つけた分の報復を受けて貰って、そして…」

「待て。相手にお願いをするのは1人につき1つまでだぞ」

 サーニャは悪い顔をしている卓生を戒めた。

「それと、決闘の前にラファにはうちのパーティーに入ってもらわなければならないだろ」

「あれ? 一時的に保護するんじゃないのか?」

「あのまま野放しにしていたら、あの子がなにされるか分からないからな。安全な場所を確保するために入って貰うんだ」

「それもそうだな…」

「さ、そうと決まったら集会所に行くぞ。ラファ、歩けるか?」

「大丈夫です。さっきよりだいぶ楽になりましたので…」

 ベッドで横になっていたラファはゆっくりと起き上がった。

「よし、では行くぞ」

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