第4章ー11「能力祭SideK 2」
「僕は…死体から武器を作らなくてはいけない…人の命を」
キョウは目に涙を浮かべ、そして身体を震わせていた。彼は人を殺したことがなく、ましてや命を道具に使ったことがないからである。
「よっしゃ! 完成だ!」
キョウの隣にいた選手は早くも武器を完成させた。そして、彼は武器をレイの元へ持って行った。
「どうですか!?」
選手はレイに武器を見せた。しかし
「ふん」
「ああ!?」
レイは武器をへし折り、地面に叩きつけた。
「貴様は武器に死体を使っていないな…」
レイは先ほどの丁寧な口調から一転し、威烈な口調に変貌していた。
「くっ…人の命なんか簡単に使えっかよ! 馬鹿!」
「人の尊き命を使ってこそが真の武器を作ることができる。犠牲になった命を使わずして何が戦士だ」
そして、レイの目は青色に光った。
「があああああああああああああああああああああ!」
そして、レイの目を見た選手は身体が灰になり、消滅した。
「なっ…!?」
「消えた…!?」
「あなた達もちゃんと全ての材料を使い、武器を生成しない限り彼のようになりますよ」
レイは口調を戻し、選手たちに忠告した。
「く…くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 人の命なんか使えるかよ!」
1人の選手はこの異常な競技に耐えかね、逃げ出した。
「人の命を武器に使うか…こいつは面白い。この命が武器の糧となりどのような力を見せてくれるかワクワクしてきたぜ…」
一方で人の命を意に介さず、自分の武器作りを優先しているサイコパスな選手もいた。
(みんなそれぞれ考え方は違う…今まで自分の選択を決めることのなかった僕は一体なにができるのでしょうか…?)
キョウはとても悩んでいた。今の自分は一体何をしたらいいのか。そして自分の選ぶ道は正しいのかということを。
「よっしゃ! 武器ができたぜ!」
そう考えているうちに、武器の完成した選手はレイに見せに行っていた。
「こいつはどうだ? すべての材料を使ったぜ!」
レイは選手の武器から受け取り、まじまじと見ていた。
「…合格です。この武器は全ての素材が噛み合っています」
「よっしゃあ!」
レイからの合格通知を聞き、選手は喜び、ガッツポーズをした。更に
「…合格です」
「しゃあっ!」
「…合格です」
「やった!」
次々と合格者が現れた。
(僕にできることは一体なんだ…? 死体から武器を作ること…? それとも…やめること…? そもそも、僕はどうしてこの大会に参加したんだっけ…?)
キョウは他の選手達が次々と武器を完成させたことに焦りを感じ、ますます悩んだ。
※
『サーニャは色々あって聖ダイトウ学園に入学したがっているんだが、どうやらあいつは1人で参加するつもりらしい。どうやら俺には難しいことは向いてないからだってよ』
『俺はあの時、答えは出なかったけどサーニャといたい! 本当は俺も能力祭に参加してサーニャと同じ学校へ行きたいんだよ!』
『だったら、私も参加するよ!』
『僕もです! 僕は、自分の能力がどんなものか確かめたいです!』
※
「…」
キョウは自分が能力祭に参加するきっかけを思い出した。
「そうか…僕は自分の能力を確かめたくて参加したんだ…なんで忘れていたんだろう…」
キョウはようやく自分の使命を思い出した。
「犠牲者の方には申し訳ありませんが…使わせていただきます!」
キョウはようやく武器を生産し始めた。
「金…銀…銅…鉄…そしてこの死体を掛け合わせる!」
キョウは全ての材料を混ぜていた。
「ですが作る武器のタイプはどうしましょう…銃か、剣か、オノか…弓矢にしましょう!」
キョウは作る武器を決め、作業に取り掛かった。
「はあああああああああああああ…」
彼は武器を作っている自分の手に気合を込めていた。
「僕は自分の能力を確かめたい…だから、武器作りも恐れず、そして殺し合いも恐れない…」
キョウは自分に言い聞かせるようにして呟いていた。
「…まず弓は完成しました。次は…矢ですね…」
弓を作り終わったキョウは矢を作る作業に取り掛かった。
「矢は消費する武器…だから、なるべく多めに作らないと…」
キョウは次々に矢を作った。矢は人間の死体をベースにしていた。そして、矢の本数はいつしか100本にまでなっていた。
「そして材料には入っていないけど…」
キョウは自分の指を小さいナイフで切り、自分の血を武器に加えた。すると、武器が光輝いた。
「おお…」
キョウは光輝いている弓矢を見て、感心していた。
「あっ…これも作らなきゃ…」
キョウは思い出したかのように忘れていた何かを作り始めた。
「はあああああああああああああ!」
キョウが手の平から矢筒を作りだした。
「これがないとまともに戦えないですからね…」
そして、キョウは矢を矢筒にしまった。
「よし、これで完成です! 後は結果を聞くだけです!」
キョウは自分の武器を完成させ、レイのところへ持って行った。
「ど、どうですか…?」
キョウは恐る恐るレイに武器を渡した。
「…合格です。全ての材料を上手くかけ合わせた他、あなたなりのアレンジが加えられていますね…では、この武器を次の競技に役立ててください」
「ありがとうございます!」
キョウはレイから武器を受け取り、彼女に一礼した。




