第4章ー10「能力祭SideK 1」
「ああ...緊張してきた...」
キョウは建物の中で待機していた。彼はとても緊張していた。
「まず最初の2つの建物のところでどっちがどっちか分からなかったし...」
キョウもあの建物トラップを受けたのである。結果は既に出ており、キョウが入った方は取り敢えずは大丈夫だった。
「それにしても生産スキルの競技って一体何をすればいいのやら...」
キョウは緊張の他、自分の得意スキルの競技の未知さに悩んでいた。その時、何者かが部屋に入ってきた。
「私はレイ。この生産スキルの案内役をする者です」
部屋に入ってきたのは女性だった。
「この生産部門の競技ですが、他の競技同様、最後まで生き残った人が勝ちとなります」
レイは説明を始めた。そして、選手達は真剣に話を聞いていた。
「そして注意事項です。他の競技は3、4つありますが、この生産部門だけ2つの競技になります」
「他の競技、4つくらいだったんだ...」
「知らなかったのか? お前、意識してなくてもアナウンスで聞こえてきただろ」
「そ、そうでしたっけ...?」
キョウは他の選手に突っ込まれたが、とぼけて聞き流した。
「もう1つ注意事項があります。1回目の競技では協力な武器を作れた上位10名が合格基準になります。そして、協力2回目の競技ではその武器を使い戦いをしてもらいます。そのため、生き残った人数が他の部門では2人なのですが、生産部門だけ生き残った1人が合格者となります。みなさん、頑張って生き残ってください」
「な、なに!?」
「ま、まさか1人...?」
「しかも自分で作った武器で...?」
「...殺し合いか...」
選手達はレイの宣告に動揺していた。その反面
「よっしゃ! これで人をバンバン倒せるぜ!」
「俺の武器がいかに優れているか確かめるチャンスだな」
「へへ...これで日頃の鬱憤を晴らせる...」
「人殺しか...最高のゲームだな」
危険な思想を持った選手達は喜んでいた。そしてキョウは
「どうしよう...僕、協力な武器を作れる自信がない...それに殺し合いって...どうしたらいいの...」
彼はますます緊張し、悩んだ。
「因みに、隣の部屋の人たちにはこう伝えておきました」
「!?」
「今すぐここで武器を作り殺し合いをしなさいと...」
レイは残酷な言葉を口にした。
「そして、生き残った1人が隣の部屋に来いと...」
そして、扉が開き、血まみれの男が現れた。
「おい! 俺が生き残りだ! 立ち向かっていったゴミ共をぶっ倒したぞ!」
「そうですか。おめでとうございます」
「!?」
レイは血まみれの男を剣で斬りつけた。
「な...なぜ...」
そして、男はそのまま力尽きた。
「!?」
「な、なんだよこれ...」
「これがフェイクの建物の中に入った人間の末路ですね。私の言葉を疑いもせずに戦いを始めるなんて。全く。人間は愚かな生き物だ」
レイは丁寧語の中に人間という生き物を見下している心と冷徹な心が入り混じっていた。
「ざっけんな! 俺たちにこんなふざけたことをさせようってのか!」
選手の1人がレイに突っかかった。
「残念ながら私は人間ではございません。兄のアン・コークと同じ阿修羅という種族なのです。だから、今の姿は仮の姿でございます。私の本名はレイ・コーク...つまりコーク四天王の1人です」
「!?」
キョウはレイの本名を知り、驚いた。
(同じだ...大賢者に変装していたアン・コークと同じ阿修羅...)
「ですが、私の兄は何者かによって殺された。その何者かの正体は私は知りませんがね」
レイは冷静な態度の中にどこか今にでも取り乱しそうな怒りに塗れた気持ちが入り混じっていた。
「私は兄弟に情などはありません。しかし、もしもこの中に仇がいるのなら、抹殺も考えています。しかしこれはあくまで競技。私が仮に見つけたとしても抹殺するのはこの能力祭が終わってからです。能力祭開催中に殺すことはございませんのでご安心を」
レイは選手達に会釈をした。
「それでは、最初の競技を始めましょう。あなた達は建物から出てください」
レイは扉を開け、選手達を誘導した。
「それでは、ここにある鉄、金銀銅、そして隣の部屋にある死体を使って武器を生産してください」
レイは律儀に1セットずつ並べてある鉄と金銀銅の側にそれぞれ隣の部屋から引っ張り出してきた死体を置いた。
「おい! 死体から作れってのか!?」
「その通りです。全ての材料を使わないと失格になります。誤魔化しても無駄です。成分を調べる機械を予め用意していますので」
レイは厳しい言葉を口にした。
「おいおい...死体を使わなきゃいけないって、無茶なこと言うぜ」
「てか、死体からどうやって武器を作るんだ...?」
選手達は戸惑うしかなかった。
(...はぁ...はぁ...はぁ...)
キョウは並べられた死体を見て、怯えていた。更にあまりの残酷さにパニック状態に陥っており、過呼吸になっていた。
(僕は...これから武器を作らなきゃいけないの...?)
キョウは気がついたら目から涙を流していた。
「それでは、生産部門1つ目の競技を始めましょう。みなさん、位置についてください」
レイは選手たちがまだ準備が整っていないにも関わらず、競技を始めようとした。
今回は割とグロ要素がありましたが、私はリョナラーでもカニバリストでもありません。




