第4章ー8「能力祭SideR 3」
「さて、次の競技を始めよう…」
ジ―ルは5名を次の競技の場所へ案内した。
「君達はここで挑んでもらおう。そして、生き残った2名が合格者だ。最も、不合格者は死しかないがな…」
「…」
ラファは未知なる次の競技に緊張していた。
「まぁ、この競技は他の部門と共通している。つまり、ここで総合的な能力を図ると言ってもいい」
ジ―ルは競技の特徴を説明した。
(まあ、総合的な能力を図るのは事実だが、そんなのは二の次だ。本当はこの能力祭で我々ヴァルキュリア家の血を引く者がいるか確かめる競技って言ってもいい…)
※
「おじい様…それは本当なのですか!?」
ジ―ルは驚きの声をあげていた。彼が驚くようなリアクションを取ったのは彼の祖父、ゼーレ・ヴァルキュリアの発言が元である。
「ああ。本当だ…」
「後継ぎ候補の父上や私ですら知らないあの実験が…」
「その通りだ。あの実験について2、3年後を継ぐであろうアームだけに教えようと思ったんだが、貴様ももう大人だ。アームの後継ぎ候補である貴様にも教えて差し上げよう…」
「あ、ありがとうございます!」
「では、詳しく話すとしよう…」
ジ―ルは深々とお辞儀をした。そして、数秒経った後に彼が頭を上げた後、ゼーレは重い口を開き、話を始めた。
「最近、我々ヴァルキュリア財閥の間で実験が行われているのは先ほど話したろ?」
「は、はい…!」
「貴様には話してはいないが、我が息子アームに兄弟がいたのは知っているか?」
「いえ…全く…」
「知らないのも無理はない。あいつは…ルーフはアームと俺を殺し、謀反を起こそうとしたのだからな。当然それはバレ、あいつは殺された」
「それで…それが実験とどのようなご関係で…?」
「あいつは謀反を起こしたとはいえ、立派なヴァルキュリア家の一員だ。だから、殺したあいつの臓器を実験の材料として使い、別世界の人間にその臓器を与えることでヴァルキュリア家をますます発展させるのだ」
「そ、そうなりますと一体どうなるのですか…?」
「最強の戦士が誕生し、我が家も安泰ということだ…ぬははははははははははははは…」
ゼーレは狂気じみた笑い声をあげた。
「だが、迂闊だった…」
「迂闊…?」
「昨日早速ルーフの臓器を使い、実験を始めたがあいにく授かった者が行方不明なんだ。そして我々は効率よく探す方法を思いついた」
「方法…?」
「能力祭が行われることを貴様はご存じか?」
「は、はい」
「そこで貴様には防御部門の案内役をし、そこで臓器を継ぐ者を探し出して欲しい。心配するな。他の部門の案内を務める者にもそれぞれ頼んである。そして、全ての部門で共通する競技があるのだが、そこでルーフの臓器を継ぐ者がいるかどうかを確かめられるいいポイントだ。例え貴様が見つからずとも、他の連中が見つけ出すからそう気追うでない」
ゼーレは作戦内容をジ―ルに話した。
「でも、万が一そいつが参加しなかったらどうするのですか?」
「それは大丈夫だ。ルーフは戦闘狂だ。必ず来る…では数ヵ月後頼んだぞ」
「はい!」
※
(なんてことだけど、格闘部門の奴からは返事が全く来ない…そして他の部門の奴らからもまだ始めていないの連絡が多い…これじゃあ見つからねえ…)
ジ―ルはため息をついた。
(流石にこのままじゃあ、じいさんの言う事も疑わしくなってきたぜ。他人の臓器があるからってそいつの性格がそのまま反映される訳じゃないだろ…)
ジ―ルは自分の祖父の無謀すぎる策に心底呆れていた。
(まぁいい。もしかしたらこっちにいるかも知れない可能性はあるから、さっさと始めてしまおう)
そして、ジ―ルは指を鳴らした。すると、5本のドリルがでてきた。
「な、なんだこれ…」
「でけえドリルだ…」
「これを防御スキルで防げっていうのか…?」
「ご明答だそこの餌食」
ジ―ルは選手の一人の言葉を拾い、彼を指差した。
「このドリルを防御スキルで防ぎ、ドリルを壊すことができたやつが合格だ。因みに格闘部門では格闘技でドリルを壊したやつが合格者だ」
ジ―ルはそのまま流れでルール説明をした。
「待て。格闘技で壊せたやつはいるのか!?」
「もし本当にそんな奴がいるなら見てみたいぜ」
「ていうか、防御スキルで壊すなんて無茶だろ」
「黙っていろ!」
「「「「「!?」」」」」
ジ―ルは選手達の野次に近い言葉に苛立ちを隠しきれず、声を荒げてしまった。
「いいか? よそはよそうちはうちだ。お前らお前らでこの競技を突破してみろ。他の部門の連中なんか気にかけるな」
ジ―ルは少し落ち着きを取り戻し、選手たちを諭した。
「俺だって知らねえよ…もし格闘スキルでドリルを壊した奴がいたらとっくに連絡は来ているはずなのに、なんで来ないんだ…!」
ジ―ルが苛立っていた理由は格闘部門の案内人から連絡が来ないことである。尚、彼は卓生とハヌマーンに殺されたため、どのみち連絡は来ないが…
「私…大丈夫かな…」
ラファはジ―ルからルールを聞いてから競技への不安がよぎっていた。そして、彼女はジールのつぶやきが耳に入ってしまっていた。
「格闘部門から連絡が来ないって言っていたけど…まさかタクオ君…!? さっき幻で出たのももしかして…」
更にラファは卓生の安否が気になり、ますます不安になっていた。
「タクオ君…タクオ君…」
そして、その不安は心の奥に収めておくには大きくなり、ラファの目から光が消えていた。
SideRとか言っていますが、今回はジ―ルの回想や心理描写などが多くラファの出番がかなり少ないです。これはタイトル詐欺ですね




