第4章ー6「能力祭SideR 1」
ラファは2つの建物の前で悩んでいた。
「黒い屋根をした部屋で待機しててって言われたけど...」
ラファが見つめていた建物は屋根だけは黒でそこ以外は全て白色の建物と屋根と建物が全て黒色のものであった。
「どっちも黒い建物だよね...どうしたらいいんだろう...」
ラファは考え込んでいた。そして、ラファが考え込んでいる時
「え!?」
全体が黒い建物から唐突にバズーカが発砲された。ラファはすぐさま防御スキルを出したため、事無きを得た。
「何今の...?」
ラファは戸惑いを隠せなかった。その時、黒色の建物から囁き声が聞こえてきた。
「おい! 何発砲してんだ! こっちが偽物だってバレんだろうが!」
「す、すみません...」
「ったく、中が防音でよかったぜ。危うくここに集まった負け犬共をヴァリュキリュア様に捧げることができなくなるとこだったぜ...」
ラファはこの囁きが聞こえていたようであり
「黒い建物は偽物ね...じゃあ、正しくはこっちか」
ラファは黒い屋根をした白い建物に入っていった。彼女はしばらく建物の中で待機していると1人の男性が現れた。その男性は薄い紫色の短い髪型をしていた。
「私はジール・ヴァルキュリア...現ヴァルキュリア当主の孫にして、この能力祭のオーナーも務めている者だ」
「ヴァリュキリュア...」
ラファはビールを警戒した。更にジールは自分の素性を晒していたのだ。
「君達は運がいい。何せ最初の試練で生き残ったのだからな...」
ジールは指を鳴らした。すると、建物の外から何やら悲鳴が聞こえた。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぎびゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ラファはその悲鳴を聞き、怯えていた。
「ふふふ、今の悲鳴はフェイクの建物に入ったやつらだ。彼らは我が祖父、ゼーレ・ヴァリュキリュアに貢献するだろう」
ジールは選手たちには目もくれず、恐怖を煽るばかりであった。
「というわけで、まずは最初の競技だ。お前ら、ここを出ろ」
選手たちはジールに案内され、建物から出た。
「これは...」
選手たちの目の前には銃が100丁ほどあった。
「これは弾丸を防御スキルで防ぐ競技だ。この弾丸で1発も打たれなかった者が生き残れる。では、始めるとしよう」
ジールは合図という形で指を鳴らし、それにより多数の銃から弾丸が放たれた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「くそぉぉぉぉぉぉぉ!」
余りに突然過ぎたため、対応し切れる選手が少なくないようで、防御スキルを出すまでもなくダメージを受け、倒れる者が続出した。
「え、えい!」
ラファはこれまでの戦闘の経験から意図しなかった出来事に遭遇した時の対策はできていたようであり、先程ジールが指を鳴らした直後、既に防御スキルを使っていたのだ。
「くっ...1つ1つの弾丸の威力は弱いけど...これが何発も来たらどこまで持つか...」
ラファは不安になりながらも弾丸を防ぎ続けていた。尚、今のところ生き残っている人数はラファを含めて100人中50人である。彼らは先の行動を読めていたのだ。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
選手たちも弾丸を懸命に防ぎ続けていた。しかし
「な...なんだと...!? ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
弾丸を防ぎきれずにそのままバリアが割れ、弾丸を喰らってしまう者もいた。そしてラファも
「ぅ...私のバリアにヒビが...」
彼女の防御スキルも破れかかっていた。
「でも...私は諦めない!」
そして、ラファの意思に反応するようにバリアに光が入り、ヒビも回復した。
「なんだこれは!?」
ジールはラファの防御スキルが回復したことに驚いていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そして、更にラファが力を込めると、バリアが光り輝き、弾丸を防ぐだけでなく弾き返すということもできた。そして、弾き返ってきた弾丸は銃の中に戻り、銃が爆発した。
「あ、あれはなんだ!?」
「あの女か!? 銃を破壊したのは...」
他の選手はラファの防御スキルに驚きを隠せなかった。
「銃がぶっ壊れるなんて...あれは選手が必ず死ぬように仕向けた毒を塗った弾丸なんだぞ...あれを一蹴するとは...」
ジールは逆恨みに近い怒りに震えていた。その様子には目もくれず、ラファは次々と弾丸を弾き返していた。流石に全ての銃を破壊はできなかったが、一部の銃がラファの弾き返した弾により爆発したのである。そして、とうとう弾が尽きた。
「ちぃっ...くそぉ...おめでとう。合格者は君達40名だ」
ジールは怒りを抑えつつも合格者を讃えた。
「よし、君達には次の競技も受けてもらおう。ま、今の奴とはそんなに変わらないがな。とりあえず、あの中で待機していてくれ」
ジールはニヒルな笑みを浮かべつつ、次の競技の案内を始めた。
※
「すごいな君! どうやって弾丸を弾き返したんだ!?」
「あなた凄いわ! あんなの私に真似できないよ!」
ラファは他の選手から防御スキルを褒められ、たじたじになっていた。
「えっと...本当にいつの間にかそうなってたっていうか...まぁ、強い心かな」
ラファははぐらかすような返答しかできなかった。
(でも...本当にそうなんだよね。あの時、私誰を思い浮かべたかな...)
そして、 ラファの頭の中には桐井卓生の顔が浮かび上がってきた。
(いやいやいや! 確かに私は卓生君のこと大好きだけど...でも、恋愛感情なんて...)
ラファは頰を赤くしながら、悩んでいた。




