第4章ー4「能力祭SideT 4」
一週間ぶりの投稿です。お待たせしてすみません。
「次の競技はこれだ。こいつを叩き壊してみろ」
中年が指を鳴らすと、5つのドリルが姿を現した。
「なんだよこれ…」
「こいつを手で壊すのか…?」
選手たちは困惑していた。
「そうだ。こいつを壊さなければ次へ進めない。ま、死のうが諦めようが俺には関係ないがな」
「こいつ…」
中年の無神経過ぎる発言に対し、卓生は静かなる怒りを現していた。
「…」
それに対しハヌマーンは黙ってドリルを見つめていた。
「さぁ、始めよう」
中年が手を叩いた瞬間、ドリルが動き出した。こうして、競技が始まった。
「う、うわああああああああ!」
1人の選手はヤケクソ気味にドリルを手の平で防いだが、焦り過ぎるあまり能力を出さず、ドリルが手を突きぬけ、大量の血が溢れ出た。
「あ…あ…あああああああああああああああああああああああ!」
そして選手は自分の手を見つめ、発狂した。その間にドリルは彼の身体を貫いてしまった。
「はっ! はっ! はっ!…」
もう1人の選手は能力を駆使し、ドリルを殴りまくった。しかし、ドリルの回転の速さと硬さについて行けず、ドリルを壊すどころか彼の手が壊れて行った。
「も、もう能力は使えない…くそおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
選手はヤケクソになりドリルに向かって突っ込んで行った。当然、これで奇跡が起きるわけではなく、彼はドリルに身体を貫かれてしまった。
「あ…あ…」
血まみれた選手を見た3人目の選手は恐怖を感じた。
「ああああああああああああああああああああああ!」
そして、選手は試合を投げ出し、ドリルから逃げて行った。
「おっと、試合を放棄するのかい?」
「頼む! 失格にさせてくれ!」
選手は中年に向かって土下座をした。しかし
「駄目だ。これは能力を競う大会。最大限に能力を発揮していない奴が途中で投げ出すことは許されない」
中年は懇願する選手を冷たく突っぱねた。
「あ、あんたああああああああああああああああああああああああ!」
そして、選手は追いかけて来たドリルに身体を貫かれた。
「アームシールド!」
「ガードインパクト!」
死亡した3人の選手と裏腹に、卓生とハヌマーンはドリルを防いでいた。
「だが、防ぐだけじゃだめだ…」
「こいつはぶっ壊さなければならない…」
「その通りだ。ただドリルを防ぐだけじゃだめだ。こいつを破壊しなければいけない」
中年はドリルを防いでいる2人の様子をのうのうと見つめていた。
「さぁ、どうする? こいつはどんな防御技だろうが突きとおす特注品だ。お前ら程度の防御技なんてする壊してしまう! ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!」
中年は汚い笑みを浮かべた。
「おいあんた。今、このドリルはどんな防御技も防ぐと言ったよな」
「え、ええ」
「じゃあ、どんな防御技も突き通すこのデカブツにどんな技をも防ぐ防御技をぶつけたらどうなる?」
「はっ!」
「アームシールド改!」
卓生は防御技を強化し、ドリルにヒビが入った。
「防御技を出しながら攻撃技を出すことはできる」
ハヌマーンは衝撃波で作っていた壁から更に衝撃波を弾丸のように何発も出し、ドリルにぶつけた。そして、ドリルに段々とヒビが入って行った。
「な、なんだとおおおおおおおおおお!」
中年はその様子を見て、困惑した。
「「はあああああああああああああああああああ!」」
2人はドリルにどんどんダメージを与えた。そして
「あ…あ…」
とうとうドリルが破壊された。そして、その様子を見た中年は膝から崩れ落ちた。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…」
ドリルを壊すには相当な体力を使ったようで、卓生とハヌマーンは焦燥しきっていた。
(くそっ…この競技で全員を殺し、ヴァルキュリア様に施しをさせるつもりだったのに…くそっ…!)
中年は悔しさのあまり、両手を地面に叩きつけた。しかし、すぐに気持ちを切り替え…
「お。おめでとう。お2人さん。この競技は本来3人が生き残る予定だったが想定外のことが起こってしまった…だから、次の競技はなしで2人は格闘部門の合格者だ」
中年はバーコードが載っている2枚の紙を1枚ずつ2人に渡した。
「おい。生き残れるのは1人じゃないのか?」
「実は能力祭のルールは決勝戦の準備のために敢えて2人残すのだ。そして、これは合格パスだ。こいつをパーティウォッチに読み込ませればそれぞれの部門で合格したことが証明されることが刻まれる」
中年は説明をした。それを聞いた2人は悪い顔をした。
「へぇー…」
「ふーん…」
「ということは、責任者のお前をボコそうが殺そうが…」
「この証明書さえあれば決勝戦に参加できるってことだよな!」
「なっ…!」
卓生とハヌマーンはすぐさまバーコードをパーティウォッチに読み込ませた。そして、卓生は剣を取り出し、ハヌマーンは両手を前に突き出した。
「な、なにをするんだ…」
「「こうするんだよ!!」」
2人は中年に襲いかかった。
「ヴァルキュリアソード!」
「ヴァイスアッフェ!」
「ぐはああああああああああああああああああああ!」
中年は卓生に胸を貫かれた。そしてすぐ後、ハヌマーンに手足を握られ、そしてそのまま腕や足を握り潰された。
「く…き、貴様ら…」
「さぁ、不合格者には去って貰おう」
卓生が指を鳴らし、2人のいる床が上に上がって行った。
「ま、待て…!」
「おっと、このままこの場所でのうのうと暮らされると困るなぁ…」
ハヌマーンが口笛を鳴らした途端、さっき死んだ選手たちがゾンビのように生き返り、中年に襲いかかった。
「う、うわあああああああああああああああああ…」
そして、中年の悲鳴を最後に2人は地上に着いた。
「すっきりしたな」
「別にお前のためにやったわけじゃない。たまたま倒すやつが一緒だっただけだ」
ハヌマーンは眉毛をいじった。
「!?」
その様子を見た卓生は豆鉄砲をくらったような顔をした。
「羽沼…?」
卓生はハヌマーンをある人物と重ねていた。




