第4章ー2「能力祭SideT 2」
「ではまず、最初に挑戦する選手は…!」
中年はルーレットを回した。そして、しばらくするとルーレットが止まった。
「よし! 最初に挑戦するのはブモ・ゲカ! お前だ!」
ブモ・ゲカと呼ばれた男は、ぎこちなくパンチングマシンのもとへ歩いて行った。
「それでは、お願いします!」
「い…いくぞ!」
ブモはパンチングマシンに自分の拳を叩きつけた。しかし
『100kg』
150kgとは程遠い記録だった。
「どうやら君は合格ラインを達成できなかったようだね…すぐに立ち去るんだ!」
「は、はい…」
ブモが立ち去ろうとした時
「いや、待て動くな」
「え?」
「お前が動かんとも、勝手に退場できるからな…」
中年がポケットからスイッチを出し、ボタンを押した。すると、ブモがいた床が某細か過ぎるバラエティのように開き、ブモは奈落の底へ落下した。
「「「「…」」」」
卓生を含む選手達はその様子を見て絶句した。
「ふふふ…心配することはない。落下した者はヴァルキュリア様…いや、あるお方に施しをしたことになる…」
「ヴァルキュリア…?」
卓生はあるキーワードに反応した。
(もしかして、この大会がヴァルキュリア財閥とグルなんじゃ…いや、考えるのはよそう。優勝すれば色々分かるかも知れないからな)
卓生はすぐに自分の考え事を押し殺した。
「では次はジェラール・ボイ! お前だ!」
ジェラールと呼ばれた男は、パンチングマシンに拳を叩きつけた。
『160kg』
記録は150kgのノルマを超えていた。
「よし、君は次の競技へ進めるな」
中年はジェラールを褒め、彼の肩を叩いた。
「では、君はあの建物で待っていなさい。さぁ、次は…」
こんな調子で競技は進んで行った。ここまで30人ほど競技が進んだが、そのうち150kgを超えたのはたったの10人だった。尚、新記録は300kgである。そして最低記録が80kgである。
「はぁ…待っている間だりい…それにあれだけの奴らがやったのに150kgを超えたやつがこんなに少ないなんてな…」
「次に挑戦するのはキリイタクオ! お前だ!」
「え…あ、はい」
卓生はボーっとしている間に自分が呼ばれたため、一瞬動揺したがすぐに気持ちを切り替え、パンチングマシンの元へ行った。
「見ろよ。あんなヒョロいのが格闘スキルを使うのか?」
「幾らなんでも150kgはいかないだろ。せいぜい50kgだな。ひひひひひ…」
「あいつは最下位確定だな。はははははははは」
卓生は自分を嘲笑う声に対し、苛立っていた。そして
「ふんっ!」
卓生はその苛立ちを力に変え、その力をパンチングマシンにぶつけた。
「こ、こ、これは新記録だ!」
中年は驚いていた。卓生の記録はなんと500kgだったのだ。そして、この記録に多くの参加者が驚いていた。
「なんだよこの記録…」
「あんなヒョロヒョロなやつから…」
「ありえん…」
そして、卓生を馬鹿にする者もいなくなった。
『タクオ、怒りを力に変えるとは考えたな』
「昔、父さんから言われたことを参考にしただけですよ。今のは辛うじて暴走を抑えられたので、もし一歩間違っていたら…」
『でも、力を抑えられたことに変わりはない。この調子で頑張るんだ』
「はい!」
リューは卓生を激励した。そして
「よし、君は次の競技へ進める。じゃあタクオは他の合格者がいるあの建物で待機だ」
「はい」
卓生は中年に言われ、近くの建物に入った。建物の中には先ほど勝ちぬいた10人の選手がいた。そして、1つの小さいテレビが置いてあった。そのテレビで現在の競技の状況を見ることができるのである。
「ま、暇だし他のやつらの状況でも見るか」
卓生はテレビに身体を向けた。その時
「あんた、そんな身体しているのによくあんな力を出せるな」
「俺の新記録を軽々と抜かすなんてすごいぜ。どうやったらそんなに力が出せるんだ」
卓生の周りに他の合格者が集まり、彼のことを感心したり褒めたりしていた。
「あー…なんていうか、鍛えていたからかな?」
卓生は適当な答えで誤魔化した。
「あっ、悪い。次の選手を見るから詳しい話は後でな」
卓生は適当に他の選手をあしらい、テレビを見た。
『記録は90kgだ。さぁ、ここから立ち去れ!』
『うわぁ!』
卓生の次に出て来た選手は失格し、奈落の底へ落ちた。そして、卓生はそのまま流れるようにテレビを見続けていたが、後から出て来た3人も失格となり落下した。
「ふーっ…やっぱり150kg以上出せるやつはそうそういないのかな」
卓生は段々と飽き飽きしていたが…
『記録は350kgだ!』
「「「「え!?」」」」
卓生及び他の選手はその記録に驚いた。
「なんだよ今の男。あんた程じゃないが中々すごい記録だぞ!」
「も、もしかしてあんたの知り合いか?」
「し、知らねえよ…」
卓生が動揺している他の選手を宥めている内に、その350kgの選手が入って来た。その選手は細い目と白い肌をしている。そして、銀の長い髪をしているが一応男性である。身長は卓生より高い。
「…お前がタクオか」
「あ、ああ。なんだよ」
銀髪に話しかけられ卓生は動揺していた。
「俺はハヌマーン・スクドマ…お前を打ち負かす者だ」
「…」
ハヌマーンは卓生に宣戦布告的な発言を残した。
満を持して男の新キャラが登場です。




