番外ー3「イキリの名は・前篇」
これは、卓生がまだスピリット・スパーダを手に入れたばかりの話である。
「それにしても...俺はどうしてこの剣が上手く扱えるのかな...?」
「どういうこと?」
「ラファ、この前俺らがシャイセと戦った時があっただろ?」
「うん」
「その時、トラッシュの野郎が剣の主のソウルに身体を乗っ取られたから、俺もそうならないか不安でさ」
卓生は剣の力に悩んでいたのである。
「でもタクオ君はこの剣に刺された時、剣の中で自由に動けたし、しかも魔法使ってみんなを剣から出したんだし、やっぱりちゃんと扱えるんじゃない?」
「...まぁ、そうではあるな。ただ、この剣がとんでもなく危険な代物だと思うとやっぱり不安になる...」
卓生は剣をさすりながら、ため息をついた。
「それよりさ、早く行こ! サーニャちゃんとキョウちゃん、もう準備できてるよ!」
「ああ! そうだった!」
卓生は慌ててスピリット・スパーダを鞘に入れ、ラファの手を掴み外へ出た。卓生達はシャイセ(というかソウル)を倒した祝いを兼ねての食事をし、その後にクエストを受ける予定なのである。
「ごめん! お待たせ!」
「遅せーぞお前ら!」
「悪い悪い。じゃあ、行くか」
こうして、卓生達は飯屋へ向かった。
「それにしても、みんなでご飯食べるのは初めてじゃない?」
「そうですね。卓生さん達は行ったことあるのですか?」
「あるっちゃある! サーニャに案内されてな。今じゃ懐かしいな」
卓生は異世界に来たばかりの時、サーニャに街の案内されたことを思い出していた。
「最初はサーニャと同じ飯を頼んだんだけど、揚げ物が旨くてな!」
「でもお前、ライスは残してたよな」
「しょうがないだろ。俺の口には合わなかったんだから...」
卓生はサーニャのからかいに少しムッとした。その時
「ん...? なんだチンピラか?」
卓生は何かの気配を感じ、剣を取り出した。そして辺りを見回したが、何もなかった。
「ったく...なんだったん...アーッ!」
「タクオ! 大丈...ギャー!」
突然、頭上から雷が降ってきた。それが卓生の剣に命中し、巻き込まれる形で卓生が感電した。更に彼を助けようとサーニャが卓生の手を掴んだが、彼女もそれに巻き込まれる形で感電した。
「いててて...突然雷ってなんなんだよ」
「確かに珍しいな。でも、俺はオタクだから、雷なんて弾き返せるぜ!」
「何言ってんだよ! お前、弾き返すどころかガッツリ命中してたじゃないか!」
「あ、あれは本気を出してなかっただけて...」
卓生とサーニャは一応無事なようだがどこか様子がおかしかった。そしてキョウは違和感を感じていた。
「あれ? ちょっと待ってください。あなたは誰ですか?」
キョウは卓生に質問した。それに対し
「私はサーニャ・スアだ。何当たり前なことを」
「えっと...じゃあ、そちらは」
次にキョウはサーニャに質問した。それに対し
「俺は桐井卓生。成績優秀スポーツ万能、そしてDQNを返り討ちにしたことがある男だ」
「あの...すみません...」
「「ん?」」
「もしかして、2人とも入れ替わってるんじゃ...」
「「え?」」
卓生とサーニャはお互いを見つめ...
「「え、えー!」」
自分たちの身体が入れ替わってることに気づいた。
※
「で、なんで入れ替わったと思う?」
「多分だけど…スピリット・スパーダが雷に当たって誤作動を起こし、俺とサーニャの魂が入れ替わったんだと思うな…」
「じゃあ、話は簡単だ。こいつでお互いの身体を刺して魂を元に戻そう!」
「それは絶対だめ!」
卓生(身体はサーニャ)は唐突に声を荒げた。
「はぁ…はぁ…」
「ど、どうしたんだよ?」
「ご、ごめんいきなり大声出して…サーニャ達があの剣に魂を取り込まれたことを思い出して…もうそんなの見たくなくてつい…」
「私こそ、無神経だったよ。ごめんな」
卓生とサーニャはお互いに謝った。
「お待たせしました~これがタクオさん、サーニャの分。そしてこれがラファさん、キョウさんの分です」
「「…」」
卓生、サーニャはお互いの料理を見つめていた。それは卓生、サーニャの身体が入れ替わっているため、料理も反対になっていたからだ。
「あっ、すみません。そういえば今日は逆でしたね…サーニャちゃんとタクオさんはお互いの好きなご飯が気になったのでしょうか…?」
「ま、まぁそんな感じです。へへ…」
卓生はその場しのぎの苦笑いをした。
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
店員は頭を下げ、卓生達の座っている席から去った。料理はそれぞれサーニャはご飯と揚げ物、卓生は揚げ物と野菜、ラファは麺みたいなものとお酒、キョウは卓生に勧めれて頼んだ揚げ物だった。
「「「「じゃあ! いただきます!」」」」
そして、4人は料理を食べ始めた。
「僕がこんなもの食べていいのでしょうか…?」
「ああ。遠慮せずに食え。お前はもう奴隷じゃなくて、俺達の仲間だからな」
「あ、ありがとうございます…!」
キョウは感謝しながら、食事を食べた。
「それにしても、ラファがもう飲める年齢だなんてな…」
「うん。私、もう16歳だから」
「16って、まだ飲めないじゃん!」
「タクオ。この世界では16歳から飲める年齢なんだよ」
「そ、そうなんだ」
卓生はサーニャに耳打ちされ、納得した。
「あー…それにしても、この身体どうすればいいのかな…」
卓生はどうしようもなく悩んでいた。
思ったより話が長くなりましたので、前篇後篇に分けました。




