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第1章ー3「クエストとプレゼント」

「…!?」

 卓生とサーニャはダンジョンにいた。

「あれ? さっきまで俺達受付所にいたはずなのに…? あれ?」

「まぁ、お前が知らないのも無理はない。クエストは受注すると決めた時、自動的にその場所へワープするシステムになっているんだ」

「マジか…すげえなそのシステム…」

「とにかくクエスト始めようぜ」

「そういや、お前その格好で大丈夫なのか? 防具は?」

「私は問題ない…魔法が使えるからな。そういうお前は大丈夫か? なんだそのダサい格好」

「ジャージだよ。防具の買い方とか分からなかったから仕方ないだろ」

「最も、お前にはそんなもの必要ないと思うけどな」

「え? あっ、ちょっと待てよ!」

 先を行くサーニャを卓生は追いかけた。

「意外と…サーニャ足速いな…」

「鍛えているからな。お前こそへばるの早過ぎじゃないか?」

(くそ…引きこもり生活のツケがここまで周ってきたか…)

 卓生は早くも息切れを起こしていた。そして次の瞬間、卓生の身体が一瞬光った。

「ん、なんだ? あれ…?」

「どうした? タクオ?」

「いや、よくわからないが、息切れが治ったんだ」

「マジで?」

「ああ」

 突然息切れが治った卓生は、サーニャに追いつくように走り出した。卓生は何故か息切れを再び起こすこともなく、更に走るスピードは大幅に速くなっていた。

「ん? なんか早くなったぞ?」

「マジか…」

サーニャは突然足が速くなった卓生に困惑していた。

「ところで、モンスター共が出るのはどこからだ?」

「この階段を上った先にいる」

「よくわかったな」

「お前が質問してきたからだろ? それに、このパーティウォッチのマップ機能でモンスターの場所が分かったんだ」

「マジか…なんでもありだな」

「まぁ、とにかく上るぞ」

「あっ、待てよ」

 サーニャと卓生は階段を上った。そして、階段を上った先にはとつてもなく大きい化け物1匹、その周りに小さな化け物が10匹いた。それを見た卓生は

「気持ち悪り…」

 と見た目の感想を述べた。

「そうか? 私はそうでもないが」

 サーニャは平気そうな顔をしていた。

「とりあえず、私はデカブツを片づける。タクオは周りの雑魚を頼む」

「ああ、分かった」

 サーニャは作戦内容を卓生に伝え、ボスモンスターに立ち向かっていった。

「うおっ!」

 ボスモンスターは火を吐きだし、サーニャは慌ててよけた。

(あのモンスターは炎属性か…だったら…)

 サーニャは青色の指輪のようなものををポケットから取り出し、はめた。

「水魔法発動!」

 サーニャは両手をボスモンスターに向かって広げた。

「水のリングよ…我に力を…『ワーサーブレイク』!」

 サーニャは魔法名を叫ぶと、大量の水が彼女の手から出てきた。そして、大量の水はボスモンスターに直撃し、モンスターは悶えた。

「よし、だいぶ効いているな」

 その頃、卓生は

「おらぁ! おらぁ!」

 卓生はモンスターに囲まれていたが、彼は余裕で1匹ずつ倒していた。因みに、それぞれ一撃で倒していた。

「一撃とはいえ、やっぱり数が多いな…だが、残り5匹だ!」

 卓生は残りのモンスターを殴り続けた。勿論、拳で。そして、雑魚モンスターは全滅した。

「よし、雑魚共は討伐完了。さ、サーニャを助けに行くか」

 その頃、サーニャはボスモンスター相手に苦戦していた。

「くっ、『魔法(マジック)指輪(リング)』のPPがたった3発で切れた…30LVじゃ、こんなもんか…」

 サーニャは魔法指輪をポケットにしまった。

(それにしても、最初の1発と2発は大幅ダメージを受けていた。だが、3発目の時はダメージを受けてこそはいたが、そこまで悶えていなかった…どういうことだ…?)

 サーニャはボスモンスターの変化に気づき始めた。

「サーニャ! 大丈夫か!?」

「タクオ、気をつけろ! あのデカブツはもしかしたら属性が変わっているかも知れない!」

「属性? なにかは知らんが、俺は格闘スキルしか使えないから関係ないね!」

 卓生は全速力で走り、ボスモンスターを殴りつけた。しかし

「ぐわあああああああ! 痛てええええええええ!」

(お互いにダメージを受けている…? 流石に格闘スキル100でもダメージは受けるのか)

「いやぁ…攻撃は普通に効いたんだけど、手が痺れちゃってさ」

「手が痺れた…はっ、そうか!」

「?」

「タクオ! お前のヒントのお陰で助かったぜ!」

 サーニャはポケットから茶色の魔法指輪を取り出し、はめた。

「土魔法発動! 土のジュエルよ…我に力を…『グランドクエイク』!」

 サーニャが技名を叫んだ途端、地面が揺れた。

「なんだ!? 地震か!?」

「安心しろ。これは私の魔法だ。あのモンスターは雷属性に変わっていた。つまり、弱点が土属性に変わったというわけだ!」

 こうして、サーニャの土魔法によってボスモンスターは倒された。


▼タクオは50ポイント獲得した

▼サーニャは50ポイント獲得した

▼タクオは1000G獲得した

▼サーニャは1000G獲得した。


「それにしても、どうしてあのモンスターが雷属性だって分かったんだ?」

 クエストを終えた卓生とサーニャは集会所のベンチに座っていた。

「お前がモンスターを倒そうとした時、痺れたって言ってた。それで、あいつが雷属性に変わったって分かったのさ」

「そうか? で、その前は炎属性だったんだろ?」

「ああ…って、何故分かったし」

「雑魚共を殴った時、少しやけどする感じがしたからな」

「なるほど…って、お前属性とか知らないんじゃなかったのか?」

 サーニャは今更言葉の意味を理解できたような卓生に突っ込んだ。

「いや…ま、なんとなく分かったぜ」

(見ていたアニメとか漫画とかを思い出したなんて言えないな…)

 卓生は少し表情を曇らせた。

「それにしても30ポイントじゃ、まだまだ足りないな…」

「まあまあ、まだ1カ月あるんだし、気楽に行こうぜ」

「はぁ…お前は呑気だな。こっちは大会で緊張もしているのに…」

 サーニャは卓生の能天気ぶりに呆れていた。

「お前は少し焦りすぎじゃないか?」

「…悪かったな。脳みそ筋肉で」

 サーニャはフードを深く被った。

「いやいや、なにもそこまでは…」

 卓生はため息をついた。

「そうだ。装備とか売っている場所知ってっか?」

「装備ィ? でも、金とかあるのか? 私とお前で合わせて2000Gだぞ。そんなに強い装備は買えないだろ」

「とでも思ったか?」

「は?」

「実はデカモンスターの鱗と牙としっぽを帰還する前にむしり取ったんだ」

「で、私にどうしろと?」

「質屋を案内してくれ」

「はいはい」

 サーニャはだるそうにベンチから立ち上がり、その後卓生も立ち上がった。


              ※


「というわけで、こちらの鑑定をお願いします」

「りょ、了解しました」

 卓生は質屋の店員にモンスターの鱗と牙としっぽを差し出した。

「タクオ、そんなに期待はしなくていいぞ。上級のモンスターはともかく中級モンスターはそんなにいい値段はつかないかもだぜ」

「まあまあ、てか店員居る前であまり言うなよ…」

「それは無神経だったな…すまん」

 卓生に咎められ、サーニャは素直に謝罪をした。

「で、鑑定終わったら装備が売っているとこ案内してくれるか?」

「それは構わないが、私は装備買わないからな」

「え? マジで?」

「ああ。このパーカーが動きやすいし」

「じゃあ、剣とかは?」

「剣は大したレベルじゃないが、生産できるし」

「えー少しは乗れよー」

 卓生はサーニャのノリの悪さに少し呆れていた。

「鑑定終わりました」

「はい」

 卓生は店員の元へ向かった。


              ※


「でも、まさか貰った金額が3000Gとはな。私的には合わせて1000Gかと」

「ま、運がよかったってことよ。俺、こう見えて運いいしな」

「自分で言うのかよ…」

(まぁ、嘘なんだけどな)

 卓生とサーニャは会話をしながら装備屋に向かっていた。

「そういえば、装備買ったら何級クエスト受けるつもりだ?」

「やっぱりポイントはがっつり稼ぎたいから、上級かな」

「いや、お前はともかく私は上手く行くかどうか…」

「それに、仮に1カ月ギリギリで5000ポイントためたとしても、スキルのレベル上げする分のポイントがなかったら、本末転倒だ。だから敢えて難しいクエストに挑んで、5000ポイント以上早めに稼いだ方がいい」

「お前…意外と頭いいな」

「意外ってどういう意味だよ!」

 サーニャは卓生の発言に対し、関心をした。

(あれ…? 俺、こんなに頭のいいこと言えたか…?)

 卓生は自分で言った言葉に困惑していた。

(ま、まさか…)

『私達の国では、最近電子機器を通じて別世界にいる者をこちらの世界に送ってくる実験を行っているという噂だ。更にSNSというものに書き込んだことが能力の一部に反映されるというおまけつきというのもある』

(…)

 卓生は出会ったばかりの時にサーニャが言っていたことを思い出していた。

(なるほど…格闘スキルのLVが100なのも、足が速くなったのも、頭がいいのも、俺が異世界(ここ)に来る前にツイッタ―で書いたことが反映された結果なのか…)

 卓生は自分が現実世界にいた時にしていたことを思い出していた。

(あ…そういや…)

『俺、オタクだけど彼女とかいるしwwwこの前、DQNに絡まれた時、気が付いたら意識なくて暴走して、DQNが血まみれで倒れていたしwww』

(こんなことも書きこんでいたな…これも反映されるのか…?)

 卓生は自分が書いたある書き込みを思い出し、少し不安な顔をした。しかし

(まさか、な)

 卓生は不安な気持ちを押しこめるように気持ちを切り替えた。

「着いたぞタクオ。ここが装備屋だ」

 サーニャは装備屋の指を指していた。

「ここか。ゲームで見たことあるな」

「なんの話だ?」

「い、いや、なんでも…」

「まいっか、とにかく入るぞ。お前が来たがっていたんだからな」

「へいへい」

 卓生とサーニャは装備屋へ入った。

「いらっしゃい。お好きな商品を見ていってくれ」

「はい。あの、おすすめの防具とかはありますか?」

 卓生は店員に尋ねた。

「あー、でしたらこちらがお勧めですよ」

 店員が卓生に見せたものはエメラルド色のシンプルなデザインの鎧である。

「おお…」

 卓生は目を輝かせていた。

(めっちゃ憧れるな…これ…)

「おっ、あちらのお嬢さんはどんなのがいいかな?」

「私はいいです…興味無いので」

「まぁまぁ、そんなこと言わずに、色々試してみてくださいよ!」

「…分かりましたちょっとだけですよ」

 サーニャはハイテンションな店員に圧され気味になっていた。

「圧されているサーニャ、いいなぁ…」

 卓生はその光景を見て、微笑んでいた。

「それで、お兄さんはこの鎧がいいのかい?」

「ああ、それで頼みます」

「では、3000Gになります」

「はいよ」

 卓生はすかさずお金を出し、鎧を受け取った。

「まいどあり! それで、お嬢さんは気に入った防具は見つかりましたか?」

「あっ、えっと…」

 サーニャは自分の側にある棚に置いてあるピンク色のチョ―カ―をチラチラ見ていた。

「これが欲しいのか?」

「べ、別に欲しく…ないわけじゃないけど…」

「わざわざ遠まわしに言わなくても…」

「う、うっさいわ! これをください!」

サーニャはチョ―カ―を買おうとしたが

「では、2000Gになります」

「…」

「どうしました…?」

(た、足りねえ…1000Gしか持ってない…)

サーニャは1000Gを出した後、涙目になりながら後ろにいる卓生を見つめていた。

「ったく、しょうがねーなー…」

 卓生はサーニャの横へ行き、1000Gを出した。

「これで足りるだろ」

「はい。お買い上げありがとうございます!」

 チョ―カを購入し終えたサーニャ(と卓生)は店を後にした。

「ふーっ、どうなるかと思ったぜ」

「…卓生」

「ん?」

「…ありがとな」

「別に大したことはしてないぜ」

「今度、返すよ…」

「いや、別に返さなくていいぜ」

「え?」

「こいつの俺が出した分は、俺からのプレゼントってことで!」

「べ、別に嬉しくないからな…」

「はいはい」

 卓生は少し頬が赤くなったサーニャと共に集会所へ帰って行った。。


              ※


「はぁ…はぁ…」

「ちっ、役立たずが! また足引っ張りやがって」

「今まではお前の分の報酬金を貰うだけで許してやったが、今回はもう駄目だな」

 水色のロングヘアの少女がダンジョン内で倒れていた。その周りには金髪の男と黒髪の男、そして黒髪の女性が囲んでいた。

「私もね、ずっとあなたをこの2人から庇ってきたけど、もう駄目よ。擁護しきれないわ」

「だって…みんなが私だけに任せたから…」

「は? お前口答えすんのかよ。お前が弱いから敢えてお前1人に3匹のモンスター退治を任せたんだろうが」

「お前は今日限りで『シャイセ』から解雇だ。じゃあなダンジョンで野垂れ死ぬかモンスターに食われるかするんだな」

 金髪の男はそう吐き捨て、水色の髪の少女を置いていき、黒髪の男と黒髪の女と共に去って行った。

「ま…まっ…て…」

 水色の髪の少女は引き留めようとしたが、声が届かず、意識を失った。

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