第3章ー15「イキリオタクの暴走」
「てめぇ…俺の仲間に手出しして、ただで済むと思っているのか…?」
暴走した卓生は右目が赤色、左目が紫色になっていた。
「タクオ…また…」
サーニャは卓生の様子を見て畏怖していた。
「タクオ君のあの様子、やっぱりソウルに身体を蝕まれたんじゃ…」
「いや、それだけじゃない。タクオは何か別のものに取りつかれた可能性も高い…恐らく、例のあれが関係しているのか…?」
「例のあれ…?」
ラファはヴァジラの言葉が引っかかっていた。
「がああああああああああああああ!」
「ぐはっ…ぐひっ…ぐふっ…!」
卓生は本能のままに暴れ、何度もアン・コークを殴り続けた。
「タクオ! もうやめろ! 私はもう大丈夫だ!」
サーニャは卓生に呼び掛けたが、彼は聞く耳を持たず、まだ殴り続けていた。その時
「神よ…この暴れ男の気を静めたまえ…」
「え…?」
「…」
卓生は何者かの声により少しずつ動きが鈍くなって行った。
「…はぁ…はぁ…」
そして、卓生の動きは止まり、彼は眠るように倒れた。
「大変だったね。サーニャちゃん」
その声の主は、大賢者だった。彼はサーニャがスピリット・スパーダにより、魂が元の肉体に戻ったのだ。
「大賢者さん!」
「大賢者様! 蘇ったのですね!」
サーニャとヴァジラは大賢者に声をかけた。
「ずっと剣の中で眠り続けるのも退屈だったな」
ヴァジラは肩に手を置き、腕を振り回しながらぼやいていた。
「サーニャちゃん、長い間待たせてごめんな」
「ずっと待ってたよ!」
サーニャは涙目になっていた。
「でも、感動の再会を喜んでいる場合じゃないな。この男が何故あそこまで暴走したのか…」
大賢者は険しい顔をしながら、倒れた卓生を見つめていた。
「このタクオという男が暴走したことに心当たりはある?」
大賢者は卓生の仲間の他、ヴァジラを始めとする賢者にも聞いた。
「多分、ソウルに魂を蝕まれたからだと思います…でも、なにか他にも原因があるのではないかと私は考えています」
ヴァジラは首をかしげながら、答えた。
「私はその他の原因にも心当たりがある」
「サーニャさん、何か知っているんですか?」
「ああ。噂程度だけどな」
そして、サーニャは一息つき、説明を始めた。
「タクオはこの世界の住人ではなく、別の世界から来た人間だ。最初に私にあった時、そう言っていたから間違いない。そして噂の話になるが、私達の国で電子機器を通じて別世界にいる者をこちらの世界に送ってくる実験が行われているというものだ…」
「で、それがどうかしたのかい?」
「電子機器を通じてこの世界に転送された者はSNSというものに書き込んだことが能力の一部に反映されるというやつだ。タクオは多分、それのせいで暴走しやすい身体になったのだろう。多分、自分で暴走しやすいとか書き込んだかも知れない」
「なるほど…恐らく、タクオがSNSに書いた暴走しやすいとソウル・ヴァルキュリアの強過ぎる魂がぶつかり合ったことで、彼はより一層、暴走しやすい肉体になってしまったのだろう…だが、このまま暴走を続けるようだと心が壊れてしまう可能性が高い…」
「心が…」
「因みに、その電子機器を通じて転送するというのは事実だ。私達は実際にその現場を見てしまったからな」
「え…!? それは本当か!?」
「本当だ。で、その実験を取り行っているのは、ヴァルキュリア財閥という連中だ」
「ヴァルキュリア財閥…まさか、ソウル…!?」
サーニャは『ヴァルキュリア』という言葉ですぐさま反応した。
「そう。そいつの身体に宿っているソウル・ヴァルキュリアの親類が仕切っている秘密組織だ。私は詳しいことは分からないが、彼らは闇取引や国を荒らす連中を雇っていながら、この国の全てを仕切っている。店や学校、大会などの運営など色々運営までしている」
大賢者は自分が知っている限りにヴァルキュリア財閥の説明をした。
「説明ありがと。そっか、あいつらはそんなにヤバい組織なのか…」
「ねぇ、サーニャちゃん…どうするの…?」
「決まっている…もしかすると、私の父の身体に入っているもそのヴァルキュリア財閥に所属している可能性が高い…それに、手掛かりは聖ダイトウ学園にあると言っていた…だから、まずは能力祭で勝ち、そしてそのヴァルキュリア財閥をぶっ倒す。それだけだ!」
サーニャは決意を固めた。
「う…ん…?」
そして、卓生が目を覚ました。
「タクオ! 目が覚めたか! 身体は大丈夫か!?」
「なんとかな…でも…」
「ん?」
「俺、また暴走しちまったんだよ…なりふり構わず感情に流されて…」
「…」
「サーニャ。1つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「俺が暴走するとか、怒ると何するか分からないとか、アホみたいな見栄をツイッタ―に書き込んだばかりにこんな風になったのかな…?」
「…」
サーニャはしばらく考えた後、口を開いた。
「まぁ、そうかも知れないな」
「…!?」
「でもな、そんな暴走なら乗り越えられることだってできるんだ」
「サーニャ…?」
「だから、その暴走さえ克服すればお前はまた一歩強くなれる。それだけだ」
「…そうだな。お前らの足引っ張りたくない。それに、また誰かを痛めつけてしまうかもしれない…だから、俺なんとかしなきゃ。心を強くしたい!」
「ああ」
卓生とサーニャはお互いの手を握った。
次回は後日談みたいなものなので、今回で賢者と剣者編の実質的な最終回みたいなものです。




