第3章ー9「コピー&ゴースト」
「私は弱い…でも、タクオ君がいない今、私しか戦えない…」
ラファは倒れた卓生を見つめながら、目を細めた。
「昔の人は、『攻撃は最大の防御』と言った人がいると聞いたことがある。だから、その逆で『防御が最大の攻撃』になるかも知れない…!」
ラファはそう言いながら、防御スキルを発動した。
《おやおや、あなたはその防御スキルを発動してどうするつもりなのですか?》
(喋った…!? あのバケモノ、喋れるんだ…いや、そんなこと考えている場合じゃない)
ラファは喋った影に驚愕したが、すぐに気持ちを戦闘に切り替えた。
「はあああああああああああああ!」
ラファは防御スキルを発動させたまま、影に突進して行った。
《な、なに…!? ぐおおおおおおおお!》
影はかなりのダメージを受けていた。ラファのシールドの破片が影に刺さったことで、彼は痛みを感じたのだ。
《ク、クソ…ならば私も…》
影はラファと同じ攻撃方法を使い、彼女に向かって突進して行った。しかし
「その攻撃は私の防御スキルで対応すればいい…」
ラファは再び防御スキルを発動した。そして、影の攻撃を防いだ。
《な、何…!?》
「自分の攻撃くらい、防げるよ!」
《くっ、ならば…》
追い詰められた影は卓生の姿になった。
《この姿が一番強い。格闘スキルが桁違いだからな…》
影は不敵な笑みを浮かべた。
「くっ…」
「いや、確かに俺の格闘スキルはピカイチかも知れねぇ…だが、俺にはそれ以外にも立派な剣を持っているんだよ!」
《な!? この声はあの男か!? どこにいる!?》
「え!? タクオ君!? でもどこにいるの…?」
ラファと影は辺りを見回していた。尚、卓生の肉体は倒れて動かないままだった。
「ここだよっ! おらぁ!」
《ぐあっ…な、何故物理攻撃が当たる…!?》
「知りたいか? 幽体離脱しているからだよ!」
なんと、卓生は幽霊の状態になっていた。
《だが、それはおかしい…幽霊と影は別の存在だ!》
「細かいことはどうでもいいんだよっ!」
《ぐはっ!》
卓生は更に攻撃を加えた。
「よし、新しいことができた記念に、ここで俺の必殺技をお前に見せてやろう」
《必殺技ぁ…?》
「それは…ゴーストナックル!」
《ぐああああああああああああああ!》
影は卓生にすっかり翻弄されていた。
「ラファ! さっきの攻撃方法、応用できないか!?」
「え!?」
「お前のシールドであいつの動きを封じるんだ!」
「分かった! やって見る!」
「ああ! 頼んだぜ!」
ラファは防御スキルを発動させ、今度はそのシールドを意のままに操った。そして、ラファはそのシールドを影にぶつけ、彼の動きを封じることに成功した。
《これはなんだ…!? う、動けん…!》
「よっしゃ! 後は俺に任せろ!」
いつの間にか元の身体に戻っていた卓生は、再び魂フォームを発動した。
「俺のスピリット・スパーダを喰らえ!」
《ふっ馬鹿め。俺は影だから物理攻撃は効かないんだ! 同じことを言わせるな!》
「…だといいけどな。ソウル・ヴァキューム!」
卓生は更に紫色に輝いた剣を影に刺した。その剣はすり抜けることなく、見事に命中した。そして、その直後…
《うわあああああああああああああああああああああああ!》
剣はまるで掃除機のように影を吸いこんだ。
「攻撃が当たらないなら、吸い込めばいい。この剣の特性を生かしたぜ」
《馬鹿な…この私が…馬鹿なあああああああああああああああああああ!》
影は断末魔を上げながら、剣の中に吸い込まれてしまった。
※
「こ、ここは何処だ…?」
影は暗闇の中にいた。
「よぉ。目が覚めたか?」
「あっ! き、貴様は大賢者様に殺されたはずのリュー・スア!」
影はサーニャの父、リューが現れたことに驚愕していた。
「という事は…俺は今、地獄…!?」
「馬鹿野郎。ここは地獄なんかじゃねぇよ。ここは、剣の中だ」
「剣の…中!?」
「まぁ、お前は俺の仲間を傷つけたから、地獄行きは確定なんだけどな…」
リューは影の身体に手を当て…
「消えろ」
「な…!? 待て! 話せば分かる!」
「もう遅い」
「ぎゃああああああああああああああああああああ!」
影はリューの手によって消滅した。
「それにしても大変だったぜ…この前も本来の持ち主であるソウル・ヴァルキュリアがいきなりこっちに来たからな。まぁ、だいぶ衰弱しきっていたから、倒すのはたやすいけどな…」
実はソウルも剣の中でリューの手によって消されていたのだ。
「さて、タクオに報告しなきゃだな…」
リューは一言呟いた。
※
「え? マジですか?」
『ああ。あの影のスキル、お前が使えるようになったぞ』
「そうですか…ご協力、ありがとうございます」
卓生はリューによって影の相手のスキルをコピーするスキルを身に付けたことを知った。
「タクオ君、またサーニャちゃんのパパ?」
「ああ。どうやらあのバ影のスキルを使えるようになったんだと」
「へぇー…それはそうと、タクオ君」
「ん?」
「どうやって幽体離脱できたの?」
「…実はな」
「うん」
「あのバ影から攻撃を喰らった直後、僅かな意識の中でこの剣を腕に刺し、『幽体離脱』と呟いたら上手く行ったんだよ。まぁ、それもリューさんに教えて貰ったやつなんだけどな。因みに、刺すならどこでもいいらしい」
卓生は丁寧に説明した。
「凄いスキルかも知れないけど…やっぱり危険だね」
「いやいや、現在進行形で俺達は危険なことに首を突っ込んでいるだろ?」
「まぁ、それもそうだね…へへへ」
「じゃあ、先へ進むぞ」
「うん!」
▼タクオは幽体離脱スキルを手に入れた。
▼タクオはコピースキルを手に入れた。
次回はサーニャ、キョウ、賢者サイドになります。
時系列では今回の話と前回の話との同時進行になります。




