第3章ー8「影は無慈悲な暗闇の王」
「ここは…一体なんだ…?」
「さぁ…?」
卓生、ラファの入った扉の中は暗く、何も見えないままだった。
「この暗闇の中で大丈夫なのかな…? リングはサーニャちゃんが持っているし…」
「心配するな。俺に考えがある」
卓生は腕につけてあるパーティウォッチのアプリである、懐中電灯機能を起動した。
「スキルがなくても、これさえ使えば充分だ」
卓生は得意げに辺りを照らした。
「へぇー…凄いねタクオ君。こんなことまで思いつくなんて」
「いやいや…俺が凄いんじゃなくて、この時計が凄いんだよ」
卓生は時計を指差しながら、おおよそライトノベルの主人公にあるまじき発言をした。
「でもさ。タクオ君は凄いよ。あの時、見捨てられた私を助けてくれたから」
「…え?」
「もしも、あの時タクオ君が助けなかったら、私は野垂れ死んでいたと思う。大袈裟だと思うかも知れないけど、あなたは私のヒーローなんだよ」
「ヒーロー…」
卓生はその言葉を聞いて、少し照れた。その瞬間
「だから、私の傍から離れちゃだめだよ…離れたら私、死んじゃうかも知れないから…」
ラファの目から光が消え去っていた。
「…」
卓生はその様子を見て絶句していた。
(ラファは時々怖いくらい重い時があるんだよな…愛が重いっていうか…)
「ねぇ、タクオ君…」
「は、はい!」
考え事をしていた矢先にラファに話しかけられたため、卓生は驚いた。
「あのさ…ここって暗闇だけど何か変じゃない?」
「変?」
「明りを照らしている所が灰になって消えているんだよね…」
「あっ…」
卓生は一旦、懐中電灯機能を削除した。すると、照らしていた部分が何故か明るくなっていた。
「ま、まさか…」
卓生は何かを察した。そして、影が独りでに動き出した瞬間…
「ラファ! 伏せろ!」
「う、うん!」
ラファは卓生に言われた通りに伏せた後、影から弾丸のようなものが多数出て来た。
「はぁ!」
卓生は全てを剣で封殺したことで、ダメージを受けずに済んだ。
「はぁ…こいつがモンスターだったの、いち早く気づけてよかったぜ…」
「ラファ。いざという時のためにスキル発動の準備をしておけ」
「分かった…!」
「さぁ…行くぜ!」
剣は紫色に輝き、彼の姿はソウルを模した姿に変わった。
「タクオ君、魂フォーム…」
「え? この姿、そんな名前だっけ?」
「い、いや。今思いついただけ…えへへ」
「おいおい…」
卓生は呆れた表情をしつつ、モンスターとの戦いに備えた。
「あいつは影のモンスターだから光に弱いはず…」
卓生は何故かモンスターの弱点を知ることができたが…
「でも…俺はサーニャの技持ってないよおおおおおおおおおおお!」
卓生は叫ぶように嘆いた。
「仕方がない…久々にこの技を使うか」
卓生は剣をしまい、拳を握りしめた。
「おるあああああああああああああああ!」
卓生はモンスターを格闘スキルで殴りつけようとしたが
「な…」
なんと、モンスターの身体をすり抜けてしまった。
「しまった。こいつは影だから物理攻撃は効かない…ということは剣も効かないのか…?」
「タクオ君! 危ない!」
「!?」
卓生は考え事をしている間にモンスターが姿を変え、目の前に現れた。
「何だこの姿は…!?」
モンスターは卓生と同じ姿をしていた。そして、影の卓生は先ほどの卓生と同じ格闘スキルをお見舞いした。
「なんだこの威力…オリジナルを超えている…!?」
卓生は影の卓生から攻撃を受けてしまい、倒れこんでしまった。
「タクオ君!」
ラファは倒れた卓生の側へ駆け寄った。
「大丈夫!?」
「ラファ…あいつは姿だけじゃなくてスキルをコピーまでしている…気をつけろ…」
「タ、タクオ君!」
卓生は力尽き、倒れてしまった。
「…」
ラファは倒れた卓生を見て、震えた。
「タクオ君…タクオ君…」
ラファは震えた声で何度も繰り返した。
「タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君タクオ君」
ラファの声色は少しずつ激しくなって行った。そして、彼女の目から光が消えていた。
「はぁ…はぁ…」
ラファは立ち上がり、影の卓生を睨みつけた。
「あなたはタクオ君を傷つけた…しかも、タクオ君の姿で…」
ラファは怒りに震えていた。
「絶対に許さない…あはは…あははははははははははははははははははは!」
ラファは狂った笑い声を上げ、影の卓生に襲いかかった。しかし
「やっぱり、攻撃が効かない…」
ラファは殴る蹴るなどの暴行をしたが、当然効かなかった。
「はぁ…はぁ…」
そして、影のモンスターは再び姿を変え、今度はラファを模した姿になった。
「わ、私の姿になった…!?」
ラファは姿を変えた影に驚いた。
「でも、倒すしかない。使えるか分からないけど…」
ラファは手を開き、パワーを貯めた。
「はぁっ!」
そして、ラファは手から光魔法を出した。しかし、影のラファは防御スキルを出したため、効かなかった。
「き、効かない…!? だったら…」
ラファはもう片方の手から光魔法を出した。しかし、影のラファは防御スキルを使わずとも、魔法はモンスターをすり抜けてしまった。ラファの魔法スキルはレベル1であるため、そう簡単に効かなかったのだ。
「私は弱い…どうすればいいの…」
ラファの心は折れてしまっていた。
ラファのヤンデレが再び発動してしまいました。




