第3章ー7「2つの扉」
「次のエリアはなんだ…?」
海のエリアを乗り越えた卓生達は、次のエリアに向かっていた。
「わっ! なんだここ!」
卓生達は驚愕していた。なんと、そこはマグマの一体だった。しかも、歩くことができるスペースが少なかった。
「ここのエリアはマグマ一体のエリアになっている。だから、渡るのが難しい…だから、1人ずつ渡るのがいい」
「賢者、このマグマをなんとかすることはできないのか?」
「それは無理だ。どんな技でも攻略することは困難だ」
賢者は険しい顔をした。
「氷のリングよ…我に力を…水のリングよ…我に力を…」
サーニャは試し2つの魔法指輪をつけ、マグマにそれぞれ氷魔法と水魔法を放った。しかし
「え…」
なんと、マグマがまるで生き物のように動き出し、魔法を飲み込んでしまったのだ。
「だから言ったでしょ。攻略は難しいって。マグマそのものは無害だが、どんな攻撃でも吸収してしまうんだ」
「くそぉ…」
サーニャは心底悔しそうな顔をした。
「因みに聞きたいんだが賢者さんよ」
「なんだ?」
「ここ以外に無害なモンスターはいないのか?」
「それは私でもわからない。そもそもトラップがいくつあるかどうかすら分からないからな…」
「マジかよ…」
「まあ、普段私たちは関係者用の入り口を使っているから、何とも言えないんだ…」
「え!?」
卓生は困惑した。それは、今自分たちが使っている道以外にも、もう1つ道があると知ったからだ。
「おい! なんでそっちを俺らに使わせなかったんだよ!」
「関係者用の入り口は、厳重なセキュリテイが施されている。しかも、侵入者はすぐに殺される。だから、こっちの道を使うしかなかったんだ」
「…それじゃあ、仕方ないな…」
普段短気な性格をしている卓生だが、今回は珍しく引き下がった。
「で、どうすればいいんだ…?」
「待ってください。もしかしたら、僕ならなんとかなるかも知れません」
キョウが手を挙げた。
「僕の生産スキルなら、橋を作れるかも知れません。実際にできるかどうか分かりませんが…」
「キョウ。できるかなじゃない、やるんだよ」
卓生は彼なりにキョウを励ました。
「やってみます…生まれよ。新しい命よ…」
キョウは手に力を込め、全ての足場と足場の間に橋を作った。
「よし。できた」
「すごいじゃん! やったね!」
ラファは嬉しそうにキョウの手を取った。
「でも、僕の能力じゃ危ないから、1人ずつ渡ってください」
「わかった」
こうして、賢者が最初に渡り、卓生が最後に渡るような形で1人ずつ渡って行った。マグマは普段は無害であるため、卓生たちを襲うようなことはしなかった。
「やっぱり…いざ渡るとなると、崩れないかドキドキするな…」
卓生以外が渡り切った後、彼も橋を渡り始めた。その時…
「うわぁ!」
卓生が足を踏み外してしまい、マグマに落ちた。
「タ、タクオ!」
サーニャは悲痛な声で彼の名前を呼んだ。
「俺、泳げねぇんよ…」
卓生は生きていたが、マグマの中で溺れていた。
「…」
溺れているとはいえ、卓生がマグマに落下しても普通に生きていることに、全員疑問を感じ、絶句していた。
『タクオ! 任せろ!』
その時、リューが卓生に憑依し、マグマの中をクロールで泳ぎ、皆の元へたどり着いた。
『はぁ…はぁ…』
「タクオ、お前の身体すげえな…マグマに入ってもなんともないなんて」
『リューさんこそ、剣を刺さなくても憑依可能になったんですか?』
「まぁな。これも、成長ってやつだ」
『はぁ…』
「じゃあ、俺はもう行くぜ」
卓生の身体から、リューは離れ、彼は元に戻った。
「タクオ、大丈夫か?」
「ああ…なんとかな」
「お前、マグマに入っても平気とか…これも書き込みの影響なのか…?」
「さぁな…」
サーニャは卓生に身体の頑丈さを聞いたが、本人は知る由もなかった。
「さて、ようやく出口まで来たが…一体なんだこれは」
「出口が2つもある…」
全員困惑していた。
「おい、お前でも分からないのか?」
「すまぬ…私でも分からないんだ」
賢者は悔しそうな顔をしていた。
「じゃあ、2組に分かれて入るのはどうだ…?」
「でも、片方罠の可能性だってあるだろ! それに、道は賢者さんしか分からないだろ」
サーニャは卓生に反発をしたが
「いざという時には、このパーティウォッチで連絡をすればいい。それに、あることをすれば道順は分かる気がするんだ」
「え? でも、ここは我々賢者しか道順が分からないはずでは…」
「だから、こうすれば分かる気がするんだよ。んっ…」
「!?!?」
卓生はいきなり賢者の頬に口づけをした。当然、賢者は突然のことに戸惑いを隠せなかった。この様子を見ていたサーニャはドン引きし、キョウは気まずそうな顔をし、何故かラファは恥ずかしそうに手で顔を隠した。
「ちょっと! いきなり何するの!?」
「こうすれば、お前の頭にインプットされている道順が分かると思ってな。実際にお前の道順が俺の頭にどんどん入って行く…」
「マジか…」
賢者は少し引いていた。
「…やっぱり、こと扉2つは最近できたものらしい」
「じゃあ、どちらも偽物…?」
「いや。片方は確実に本物だ。だが、それはどちらか分からない…やっぱり、2人で分かれて行くしかない。俺とラファ、サーニャとキョウと賢者で分かれよう」
卓生は提案したが
「おいタクオ、私がいなくて大丈夫なのかよ!?」
「お前こそ大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ!」
「お前が大丈夫なら、俺も大丈夫だ」
「分かったよ…任せるぜ」
「お前も頼んだぜ」
卓生、サーニャはお互いに意地を張り合った後、それぞれ扉の中に入った。




