番外1-卓生の異世界転送前
賢者と剣者編の途中ですが、番外になります。卓生が異世界に来る前の話です。
ある中学校の教室に席で座っている少年がいた。彼の名前は桐井卓生。クラスには馴染めず、常に一人でいる。周りからはイジメを受けることすらされず、ほぼ空気扱いである。
「はぁ。中学はつまらんな」
卓生は頬杖をつきながら、ため息をついていた。因みに、今日彼のクラスではテストの結果が返ってきていた。因みに、卓生は全て30点〜40点とお世辞にも良い点数とは言えなかった。
「テストの点は悪いし、俺は中学に通う意味はあるのか?」
卓生はテストの結果を見ながら、ため息をついていた。
「まぁ、誰からも相手にされないままの方がいいのかも知れないな...」
卓生がかばんからテストをしまうためのファイルを出そうとしたその時
「あっ...」
卓生はファイルを落とした。そして、それは隣の席に座っている不良に拾われた。
「ん? なんだこれ?」
不良は不思議そうに卓生のファイルを見ていた。そして
「あ、あの...それ、俺の...」
卓生が恐る恐る不良に声をかけようとした途端
「だっさー! なにこれ! 明らかにアニメキャラの奴じゃねーか!」
不良は卓生のファイルを見て大笑いした。そのファイルには二次元の女の子の絵が描かれていた。卓生はその女の子が登場するアニメのファンなのである。
「おい! お前らも見ろよ! こんなファイル持ってる奴いるぜ!」
不良は他の仲間3人にまるで晒し者にするかのように見せた。そして、仲間3人も釣られるように大笑いした。
「いやー、こんなキモいの見てる奴もキモいんだろうなー!」
不良が大声で叫ぶように貶した。その瞬間
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
卓生は突然叫び声を上げ、机をひっくり返した。そして
「これは! 俺のだよ!」
卓生は不良からファイルを奪い返した。
「な、なんだよ。これ、お前のかよ。てか、お前誰? 冴えない陰キャみたいな雰囲気してさ。だから、お前のクリアファイルも...」
「それ以上このアニメを悪く言うなぁぁぁぁぁぁ!」
卓生は不良のかばんを奪い、それを振り回し、床に叩きつけた。
「な! 俺のかばんに何するんだよ!」
「そ、そうだ! 我らのリーダーのかばんになにするんだ!」
「うるぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
卓生は八つ当たりするかの如く、叫びながら他の席の机や椅子をひっくり返した。その光景に不良を含め、クラス中の人々は唖然とした。そして、1人の女子生徒が卓生の叫び声に過呼吸を起こした後、倒れ込んだ。
「あ...あ...」
卓生は倒れた女子生徒を見て、冷静さを取り戻した。そして、彼は呆然と立ち尽くしたまま後悔の涙を流した。
その日以来、桐井卓生は引きこもりになった。




