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第3章ー1「卓生の背負うもの」

今回はプロローグという立ち位置もあり、いつもより短めです。そして、卓生がクサイです。

「それでサーニャ、その賢者さんと最後に会ったのはいつだ?」

「お前と会う3日前だな…」

「割と最近だな」

「ああ」

 卓生はサーニャに賢者の事を聞いていた。

「それなら、わざわざ親父さんから手掛かりを言ってもらう必要なかったんじゃないか?」

「いや、意味はあった。なぜなら私から賢者に会いに行くことはないからだ」

「つまり、賢者さんからサーニャちゃんに会いに行くってことでしょ?」

「ああ。そういうことだ」

 サーニャはラファの問いにしっかりと答えた。

「それにしても、父さんは詳しく集会の場所知らないんだよな…そのために他の賢者に話を聞かなければならないなんてな…」

 サーニャは大きなため息をついた。

「その前に言いたいことがあるんだが」

「なんだ?」

「能力祭の参加登録はしないのか?」

「おい、タクオ…あれは私一人で…」

「俺たちも一緒に参加がしたいからな」

「!?」

 サーニャは卓生の言葉に衝撃を受けた。

「実はシャイセを退けた後にな…」


       ※


 卓生達はシャイセとの決闘後、寮に戻っていた。

「タクオさん、聞きたいことがあるのですが…」

「なんだ?」

「昨日、寝ているときに聞いたのですが能力祭ってなんですか?」

「!?」

 卓生はサーニャと秘密にしていたことを触れられたような気持になったため、少し動揺した。

「えー、キョウちゃん知らないの? 自分の持っている能力を競う大会だよ。で、サーニャちゃんがそれに出るんでしょ?」

「…はぁ」

 卓生は一息ついた後

「分かった。隠さずに言うよ。サーニャは色々あって聖ダイトウ学園に入学したがっているんだが、どうやらあいつは1人で参加するつもりらしい。どうやら俺には難しいことは向いてないからだってよ」

「そうなんだ…」

「俺はあの時、答えは出なかったけどサーニャといたい! 本当は俺も能力祭に参加してサーニャと同じ学校へ行きたいんだよ!」

 卓生は包み隠さずに自分の本音を暴露した。その結果…

「だったら、私も参加するよ!」

「僕もです!」

「お、お前ら…」

「私、サーニャちゃんがいなかったらここまで来れていなかったと思うんだ。だから、私はサーニャちゃんに恩返しがしたい!」

「僕は、自分の能力がどんなものか確かめたいです!」

 ラファとキョウはそれぞれ参加理由を唱えた。

「あ、ああ…でもサーニャは反対すると思うぞ?」

「こんな感じで理由を説明すれば、ある程度理解はしてもらえるよ」

「そうですよ! だから、タクオさんも理由を言ってください!」

「俺の理由…ね」


       ※


「まぁ、そういうことだ…俺達なんかじゃ足手まといになるかも知れないが…駄目か?」

「はぁ…お前らな…」

 サーニャは呆れたようにため息をついた。

「サーニャ、お前が俺に楽しい異世界に来てまで苦しい思いをして欲しくないのは俺を思ってのことだったんだろ?」

「あ、ああ…」

「だがなサーニャ、これだけは言わしてくれ。俺達がいるのに一人で解決しようとするな。助けて欲しいなら素直にそう言ってほしい。少なくとも、俺は例え自分が苦労することだと思っても、親友と一緒に背負えば苦しくもなんともない。だからサーニャ、俺の親友であるお前の苦労を俺達にも背負わしてくれ」

「あ…ぁ…ば、馬鹿!」

「痛てっ!」

 顔が真っ赤になったサーニャは、思わず卓生の頬を叩いてしまった。

「な、なにするんんだよ!」

「タクオの馬鹿! こんな思わせぶりなこと言いやがって! い、いいよタクオ! ラファもキョウも私と一緒に能力祭に参加してくれよー!」

 サーニャは心からの本音を叫んだ。

「ふっ、やっと素直になったな」

「う、うっさいわ! いいからまずは賢者を探すぞ!」

「へへ。はいはい」

 照れるサーニャに対して、卓生は涼しい顔をしていた。

「タクオくん、かっこいいね」

「そ、そうですね…見ているこっちが恥ずかしくなりました」

 ラファはその様子を見て微笑み、キョウは頬を赤く染めていた。そして、2人はそんなサーニャと卓生を追いかけた。

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