第1章ー10「史上最強の戦士の襲撃」
「あー、それにしても…使える駒がいなくなったせいで、私達も少し不便になったわね~」
「ま、いいじゃねえか。幸い、今日は港から後に奴隷になるやつらも来る。最悪そいつらをこき使えばいい」
「そうだな…とりあえず、俺が港まで奴隷を引き連れている貧乏人を市場まで案内するか。お前等は恐喝や盗みでもしてろ」
金髪の男、シャイセのリーダーは黒髪の男と金髪の女に命令をした。
「しかし、よそのパーティーから決闘の申請が来ているが、どうする?」
「放っておけ。俺達は雑魚共に相手をしている暇はない」
金髪の男は、決闘申請を突っぱねた。
「とりあえず、承認しないを押しておけ」
「で、でも…承認しないが押せないのよね…」
金髪の女はパーティウォッチを見ながら、不穏な顔をした。
「どういうことだ?」
シャイセのリーダーはキレ気味に自分のパーティウォッチを見た。すると、こんなことが書いてあった。
『史上最強の戦士からの決闘を承認しますか?』
『承認する』
『承認します』
「なんじゃこりゃああああああああああああああ!」
シャイセのリーダーはあまりにも理不尽な選択に発狂した。
「どうなってんだこれ! 強制的に決闘しろって言ってるようなもんじゃねえか!」
「そうよ。だから承認するしかないじゃないの?」
「ふ、ふん。俺は無意味な戦いはしない主義だ。こんなもの、ぶっ壊してやるぁ!」
シャイセのリーダーは感情に任せてパーティウォッチをたたき割ろうと、まず地面に叩きつけ、そこから足で踏みまくった。しかし
「なんだよこれ! 壊れねぇじゃんかよ!」
「だってよ、リーダー。こいつは像が踏んでも壊れないほど頑丈らしいからな」
黒髪の男は、パーティウォッチを指しながらこの機械の頑丈ぶりの説明をした。
「くっそ…」
「やっぱり、承認するしか…」
「いや! ここで承認したら相手の思うつぼだ…とりあえず、こいつは放置だ。で、俺は港に行く。お前等は盗みなり恐喝なり好きにしろ。じゃ」
「お、おい!」
シャイセのリーダーは感情に任せるように港へ向かった。
「もう、リーダーはキレるといつもこうなんだから…」
「全くだぜ。ま、とりあえず俺たちは金でも稼ぎに行こうかね。この盗んだ剣があればな」
黒髪の男は懐から剣を取り出した。その剣はとてもまがまがしい黒色をしていた。
「そうね」
そして、2人は悪だくみをしながら、路地裏へ向かった。
※
「それにしてもキョウ、お前の頭すげえいいな。まさかバクデータを生産出来て、それを送るなんて…」
「いえ、そんなこと…」
卓生とキョウは待ち伏せのために港へ向かっていた。シャイセのパーティウォッチをおかしくしたのはキョウだったのである。彼はウィルスを生産し、決闘を「承認する」と「承認しない」のうち「承認しない」を「承認します」に書き換えたのだ。
「でも、どのみち承認してもらうならわざわざシャイセからパーティウォッチを奪う必要はあるのでしょうか?」
「サーニャによると、そもそも押さない可能性があるからだってさ。ま、奴らからパーティウォッチ奪えばいいだけの話だ」
「そうですね。僕は足手まといになるかも知れませんが…」
「大丈夫だ。いざとなったら俺が助ける」
「ありがとうございます」
「ああ…」
2人がしばらく走っていると、港が見えてきた。
「よし、港が見えてきたぜ! 後少しだ!」
「はい!」
その頃、港では…
「ぐへへへへへへへ…それにしても、奴隷を売るだけで大金が貰えるなんてな…これもシャイセのおかげだな…さて、後は手続きのためにシャイセのやつを待つだけだ…」
奴隷商人は港でシャイセを待っていた。その横には、古びた布を纏った少女を連れていた。
「ほら、お前はもうすぐで売られるんだよ…悪く思うなよ…これも俺の生活のためだ」
奴隷商人は邪悪に笑った次の瞬間
「くたばれえええええええええええええ!」
「な、なんだ!? ぐはあああああああああああああ!」
奴隷商人は突然卓生に殴られ、気絶した。
「これでよし」
「この人を倒して、どうするつもりですか?」
「俺がこいつのふりをして、シャイセのやつに近づく。それだけだ」
卓生は奴隷商人の屍を指差しながら、説明をした。
「取り敢えず、お前は逃げろ。ここにいたら危ない」
そう言った卓生は少女に着るものを渡した。
「で、でも…」
「お前はもう自由だ。これ着て、逃げるんだ」
「は、はい…」
着るものを受け取った少女は、港から走り去った。
「さて、準備をするか。キョウは隠れる能力とかあるか?」
「はい。この生産したローブで透明になることならできますが…」
「へぇ…お前、かなりすごい能力持ってたんだな…」
「僕の国では、その能力の人が当たり前にいましたので、そんなにすごいというわけでは…」
卓生とキョウが話しこんでいる間に、シャイセのリーダーが港へ向かってきた。
「キョウ。あいつがいかにも悪そうな顔しているから、シャイセのリーダーだ…さぁ、このローブを使うんだ」
「はい」
キョウはローブを纏い、そして消えた。卓生もシャイセのリーダーを見つめ、戦闘態勢に入った。そして
「こっちですよ! こっち!」
卓生はシャイセのリーダーが近くに来た途端、彼に声をかけた。
「ん?」
「約束していた、奴隷売買の件ですよ。今から、奴隷を見せますから、待っててください!」
「ああ…金は奴隷を見せて貰った後に渡す」
「はい、ありがとうございます! あ、僕は桐井卓生です。よろしくお願いします」
卓生はシャイセのリーダーに手を差し出した。
「あ、ああ…」
シャイセのリーダーは戸惑いながらも卓生の手を取り、握手をした。
「俺はシャイセのリーダー、ダスト=ハイだ」
「そうですか…よろしくお願いします!」
「な!?」
卓生は握ってない方のでダストの腕を攻撃した。
「ぐぎゃあああああああああ!? 腕が!?」
「キョウ! 今だ!」
「はい!」
キョウはローブを脱ぎ捨て、ダストからパーティウォッチを分捕った。
「よし!」
そして、キョウはそのまま承認するを押し、決闘は承認された。
「てめぇら…なんのつもりだ…」
「お前らがいつまで経っても決闘を承認しないからな…こっちから承認させようと思ってな」
卓生は訳を説明しながら、膝をついているダストにパーティウォッチを投げて渡した。
「くっ…てめぇ…」
「まぁ、とにかく俺達との決闘は確定だからな。絶対にドタキャンするなよ。行くぞキョウ」
卓生はキョウを連れ、港を去った。
「ぐ…」
ダストは悔しそうな顔をしながら、パーティウォッチの電話機能をタップした。
『もしもし。リーダー、どうかしたか?』
「気をつけろ…あいつら…史上最強の戦士の奴らが無理矢理決闘を仕掛けてきたがった…」
『え? マジですか!?』
「ああ…俺はウォッチを奪われ、承認されてしまった。お前等も気をつけろ…」
『ああ。分かっ…な、なんだ!? ぐわあああああああああああ!』
悲鳴が聞こえた途端、電話は切れてしまった。
「な!? 既に嗅ぎつけられたか…くそっ!」
ダストは立ち上がり、駆け出して行った。




