第1章ー9「強制承認」
「それで…お前は店に金だけ置いて行ったってか…?」
「う、うん…」
「なに格好つけてんだてめぇ! 私らがあいつらに勝てると決まったわけじゃないだろ!?」
「痛えええ!」
事情を知ったサーニャは卓生をボコボコにした。
「それと、タクオくん…」
「な、何…?」
「その女の子は誰…?」
ラファはキョウを指しながら卓生に聞いた。彼女の眼は笑っていなかった。
「え…いや…」
卓生は恐怖のあまり訳を話すことを躊躇した。その時
「あ、あの…僕、男です…」
「え?」
「え?」
キョウが性別を明かした途端、サーニャとラファは驚きのあまり、時が止まったかのように動きが止まった。
「え? 君、本当に男か?」
「う、嘘はよくないなぁ…」
サーニャ、ラファは本人の証言であるのにも関わらず、キョウが男だということを信じることはできなかった。
「ほ、本当ですよ!」
「じゃ、じゃあ…下、脱いでみよっか…」
ラファは息を荒げながら、ラファに下を脱ぐことを強要した。
「え、ええ…」
「ちょっ、ちょっと…まって」
ここで卓生が待ったをかけた。
「あの…さ。わざわざ下を脱がせなくても、上だけで分かるんじゃない?」
「なんでだタクオ! 男か女か分かるためには下半身にち○○がついているかついてないかで判断するものだろ?」
「いや…でも、一応上半身だけで判断はつくし…」
「それなら私が男ということにもなるぞ」
「えっと…」
卓生は追い詰められており、どうすればいいか考えていた。そして
「そうだ! どんなに貧乳でも、女性の胸はある程度丸びを帯びていて、ふくらみはある程度あるんだよ。で、男性はどちらかと言うとがっちりしているから、胸のふくらみはないんだよ。だから、上を脱がすだけでも確かめられるぜ」
卓生はなんとかサーニャとラファを説得した。
「わかったよ。上半身で確かめるから」
「仕方ねぇな。ただしタクオ、お前後でフルボッコな」
2人はなんとか納得し、(どのみち卓生は助からなかったが)キョウの服を脱がせた。
「あ、あの…」
「本当だ…いかにも男って感じの胸だな」
「疑ってごめんね。あなたは別にタクオくんを誑かしたわけじゃないんだよね」
「い、いえ…そんな…」
キョウはすっかり2人のペースに流されていた。
「それでタクオ、この子は一体どこから連れて来たんだ?」
「い、いやぁ…奴隷商人をぶっ飛ばして奪ったっていうか…」
「奴隷商人…?」
ここでサーニャがなにかを思い出したかのように反応した。
「タクオ、奴隷商人はこの国では違法な職業だ。だからよほどのことがない限り見かけることはない…」
「そうなのか?」
「もしかして、これもシャイセが仕向けた可能性が高い…」
「は!? マジかよ!」
「あくまで私の推測だがな。それで、えっと…」
サーニャはキョウから話を聞き出そうとしたが、彼女は名前を聞いていなかったため、何と呼べばいいか分からなかった。
「あ、僕はキョウです…」
「キョウ、お前は奴隷商人に何か言われなかったか?」
「はい…僕は1年前に攻め滅ぼされた国の生き残りで、この国をさまよっていた時に捕まりました。それで捕まった時、『全てはシャイセ様のために…』と言っていました…」
「ああ。これでほぼ確定だな…どこまでクズ行為やれば気が済むんだシャイセは…」
「大丈夫だ。明日には2人を私らのパーティーに加える。そして、その後に決闘を申し込めばいいだろ」
「そうだな…でも、本当に決闘が成立するのか?」
「大丈夫だ。私に考えがある」
「考え…?」
「それは明日のお楽しみだ。へへ」
「あ、ああ…」
サーニャはいたずらをしたような表情で笑った。
※
名前 ラファ=クアー
所属パーティー 史上最強の戦士
剣スキルLV20
防御スキルLV30
格闘スキルLV10
魔法スキルLV1
生産スキルLV1
ポイント0
0G
名前 キョウ=キリイ
所属パーティー 史上最強の戦士
剣スキルLV10
防御スキルLV20
格闘スキルLV10
魔法スキルLV10
生産スキルLV40
ポイント0
0G
「パーティーの登録が完了しました。これで、合計4人になります」
「ありがとうございます。ほら、これで合計4人になったぞ」
卓生はラファとキョウをパーティーに加える登録を済ませた。
「よし、後は決闘を申し込むだけだな」
「ああ。さっさとやろうぜ」
「「うん」」
4人はパーティウォッチを使い、シャイセに決闘申請をした。キョウは使い方が分からなかったため、サーニャにやり方を教わりながら申請をした。
「じゃあ、これで後は向こうが承認するのを待つだけだね」
「いや、待てラファ」
「ん?」
「あいつらがそう簡単に承認してくれると思うか? 自分たちがクズな行いをしている以上、そうそう簡単に俺等の前に姿を現すわけないっつーの」
「そ、そうだね…」
「そこで、サーニャの作戦があるそうだ」
「さ、作戦…!?」
「ああ。最も、俺もまだ知らないけどな…」
「う、うん」
「というわけでサーニャ、作戦の内容をそろそろ言ってくれ」
卓生はサーニャの方を向き、それに続くようにラファとキョウも彼女の方を向いた。
「分かったよ。ま、もったいぶっても仕方ねえからな」
サーニャは一回咳き込み、作戦を話し始めた。
「まず、作戦と言うのはシャイセがどこに出没しやすいかラファに聞く。で、その出没しやすいところで待機し、隙を見てパーティウォッチを奪い、申請を承認する。こんな作戦でどうだろう?」
「なるほどな。ラファは元シャイセだしな。もしかしたら居場所が分かるかも知れない…」
「あの…僕も一応、彼等の動きは分かると言えば分かります…」
「おっ、キョウも分かるのか」
「はい…シャイセは余所から入ってきた国の人を奴隷として売っていますので…もしかしたら港にれば、関わりのある人物がいるかと思います…」
キョウは自分の意見を言った。
「私がシャイセだった時は、よく高そうな武器屋で万引きをさせられたり、路地裏でリーダーがよく恐喝をしているのを見たりしたかな…」
ラファは自分が実際に見たり、行ったなどの体験に基づき、意見を出した。
「なるほど…」
サーニャは2人の意見を聞き、頷いた。
「じゃあ、こうしよう。タクオとキョウは武器屋や路地裏。私とラファは港にいる。この作戦でいいか?」
「おう」
「はい」
「うん」
「い、いまいち返事に統一性がないかまぁいいか。それじゃあ作戦開始だ!」
「「「「おう!」」」」




