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変えるのは、今。

作者: 風季

お久しぶり

と、書き出したメールの文章に自分で苦笑する。付き合っていたあの頃には、会いたいときに会うことも叶って、久しぶりの再会なんてものはそもそも存在しなかった。

ずるずるずるずると引きずり続けた彼女への想いは、別れの日から5年経ってもしっかりと自分の心の中心に居座り続けていたことに気づく。

別れたあとは半ば自暴自棄になって、誰でもいいからと彼女を作ろうとして、失敗した。

もういいやと、思った矢先に彼女が出来て、付き合った彼女からは思いの外たくさん大切なことを教えてもらった。

嫉妬しいで、感情をコントロールすることが下手くそだった自分と、3年も付き合ってくれた彼女には感謝しかない。

人からの影響とか、自分を変えてくれる出会いなんて小説の中の話だと思っていた。自分でも驚くほどにそういう感情をコントロールできるようになっていて、それだけ彼女が自分と真剣にぶつかって、向き合ってくれていたことに今更ながら気づいた。

そんな彼女との付き合いも、ずっと心の中に居座り続けた想いが終わりを告げさせた。

彼女と付き合っていたときでさえ、連絡を取ることを望んで、それでもたった1通のメールすら送れない自分の臆病さに嫌気がさしていたはずなのに。

今は、どこで何をしているのかさえわからない彼女に、勇気を奮い立たせて送ったメール。

お久しぶり

と、書き出したメール。

返ってこないかもしれないな、なんて思いと、返ってきてほしいなんてごちゃまぜな気持ちで送ったメールは、意外にもあっさりと返ってきて。

今は彼氏がいる

なんて言葉とともに返ってきたメールなのに、心は弾んだ。それでもいいから会いたかった。どうにもならないとわかっているけど、それでも、会いたいと思った。

こんなにあっさり返ってくるんだったらもっと早くメールすれば良かったなんて、自分勝手な気持ちに気付いて、嫌になる。しなかったんじゃなくて、できなかった。思いきりの無さと、心の弱さがここまで気持ちを引き延ばし続けていた。

ずるずるずるずると引きずり続けた彼女への想い。

このまま彼女のことを想い続けるのか、なんて思って過ごしたこの数年。

気持ちに決着をつけるには、会うしかない。

先に希望を持つためではなく、これまでの気持ちに決着をつける。

これまでの時間は無駄ではなかったし、3年間付き合ってくれた彼女との時間は、間違いなく自分にとって必要なものだった。

あとは、会うだけ。

会ったら、気持ちがまた高ぶるかもしれない。それでも、5年間引きずり続けた彼女への想いは、きっと清算できる。そんな、予感がしている。

大好きな彼女を、大好きだった彼女へと変えるための大事なきっかけ。

これから先を、迷うことなく進むために、行け、自分。

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