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第9話 親愛

《リ、リム。聞こえておるよな!? ど、どうしよう!? なんて答えれば良いのじゃ!?》

《先ほどその者の部屋にルナ様を送り出す前にお話したように、私の存在はこの村の者の記憶にはおそらくありません。隠すべきだと思われます》

《どう隠すのじゃ!? もうリムの名前まで出してしまったのじゃ!》

《ご安心下さい。吸血鬼の国に属さないものが、人の国で不当に吸血する時に使用するという、記憶操作を行えばいいのです》

《さすがはリム! その手があったのじゃ!》



「ウ、ウリュウ。妾の目をよく見て聞いて欲しいのじゃ」

「あぁ、ちゃんと聞くよ。ちゃんと聞くから、その後二人で一緒に考えよう」

「そ、それは聞いてからウリュウに決めて欲しいのじゃ」

「わかった」

「ではいくのじゃ」



 ルナの赤い瞳が暗闇の中で淡く光りだす。

 雲に隠れているのか、今は月の光すらほとんどない。つまり、光を反射したわけでもないのにルナの瞳が自ら独りでに光りだしているのだ。

 ウリュウはその瞳の美しさに惹かれながら、不意に自分に対する新たな発見をした。

 自分達……少なくとも自分は、この暗闇の中でもルナの顔がはっきり見えるらしい。



「ウリュウは目が覚めた時、妾の友達についての話は忘れている。ウリュウは目が覚めた時、妾の友達についての話は忘れている」

「俺は目が覚めた時、ルナの友達についての話は忘れている」

「よし! それでよいのじゃ! 次は、ウリュウはだんだん眠くなーる。瞼が重くてしょうがなーい。ウリュウはだんだん眠くなーる。瞼が重くてしょうがなーい」



「……」

「……」

「……で? リムちゃんっていうのどういう子なの?」

「なんで効いてないのじゃ!?」

「催眠術なんてそう簡単に出来るわけないだろ? ルナが魔法を使えるのには驚いたけど、魔法を使って忘れさせようとするのは感心できない。言いたくない事情があるのかもしれないけど、それならそれでこれからはキチンと話しなさい」



 ――コツン――



 ウリュウはなるべく怖い顔を作りながらルナにそう言うと、ルナのおでこに軽くデコピンをしてからルナの返答を待つ。



「ごめんなさい。わかったのじゃ。これからはちゃんとそうするのじゃ」



 ウリュウは、ルナがしっかりと悪いことは悪いと認め、ちゃんと自分から謝ったことに対し、ルナを抱きしめながら頭をなでることで応えた。



「ルナ。おでこ叩いてごめんね? それと、やっぱりリムちゃんって子のことは話せない? リムちゃんって子に変な影響を受けていないのなら無理に聞こうとも思わないんだけど……」

「……話したいけど、今は少しだけ待って欲しいのじゃ。リムの影響は間違いなく受けているが、リムはとっても良い子なのじゃ。それも合わせて近いうちに絶対話すから、今は……」



「わかった。ルナのことを信じるよ」

「ウリュウ、ありがとうなのじゃ。それと、あと二つだけお願いしたいことがあるのじゃ」

「うん、いいよルナ。なに?」

「妾の部屋には勝手に入らないで欲しいのじゃ」

「……わかった。もう一つは?」



 ウリュウはルナに拒絶されたような気がして、少し寂しく感じたが、もうすでにお年頃というやつなんだろうと思って了承した。


「このまま一緒に寝たいのじゃ。ダメ……かな?」


 ルナのその言葉に、ウリュウは笑みが浮かぶのをこらえきれなかった。


「笑うなんてひどいのじゃ」


 ルナはウリュウに笑われたと思ったらしく、すねた顔でそっぽをむいた。



「ごめんごめん。違うんだ。俺もそうしたかったから嬉しくって。だからルナのことを笑ったわけじゃたないんだ。それじゃあ一緒に寝ようかルナ」

「うむ! 一緒に寝てあげるのじゃ! その代わり起きた時にいなかったら許さないのじゃ!」



「わかった。一緒に寝てくれてありがとうルナ。俺が起きた時ルナがまだ寝てたらちゃんと起こすよ」

「でも妾が先に起きたら、その机の上にある筆でウリュウの顔に落書きしてやるから、覚悟するのじゃ!」

「それひどくないか!?」

「ウリュウが先に起きて、妾を優しく起こしてくれたらすむ話なのじゃ!」

「なら競争だな。ルールはちゃんと寝ること。それと起きた時にまだ辺りが暗かった場合はもう一度寝なおすこと」

「わかったのじゃ。絶対に負けないから、覚悟するのじゃ! ん」

「ん?」



 ルナが横を向き、自らのほっぺたをウリュウに差し出したが、ウリュウには何の意味があるのかがわからない。


「おやすみの挨拶なのじゃ」

「おやすみなさい」

「違うのじゃ! おやすみのあいさつはそれだけじゃないのじゃ」



 ルナが両方のほっぺたを交互にウリュウのほっぺに当てるふりをする。



「こうやって両方当ててからおやすみなさい。なのじゃ」

「……わかった」



 ウリュウは言われたようにほっぺを当ててみる。やってみるまではなんの意味があるんだろう? と思っていたが、やってみるとルナの体温を頬で感じることが出来、少し幸せな気分になれた。



「おやすみルナ」

「おやすみなのじゃ。ウリュウ」



 ウリュウはルナと一緒に布団の中に入りながらこう思った。

 俺、お父さん一日目から娘大好き親父になりかけてる。こんなんじゃ娘に彼氏が出来ただけで、俺、泣いちゃうかも。

序章はこれで終わり、次回から第一章がスタートです。

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