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第8話 友達のことを雌犬……だと?

手直ししていたら長くなったので2話に分けました。それに伴いタイトルも変更させて頂きました。

 記憶を失った翌日、ウリュウはまだ日も昇らぬ内に目を覚ました。

 体を起こして辺りを見回してみたが、外はまだ真っ暗で、太陽が昇るまではまだまだ時間がかかりそうだ。なのにウリュウの目は完全に覚めてしまっていた。



 ウリュウはローラから聞いた、冒険者ギルドが開く前から自分が冒険者ギルドに顔を出していたという話を思い出し、早起きの習慣というものは記憶がなくても変わらないのだな。と、思わず笑みがこぼれる。



 せっかく早起きしたが、今日は冒険者ギルドに行く予定はなく、娘のルナと村を見て回る約束をしていたことを思い出し、日が昇るまでもう一度布団に倒れ込んで寝ることにした。

 ウリュウは自らの布団にもう一度倒れ込み──


「ふぎゅっ!?」

「!?」


 ウリュウは自分の左肘が何か堅い物にあたった感触とともに、そこから可愛らしい悲鳴を聞きとり、なにごとかと布団をめくる。

 するとそこには「痛いのじゃあ」と、自らの額を抑えるルナが居た。



「る、ルナちゃん!? なんでこんなところにいるの!?」



 ウリュウがそう尋ねると、ルナはウリュウに捲られた布団を手繰り寄せながら、少し照れたように上目遣いでこう答えた。



「目が覚めたとき、またウリュ……パパが私のことを忘れてたり、どこかに行ってたら嫌だから隣で見張ってた……の」



 ウリュウはこんなに可愛い子に心配をかけてしまった罪悪感と、心配してくれる人がいる喜びから、そのままルナを抱き締めた。



「ふぎゅっ!? い、いきなりどうしたのじゃウリュウ!? は、恥ずかしいのじゃ!」



 口では恥ずかしいと言いながら、両手をジタバタさせるだけでウリュウを押し退けようとしないルナを見て、ウリュウはルナが自分の義理の娘だと知ってから、初めてルナとやっていけそうだと感じていた。



 ウリュウにとってこのルナという子は、正直今の今までどう接して良いのかよくわからない存在だったのだ。



 ウリュウは昨日の朝、綺麗な泉のほとりで目が覚めると、なぜか記憶がなくなっていた。なぜそこにいたのかはおろか、自分の名前や年齢すら思い出せなくなっていたのだ。そんなウリュウのお腹の上で自分に抱き着き眠っていた美少女。それがこの子、ルナだった。



 記憶をなくす前は毎晩寝る前に一人で告白の練習をし、数日に一度は脳内デートを堪能していた童貞ウリュウ。

 記憶がなくなってもその習性は、ウリュウの中に根強く生き残っていたらしく、この美少女との関係を色々と想像……いや、妄想していたのだ。そう、色々と……。



 意を決して美少女を起こしてみると、その美少女が自分のことを心配そうに、だが確実に親しいであろう感じで『ウリュウ』と呼んだことで、ウリュウは初めて自分の名前を知るとともに、妄想していたいくつかのパターンの中から、自分とこの美少女が恋人同士である。というパターンに当たりを付けた。



 その後ウリュウは、なぜ自分に記憶がないのか? そしてここはどこなのか? など、様々な質問をルナに行い、それらの質問にルナは真摯に答えてくれた。しかし、自分とルナの関係を聞いたとき、ルナは悲しそうな顔でぼそりと『花を摘みに行ってくるのじゃ』と言って、森の中へと逃げてしまった。



『花を摘みに行く』という言葉が、お手洗いをしに行くことの暗喩であることを知らなかったウリュウは、何も考えずにルナに付いていこうとしてルナに冷たい視線をあびせられたことは一先ず、いや永遠に置いておこう。ちなみに男の場合『キジを撃つ』という言葉を使うということも併わせて教えてもらったのだが、その件についても置いておこう。

 その後も二人の関係についての話題になると、ルナは悲しそうな、それでいて寂しそうな表情をうかべながら話を逸らし続けた。



 単なる友人や知人であれば、あんな顔をしながら話を逸らすことはおそらくないだろう。普通に答えればいいのだから。それ故ウリュウは、自分とルナが恋仲なのでは? という妄想に、さらなる確信を持つとともに、彼女を悲しませないためにもその話題には触れないようにと努力した。そこからは記憶をなくす前の感情が関係していたのか、精一杯自分の面倒をみようとしてくれるルナに対し、ウリュウが好意を寄せるのに大した時間はかからなかった。



 ルナの提案でウリュウの家へと向かうことが決まり、その道中、同じ村の冒険者仲間と思しき人達に、自分とルナとの関係が『親子』である。と教えられたウリュウは、内心ひどく混乱し、それからルナとどう接していいのかわからなくなっていたのだ。



 自分は娘を女性として意識し、好意を抱いていたのか?

 それとも記憶を失ってなお娘に向ける親としての愛情がこの体に残っており、その感情が家族愛的な意味での好意を自分に感じさせていたのか?



 どちらであったのか? その自信がなかった。いや、女性として見ていたのだと半ば確信し、自己嫌悪し、ルナに対する自分の戸惑いが、罪悪感からきているのだと感じていたのだ。……つい先ほどまで。



「ルナちゃん。俺が記憶をなくす前、俺達はどんな家族だった?」

「……とっても仲の良い家族」

「そっか」

「……ルナ」

「ん?」

「ちゃん付けは他人行儀で嫌なの。前みたいに『ルナ』って呼んで欲しいのじ……欲しい」

「うん、わかったよルナ。他には? 何かない?」



 ウリュウはルナの頭を優しく撫でながらそう尋ねる。するとルナは、恥ずかしそうにこう言った。



「……一日一度は、こうやって頭をなでて欲しい」



 ルナの可愛らしいお願いに、思わず口元が緩み、笑みがこぼれる。



「ハハ、甘えん坊さんなんだね?」



 今ウリュウは、ルナに対する保護欲から来る感情。親としての愛情をこの子に感じていた。つまり昨日のあの感情は、記憶をなくした自分の一時の気の迷いだったのだ。



 こんなに可愛い子に抱き付かれ、親子だということを知らなければ、誰でも多少はドキリとするだろう。だが、今のウリュウはルナと自分が親子だということも知ったし、ルナもウリュウのことを親として愛してくれているということを知ることが出来た。



 ルナが自分の恋人じゃなくて残念。などという気持ちなんかよりも、ルナに親として愛されていることを嬉しく思っている自分が、今ここにちゃんといた。だから大丈夫。自分たちはきっと親子としてしっかりとやっていける。

 そう感じることが出来た。



 自分にはルナの親としての記憶はない。



「じゃあ俺からもルナにひとつお願いしても良いかな?」

「なに?」

「パパって呼ばず、『ウリュウ』って呼んでくれないかな?」

「私にパパって呼ばれるのは嫌なのじゃ?」

「違うよ。さっきから『ウリュウ』って呼ぼうとして何度も『パパ』って言い直してるよね? きっと記憶をなくした俺がルナのことを娘だと思い出しやすいように『パパ』って呼んでくれてるんだよね? でも俺はルナにそんな無理をして欲しくないんだ。それと口調も。意識的に変えてるよね? 無理しなくていいよ? ルナが『のじゃのじゃ』言うのは可愛いと思うし」



 ルナは恥ずかしそうに笑いながらウリュウに応える。



「ひとつって言ったくせに聞いてみればふたつもあったのじゃ。一つ目は了解したのじゃ。これからもよろしくなのじゃ、ウリュウ。二つ目の口調に関しては、変えた方が良いと言ってくれる者もおるので、とりあえずは検討するのじゃ」

「そっか。変えた方が良いって言ってくれてるのはこの村の子?」

「………………な、内緒なのじゃ」



 ルナは目を逸らしながらぼそりとそう答えた。


「──彼氏……か?」


 ウリュウが複雑な心境でルナにそう尋ねると、ルナは即答した。


「いや、雌犬なのじゃ」

「雌犬!?」

「あ、いや女友達じゃな」

「友達を雌犬呼ばわり!?」



 ルナは手をあわあわさせながらしどろもどろに答える



「あ、いや、リムは友達じゃが雌で、犬じゃなくて……リムのことはウリュウにはなだ内緒で……言ってしまったのじゃ!?」

「とりあえずそのリムって友達のことから聞こうか?」

「あ、あう……」


 ルナは手を必死にワタワタさせながら考える。

 ど、どうすれば良いのじゃあー!

ウリュウ「友達を雌犬呼ばわりするような子に育て覚えはありません!(むしろ育てた記憶すらないが)」


ルナ(妾も育てられた覚えはないのじゃ。なによりリムは雌の狼だから雌犬なのじゃ)


犬というのは狼が家畜化された物であると言われています。

百数十年もルナに飼われたリムは、既にある意味犬なのです!


新たな感想0……。

良いんです。それでも読んで頂けるのなら……。


ブクマは2件も増えましたから!


ブクマをしてまで読んでくれていると言う方が2人も増えたのですから! 嬉しさの方が上回っていますから!


これからもそういうものを励みにユックリとですが頑張っていこうと思いますので、これからもよろしくお願いいたします!


第9話【これが親愛というものか】(仮)

金曜日に投稿予定ですので、お楽しみ下さい!

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